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藝大卒展2025
2025年1月28日から2月1日まで東京都美術館および東京藝大キャンパスで開催された卒展を見てきたので感想を記録。作品数は膨大。ここに掲載しなかったものでも素敵な作品は多数あった。写真をとっただけでは見た時の感覚は消えてしまうし、作家さんの名前も忘れてしまうので備忘録として作成。
建築科
「Gyroid Concrete」
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まずは上野公園の東京都美術館へ。最初の展示室は日本画専攻がメインだったけど3Dプリンタの作品を発見。自分も3Dプリンタいじってるので思わず立ち寄ると建築学科の方の作品。ジャイロイド(曲面が規則的に入り組んだ構造)を3Dプリンタで出力し、それを型枠にしてコンクリを成型したそう。
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F(x)=sin(x)*cos(y)+sin(y)*cos(z)+sin(z)*cos(x)との記載。立体座標x,y,zからIso surfaceとしてこの構造を作ったのだろう
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3Dプリンタの仕組みから、なぜ建築材料にジャイロイドを使うのかまで説明あり。実際の建物に使われていたら面白い。
デザイン科
「snooze」
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こんなおしゃれな作品を自宅に飾ってみたい。クジラの骨も手前の窓枠も両方「骨」で面白い。骨は美しいと思う。発生学を専攻してたので生き物の形づくりにはいまでも興味がある。
「こどもの健やかな成長を祈る人形」
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同じくデザイン科の方。雛人形が機械化されている。かっこいい。左奥はロケットランチャー?
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上段はこんな感じ。現代アレンジされた伝統って面白い。ひな人形という風習が作られた時代の「こんな人形を飾ろう」という意図をそのまま現代で愚直に実行したらこうなるだろうなあと妙に納得した。
会場は非常に混雑していたけどもっと写真とりたかった。
「RESPECT FOR REFLECTION」
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黒い羽根構造の内側で複数のライトが回転。周囲の壁に影が映る。こういう謎機械は素晴らしい。
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設計図もおしゃれ。こういう図だけでも販売してたら買いたかった。
「光差点」
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金属のレールが敷かれた台の上を、LED内蔵の立方体を手で動かす作品。光はレール上の位置に従って点滅する。思い通りに光らない場所もある。アナログな喜び。
「あやふやのいつか」
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ビーズを溶かして接着させた四角形の物体を天井からつるしている。
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溶けたビーズが不規則な突起を形成するように垂れ下がっている。自重が軽いからこそ、こういう釣り下げが可能なんだろう。どうやって強度を維持しているのか知りたかった。
油画科
「When Sweat Drips Faster, We Boil」
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13歳時に日本に移住されて銭湯に強いカルチャーショックを受けられたとのこと。たしかに公衆浴場は日本以外だと珍しい。日本のあたりまえが当時の作者にはこう映ったということか。
工芸科
「守獣」
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壁から出てきた獅子か。登場!というかんじ。
「十二心象土偶」
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十二神将(仏教の守護者)にちなんだ作品のようす。陶土・手びねり成形とのこと。気に入ってなんども周りから眺めてしまった。こういう抽象立体は一番印象に残る。
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もしもの話だが、神話に登場する人類の守護神、実際はこんな形をしていたら面白い。ありのままの姿を壁画などに残したら信者ウケが悪いので人類と似た形にしていただけだったりして。ヒトの身体は脊椎動物としての最適解の一つに過ぎず、脊椎の存在にしばられなければ、我々とかけはなれた形をした知的生命体も存在しうると思う。
そんな空想も惹起させるような素敵な作品だった。
東京都美術館は回りやすかったものの藝大キャンパスはすべて回り切れず。作品集も購入したがやはり実物見ないとわからない。来年も時間をつくって見に行きたい。