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道徳の授業ってやりようによって面白物になります
道徳の授業での提案
ある若い先生が道徳の授業を準備していました。机の上には指導書が開かれ、発問にアンダーラインを引いて、一生懸命に授業の流れを組み立てようとしている様子です。
「先生、ちょっと相談に乗ってもいい?」
私は声をかけて、その指導書を覗き込みました。
「教材文、読んでみた?」
「まだ読んでいません。とりあえず指導書に書いてある導入部分を中心に考えています。」
「それじゃ、まず教材文を読んでみよう。」
一緒に教材文を読み進めていくと、その内容はとてもわかりやすく、子どもたちの心に響きそうな良い文章でした。
「この教材文、すごくいいね。で、授業はどう進めるつもり?」
「指導書の導入部分から始めて、ここに書いてあるめあてを子どもたちに説明する予定です。でも、どうすれば子どもたちに伝わるか自信がなくて……。」
私は思い切って提案しました。
「この導入部分、もめあてもいらないよ。」
「えっ!? 導入やめあてがないと授業として不安なんですけど……。」
「大丈夫。最初の余計な説明は全部省いて、いきなり教材文を読ませてみて。それだけで子どもたちの心は動くはず。その後に気付いたことを自由に発表させればいいんだ。」
「本当にうまくいきますかね?」
「うまくいくよ。この教材なら、誰かが必ず指導書にある主発問に関連したことを言うはずだから。それを拾って広げていけばいいんだ。」
少し不安そうな若い先生に、さらに続けました。
「研究授業でよくあるでしょ。『主発問で話し合いたかったけど、時間がなくなっちゃった』っていうやつ。あれ、導入部分で教材文を説明するのに時間を使いすぎてるのが原因なんだよ。」
「でも、子どもたちの意見がバラバラになったらどうするんですか?」
「それも気にしなくていいよ。子どもたちが出した意見を黒板に書いて、教材文の順番に整理していけば自然とまとまるから。最終的に主発問につなげられるように誘導すればいい。」
先生は納得したような、まだ少し不安そうな顔をしていましたが、思い切ってこの方法を試してみることにしました。
授業当日は見に行けなかったのですが、休憩時間に教室を訪れると、黒板には子どもたちの意見がぎっしりと書かれていました。
「黒板、すごいね! 子どもたち、いっぱい意見を出したんだ。」
「そうなんです!びっくりしました。最初の発言で、いきなり主発問に関連する意見が出て……。」
「やっぱりね。教材文が良ければ、自然とそうなるんだよ。」
「それに、普段あまり発表しない子たちがどんどん意見を言ってくれて。正直、驚きました。」
「それは素晴らしいね。授業、面白かったでしょ?」
「はい!主発問をじっくり話し合えたうえに、振り返りの時間も余裕ができました。子どもたちの感想もとても良かったです!」
道徳の授業では、先生の説明が長すぎて、一番重要な部分を十分に話し合えないことがよくあります。でも、指導書に頼りすぎず、教材そのものを子どもたちと一緒に味わう方が、良い授業につながることが多いのです。若い先生には、この体験をきっかけに、そのことに気付いてもらえたらと思います。
さて、こんな助言ができるのには理由があります。
実は、道徳が教科化される時、研究主題として取り上げたのです。
その時、研究を論文としてまとめてみました。
明日から、その時の論文を紹介していきます。
10回に分けて載せていきます。