長編小説「金蘭の契り」最終章 かけがえのない場所
外は、ここに来る時と比べ物にならないくらいの暴風雨になっていた。早く、工房へ向かいたいのに、なかなか前へ進めない。傘なんて、もはや意味を成していなかった。俺たちは、道中言葉を交わすことなく満員のバスに乗り込んだ。詳しい話しは聞けていない。新庄さんから、工房が大変なんだと電話があっただけ。ゆっくり話している時間も惜しくて、俺はすぐに向かいますと言って電話を切った。状況何て聞かなくても、いつも穏やかな新庄さんが、あんなにも慌てていて、そしてこの天気なら何となく何が起きたのかくらい