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ICTの研究を15年前におこなっているのに実践が還元できない

 
15年前の研究での中間報告書。今おこなっていることの基礎的なことはすべて経験している。

当時、私の学校だけが真面目に取り組んでいて、他の学校は何もせず、大学の先生が行くときだけ慌ててしていたと聞いていた。
 
2011.7.16 
 

~T21プロジェクト経過報告~


 
 

1.ドリルソフトの活用


  ・朝のドリル学習タイム
   始業前時間を利用し、児童自らがドリル学習をおこなう。
   週2回、漢字と算数にわけておこなう。
○ 教師が丸付けをする必要がなく、各児童が自らのペースで学習をおこなうことがきた
○ ゲーム感覚で取り組めるので、児童にとって学習に向かう意欲が増した。
○ 採点はクラウド内部でおこなうため、採点に関して人的なミスがない。また、各個人の習得状態をデータとして蓄積することができるので、個別指導をおこなう際、そのデータが参考になった。

×パソコン上で間違いを指摘されても、パソコンが間違い直しや、やり直しを強要することはない。そのため、児童の意識により習得という点で大きな格差が生まれた。
×通信状況が悪いと、クラウド内の問題にアクセスすることができず、その時間にまったく学習できない状態があった。
×パソコンのトラブルは児童だけで解決できないことがある。そのため、メンテナンスに時間を取られた。
 
  

・授業中の復習


複式の授業で、教師が指導できない場面において、自ら復習をおこなう。
○ 社会科・理科において、細かい解説がついているので、自主的に復習をおこなうことができた。
○ 学習プリントや自習学習する内容をこと細かく指示するようなものを用意する必要がなかった。

×教科書や指導内容に一致したものでないため、児童が問題の意味を理解できずに苦労した。「習っていない」という言葉が多く出た。
×クラウド上のチェックなので、本当に分かっているのかを表情や書いた文字などを通して確認することができない。
×通信上のエラーが生じた場合、復旧作業に時間がかかりすぎ、本来指導すべきことが何もできずに、ただ待たせるだけの場面があった。
 
 
 

2-1:電子百科事典を使った情報検索


2-2:インターネットを使った情報検索

・各教科において、調べ学習として活用する


○ 小学校の机上スペースは限られている。百科事典や辞書などをおくよりパソコンだけを置くのであれば省スペースですむので、ノートに書きこむ作業スペースが確保できた。
○ 辞典や辞書の場合、調べたことが載っていないとき、何度も取り替える必要があるが、パソコンはその必要がないので、机から離れて、図書室や学級文庫に取りに行く時間が省ける。作業中、集中力の持続が可能になった。
○ 電子百科事典にはすべてふりがながうってあり、中には動画で説明しているものもあるので、内容理解が容易おこなえた。
○ 調べることに対し、文字入力だけで回答が得られるので、目的に向かい最短処理で調べることができた。

×調べる段階において、友だちとのコミュニケーション無しで目的に達してしまう。友だちの話のなかには、調べる方向や考えるヒントがある場合が多いので、その場面を作る機会が少なくなった。
×百科事典での調べ学習では、調べる途中でいろいろな写真に目が入り、調べることに関係ないが、興味本位からその解説を読んでしまう等、寄り道することがある。しかし、それが今後の学習に生かされるということが多々ある。電子百科事典ではその寄り道が非常に少ない。
      

3.交流活動での活用
   ・スカイプを使って他校の生徒と話し合い活動を通した授業


○ 少人数なので、意見の種類が必然的に少なくなる。そこで、スカイプを使い、他校の児童とペアになり、話し合い活動を通して授業をおこなった。意見を交換することで考え方に深みをだすことができた。
○ 人数が2倍の仮想クラスができたので、クラスの雰囲気がかわった。
○ 家庭のパソコンでは、通信手段としての個人的な用途が主であるのにも関わらず、教育の場では個人的な通信は禁止である。新しい試みに、児童の関心は高まった。
○ 他人と関わることで、人とのコミュニケーションスキルが向上した。
○ その後、偶然にもスカイプで知り合った友だちと会う機会をもうけることができたので、児童たちは人間関係をどう築いていったらいいのかを知ることができた。

×通信システムがすべてである。もし通信できない場合は、授業として成立しない。
×他校児童との話し合いによる、意見の多様性をもとめたが、他校の児童と話し合う中で、全ペアの意見が平均化してしまい、同じような意見になってしまった。
 
   

・創作活動での作品の発信


○ 学校紹介スライドを作成し、このスライドを他校の児童に紹介することで、他校の児童とのコミュニケーションをとるきっかけとなった。
○ 地域の特色を取材し、新聞作りソフトを使って新聞を作成。その新聞をネット上で公開した。自分の記事についての反応が楽しみであった。つまり、多様な評価が期待でき、その評価が今後のやる気につながる。

