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シリーズ 特別支援を視野に入れた図画指導 その9回目

小学校図工実践 その9

「マグロのセリ市場を描こう」

全員が成功体験をすることによって、絵を描くことが好きになる。だから、安定した活動ができる。


4時間目: 着色

着色は全員の成功体験を目指す上で非常に重要な工程です。下絵の段階では、失敗してもやり直せるという安心感があります。これは教師側にも余裕を生むため、子どもたちがリラックスして取り組むことができます。一方で、着色は一発勝負の要素が強く、失敗への不安や迷いが生じやすい工程です。

そのため、以下のような指導方法が求められます。


NG指導例 1

「このくらいなら大丈夫だろう」という慢心から、前の学年の指導を信じて子どもに任せきりにすること。

対応策:

初めの段階では、一つひとつを確認しながら進めます。特に特別支援を要する児童にとっては、具体的な手順の提示が必要です。彼らは何をしていいか分からず、結果として絵の具で遊んでしまうこともあります。これが悪循環を引き起こす原因となります。

そこで、まずは「水で絵の具を溶く」ことに徹底的にこだわります。

  • 絵の具の濃さの例え:

    • トンカツソースのように濃いのはNG。

    • ポン酢くらいの薄さが適切。

  • 薄い色で塗り始める:

    • 万が一失敗しても、薄い色なら後から修正可能。

    • 濃い色では修正が難しく、バランスが崩れる恐れがある。

  • 具体的な手順:

  • 「先生が絵の具チェックをして合格した人から着色を始めます」と伝える。

  • 全員の絵の具の濃度を確認してから進める。


着色方法

  • 『てんてん塗り』の採用: 筆を点で置くように塗ることで、色が均一にならず、絵の具のにじみが微妙な存在感を生み出します。

  • 褒める言葉の例:

    • 「これまでの絵と違って最高傑作ができそうだね!」

    • 「このトラック、雰囲気があるよ。前の学年よりずっといい出来だ。」

褒めることで、子どもたちはてんてん塗りを継続しようとします。

  • もし速さを優先し始めたら: 「この塗り方じゃ、せっかく描いた絵が生きてこないよ。てんてん塗りで塗った方が色の感じが本物ぽくって全然違うね。」と、静かに説明します。


NG指導例 2

「塗らせっぱなしで、具体的な方向性を示さないこと。」

対応策:

子どもたちは上手に塗りたいと思っていますが、どうすればいいのか分からないことが多いです。明確な指導がなければ、学年が進んでも表現方法が変わりません。

  • 順序:

    • 地面、空、建物などの背景は最後に塗る。

    • マグロやトラック、リフト、人などの主要部分を最初に塗る。


  • 影のつけ方:

    • 絵の具を水で薄め、少量の茶色を混ぜて影の色を作る。

    • 寒色には黒や補色を極々少量混ぜる。


  • 具体的な指導:

    • 影をつける位置を一人ひとりに見せながら説明。

    • 物の下部分にてんてん塗りで影を置く方法を実演。


成果とまとめ

着色が進むにつれ、全員が作品の仕上がりに集中するようになります。この過程で特別支援が必要な児童にも個別に対応する時間を確保できました。影をつけたことで、子どもたちの絵はこれまでと異なる雰囲気を持つ作品に仕上がり、全員が自分の進歩を感じることができました。

全員が「成功した」という達成感を得られることで、絵を描くことへの興味が深まり、次回の活動への意欲が向上します。


では、今回も制作途中の作品を紹介していきます。


ここまできたら方向性がわかる。
屋根と地面を塗ると完成が見えてくる