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転生するのは霊魂か、脳内の記憶か!? 「生まれ変わり現象」の謎
米国バージニア大学知覚研究所には、生まれ変わり現象の事例が2600件余りストックされている。同研究所の学術調査を経た、信頼性の高いものばかりだ。
そして日本にも、生まれる前の記憶や「前の自分」の記憶を詳細に語る子供たちがいる。こうした事例を確認していくと、もはや生まれ変わり現象は事実としかいいようがない。
では、いったい何がこの世に生まれ変わってくるのか。霊魂か、記憶か。肉体が死んでも「私」は存続するのか。
監修=大門正幸
文=文月ゆう
イラストレーション=久保田晃司
プロローグ 「ニンニクを剥きたい」──3歳の男の子が突然そう語った!
0歳児がアルファベットをスラスラと読む!
「ニンニクを剥きたい」2003年のある晩、当時3歳11か月だった「トモ君」は、彼を寝かしつけようとしていた母親にそう訴えると、こんなことを話しはじめた。
「トモ君って呼ばれる前に、ニンニクを剥いたことがある。そのときは、イギリスのお料理屋さんの子供だった。1988年8月9日に生まれて、ゲイリースって呼ばれていた。7階建ての建物に住んでいた。45度くらいの熱が出て、死んでしまった」
母親は驚いた。
ただ、それ以前にもトモ君には不思議な言動がしばしば見られた。たとえば、コマーシャルで「AJINOMOTO」という文字を見つけると、教えてもいないのに「エー、ジェイ、アイ、エヌ……」と、猛スピードでアルファベットを読みあげた。まだ1歳になる前のことだ。3歳になる少し前には、テレビでカーペンターズの「トップ・オブ・ザ・ワールド」が流れると、曲に合わせて上手に歌った。
イギリスの過去生(過去に体験した別の人生)について話したのは、このときがはじめてだった。母親はさぞかし困惑したことだろう。
その日はもう遅い時間だったのでとりあえず寝かしつけ、翌日、ニンニクを用意した。すると、右利きのはずのトモ君が、なぜか左手を使って器用に皮を剥きはじめ、ボウルの中にニンニクの山ができた。
「ニンニクを剥いたことがあるの?」
「うん。前のトモ君のときに、したことがある」
「前のトモ君って?」
「8月9日生まれだったトモ君」
そう語るトモ君の表情は真剣で、子供にありがちな空想の話をしているようには見えなかったという。
これ以降、トモ君は「前のトモ君」について、いろいろなことを話すようになった。
「前のトモ君が死んだのは、1997年10月24日から25日の間」
「お兄ちゃんはグレッシェンス、妹はスメンリーって名前だった」
「イギリスのお父さんは、チリコンカーンという辛い食べ物をつくってくれた。レッドビーンズとキドニー(どちらも豆の種類)が入っていた」
「2階建てのバスに乗った」「お金は円じゃなくてパウンド(ポンド)だった」
家族でホームセンターへ行ったときは、地球儀を見つけてイギリスの上のほうを指差し、こういった。「このへんに住んでた」
もちろんトモ君は、イギリスの位置をだれからも教わっていない。そこで母親がイギリスの地図を見せると、エジンバラを指して「エディンビア」とネイティブのように発音した。
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「イギリスのお母さんに会いたい」と涙ぐむ
過去生の記憶は、現在の人生で、それと似た体験をしたときに甦るようだった。たとえば「グレッシェンス」という兄の名前を思いだしたのは、ピアノ教室で「クレッシェンド」という記号を習ったのがきっかけだった。
父親は、トモ君の言葉を「まさか」と聞き流していたが、それを覆すような出来事が2005年に起こった。一家でテレビを見ていたときに、JR西日本の福知山線で脱線事故が発生したというニュースが飛び込んでくると、トモ君がすぐさま反応した。
「イギリスでも列車事故があった。テレビで『事故です、事故です』といっていた。列車同士がぶつかって、火も出た。8人死んだ。前のトモ君が死ぬ少し前」
あまりにも具体的な話だったので父親がネットで調べてみると、英語のサイトにこれと一致する事故が見つかった。1997年9月19日の「サウスオール列車事故」だ。電車と貨物列車が衝突、炎上して7名が死亡し、139名が重軽傷を負った。「前のトモ君」が死ぬ1か月ほど前に当たる。
この一件を機に父親は、トモ君が話していることは本当かもしれないと思うようになった。
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トモ君の記憶が事実と一致した例はほかにもある。
「前のトモ君はALSという病気で、ATPというお薬を飲んでいた」
ALSとは筋萎縮性側索硬化症のことだ。血流を改善し、臓器や筋肉の働きをよくするATP(アデノシン三リン酸)が処方されることがある。
亡くなる直前のことも思いだした。
「エジンバラの病院に入院していた。お父さんとお母さんとお兄ちゃんで車に乗っていった。家から北へ115キロだった。高速道路で行った」
病室からは花火が見えたという。
「どうしてイギリスのトモ君のことを思いだすの?」
あるとき、母親がそう尋ねてみた。するとトモ君は、ふっと黙り込み、こういって涙ぐんだ。
「イギリスのお母さんに会いたい」
この思いは、常にトモ君の中にあったようだ。
「イギリスのお母さんの顔はしっかり覚えている」「大人になったらイギリスのお母さんを捜しにいく」などと語っていたことが、母親の覚え書きに記されている。
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両親は、トモ君の願いをかなえてやりたいと思い、イギリス行きを実現させるべく手を尽くし、計画を練った。そして3年後、いよいよそのときがきた。7歳6か月になったトモ君と父親がイギリスへ渡ることになったのだ。このつづきは次章で語ろう。
第1章 生まれる前の記憶を語る子供たち
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