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特別支援児童のチャット利用から見えてきたこと

特別支援の子にとって、夜中のチャットは居心地がいい
 
特別支援学級の担任をしていたときの一コマである。
会話の中から、現在の問題が浮き上がってくるような気がした。
そこでその時のことを記しておきます。
 
「先生、ねむい……」
朝の会が始まる前、わがクラスの小学5年生の女子が、ぼんやりした目でつぶやいた。
「昨日、何時に寝たの?」と聞くと、「朝の5時くらい」との返事。驚いて詳しく話を聞くと、なんとタブレットでソーシャルゲームをしながら、オンラインのチャットでいろんな人と話していたというのだ。
「どんな話してたの?」と尋ねると、彼女はちょっと楽しそうに教えてくれた。
「先生、フリーWi-Fiのあるところで、ある人が言ったの。『ああ、今、原付消えた。つんでしまった』って。」
「つんでしまった?」
「うん、盗まれたってことらしいよ。なんかヤバい話してるよね。」
さらに話を聞くと、こんなエピソードも飛び出した。
「先生、仲良くなった人が、15歳の女の人みたいでね、『敬語はいらないよー』って言ってくれたの。」
「本当に15歳なの?」
「うーん、わかんない。でも、話しやすかったよ!」
ここまで聞いただけでも、なかなか刺激的な世界だ。でも、もっと興味深い話が出てきた。
「先生、その女の人ね、誤字が半端ないの!」
「え?スマホの変換があるでしょ?」
「それが、よくわかってないみたいで、すごい間違えるの。」
「へえ……」
「そしたら、周りの友達も『おれも漢字ダメ』って言ってた!」


この会話から浮かび上がるのは、彼女のチャット仲間には、学力的に厳しい状況の子どもたちが多いということ。そして、そんな子たちが気軽に悩みを話せる場所として、夜中のオンラインの世界が機能しているのだろう。

「でも、朝の5時までゲームとチャットしてたら、そりゃ眠いよね。」
「だって、居心地いいんだもん。」


たしかに、居場所は大事だ。学校が「できるか・できないか」で評価される場所になってしまうと、彼女たちにとっては窮屈に感じることもあるだろう。けれど、だからこそ、その「居心地のいい場所」が彼女たちの成長につながるようになればいい。


夜のオンラインの世界が、ただの逃げ場ではなく、少しずつでも力をつけていける場になれば――そう願わずにはいられない。