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道徳科 研究論文 シリーズ4

4. 具体的な事例その1
    3年生研究授業


今回から具体的な実践例を紹介していきます。
課題が次に繋がっているように伝えることができたら幸いです。
 

1. 授業概要


教材名:「きまりのない国」
教科書:光村図書 道徳 3年
徳目:規則の尊重
この授業では、主人公・けんたが「きまりのない国」に行った際の考えを通じて、児童に「きまりがあることの良さ」を気づかせることを目的とした。また、児童がきまりを守ろうとする実践意欲と態度を育むことを狙いとした。
※ 本時の展開については、論文で添付資料として指導案を載せているが、ここではカットする。


2. 研究協議での課題と振り返り
研究授業後の協議では、以下のような課題が指摘され、次回への提案がまとめられた。

(1) マンガ教材の特性と課題
本教材はマンガ形式で、視覚的に理解しやすい特徴を持っていた。そのため、児童は文章のみの物語に比べて資料の理解が早く進んだと考えられる。しかしながら、この「理解のしやすさ」が、逆に児童が登場人物に自分を重ねて考える機会を減らしているのではないかとの指摘があった。

課題
児童の発言を分析すると、「他人事」として捉えている様子が散見された。具体的には、けんたの行動や考え方を客観的に説明するだけで、自己を投影した発言が少なかったことが示唆された。

次回への提案
発問の工夫が必要である。具体的には以下を検討する。

  • 自己投影型の発問:「自分がけんたの立場だったらどうするか」「もし自分が『きまりのない国』に行ったら、どのように感じ、どんな行動を取るか」など、児童が自己の経験や感情を引き出しやすい問いを設定する。

  • 具体的状況へのリンク:児童の日常生活で実際に経験する「きまり」に関連づけた発問を追加し、個別性と共感性を高める。


(2) 板書の形式と思考のサポート
今回、マンガ教材であることを踏まえ、横書きの板書形式を採用した。しかし、児童の思考の整理を支えるツールとして十分に機能したかどうかについては疑問が残った。

課題
横書きの板書が児童の考えをまとめる上で有効だったかどうかが明確ではない。例えば、発言や意見をつなげていくプロセスが見えにくいとの指摘があった。縦書きの方が思考を論理的に組み立てる補助となる場合もあり、その選択基準について再考が必要である。

次回への提案

  • 横書きと縦書きの比較:児童の思考プロセスをどのように板書がサポートできるかを検証するため、横書きと縦書きの形式を比較し、それぞれの利点と欠点を明らかにする。

  • 視覚的補助の追加:意見を整理するために図解や矢印などの補助的要素を取り入れ、児童が議論の流れや結論を視覚的に追いやすくする工夫を試みる。


3. 全体の振り返り
本授業の研究協議では、マンガ教材という特性に基づく課題が浮き彫りとなり、発問や板書の工夫が今後の改善ポイントとして示された。これらの課題に対応するため、次回の授業では以下の点に重点を置く予定である。

  1. 児童が自己と教材を結びつける発問設計の強化。

  2. 板書形式の選択基準を明確化し、児童の思考をより効果的に支援する方法を模索する。

 
これらの取り組みにより、児童の主体的な学びを促進し、道徳的価値の深い理解と実践的態度の育成をさらに高めていくことが期待される。