×早急なレスポンスを期待してしまうが、学校教育内という条件のもとで返事をすることになるため、早急に返事をもらえないことの寂しさがあった。
 

4.創作的活動での活用
   ・写真加工


○ 手軽に作品を作ることができた。
○ 写真に個性がでるので、その子の思いなどを受け止めることができた。
○ 写真から興味関心をより深くひきだすことができた。

×デジカメが人数分必要である。
×教材としての位置づけと目的をどうするのかを考える必要がある。
 
 

  ・新聞づくり


○ 報告文として書き進めることができるので短時間で作成することができた。詳しく説明すると、作文とちがい、自分の気持ちや様子を工夫すること無く、事実の羅列で記事を作ることができるということである。
○ 新聞作りは国語の学習で経験している。そのため、作品の完成がイメージできていたので、取り組みやすいようであった。
○ 作った新聞は、紙媒体に印刷することもできる。この新聞を持って取材させていただいた所にお礼に行くと喜んでもらえた。

×どのような記事を書かせるのか、それは何を読者に伝いたいのかなど、教材として児童が新聞作りに興味深く取り組めるため、事前の細かい指導が必要であった。
×ソフトを使いこなすための時間がある程度必要であった。
   

・マルチディアスライドの作成


○ スライド制作では、動画のような効果を期待できるので、作った作品に児童が満足していた。
○ スライド作りのスキルを習得することで、その後の活動の幅が広がった。例えば、感謝集会で調理員さんや用務員さんの紹介スライドを作ったり、ブックトークでスライドを利用した本の紹介をおこなったりした。

×制作において時間の確保に苦労した。
×教育的活動として指導者側がめあてをしっかりと持って取り組まないと、ただただスライドを作って終わりということになる。


5.まとめ


 タブレットパソコンは、新しい教育ツールとして可能性はつねに広がっている。 
 イメージとして、学校の図書室、教具室にあるものすべてが、デジタルとして詰まっていると考えればよくわかるだろう。
 学習教材用具を用意するという例えで考えてみる。算数科の授業で、水のかさを学習するとする。「子どもたちに水をくむところを見せたい。だから、教具室からリットルマスとデシリットルマスを用意しないといけない。」と考える。しかし、この手間をパソコン上でおこなえば、教具室に行く必要もなくなる。児童が机の上にパソコンを用意すれば準備完了となる。学習用のコンテンツとして実際のマスに水を入れるような活動が動画で学習ができる。
 国語においても、調べる必要があるとき、図書室に行く必要もなく、図鑑や辞典の代わりにパソコンで間に合わせることが可能である。
 理科では、難しい実験や、特別な道具なしでは観察することができない自然界の営みも、パソコンで見ることができる。ビデオと違って、事実結果を見せるだけでなく、実験のシミュレーションまでおこなえるので、実験過程に参加できるという利点もある。
 通信手段としても、メールや画像添付による応答をすることで、1時間の授業の中で相手とやり取りすることが可能である。電話よりテレビ電話的な手法でお互いの表情を確かめあいながら話もできる。特に、本校のような山奥の極小規模校では、クラスにより児童が一人だけという学年が存在している。交流学習をおこなうにも、移動に時間がかかりすぎるとなれば、テレビ会議等利用によるバーチャル教室に参加するという方法に期待してしまう。
 こういうふうに見ていけば、タブレットパソコンの使用方法はもっと広がっていきそうだ。
 ただし、上記の授業が成立するためには、一つの条件をクリアしなければならない。それが、パソコンのトラブルを短時間で解決できる措置がほどこされているかという点である。
 パソコンが起動しない・ソフトが入っていない。ファイルが無くなっている・通信できない等々多くのトラブルが必ずおこっている。
 特に、普段は気にせずおこなえたことが、ここ一番の授業でトラブルがおこってしまい、子どもたちに興味をもって取り組んでもらおうとしたことが台無しになったこともある。
 また、小学校の教師側の立場で言えば、児童に指導することが専門であるため、パソコンでネットワークを組むほどのスキルをすべての教師が持っている訳ではない。そのため、専門的な知識を持っている者にとってはほんの些細なトラブルでも、まったくお手上げの状態となってしまう。
 そうなると、パソコン使用に躊躇してしまうことも分かってもらえるだろう。
 
 広がる可能性と目の前にある課題。両方を具体的に検証していくため、多くの学校が取り組み、その情報から見えてきたことを検討していくことが必要である。


情報共有してないので、同じことをどの学校でも何度も実行してしまっているのが今の実情。この情報共有のシステムしっかりと作ることが和歌山県の教育委員会の大事な仕事だと思うが、そんなことには手をださない。残念である。