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私と卵と、これから。それから。 最終話

卵子凍結からから3年。

私の生活は特に大きく変わっていない。
パートナーもいなければ、卵子も凍結されたままだ。
2ヶ月前に42歳になって「アラフォー」も終盤。
年齢を考えて焦ることはいまだにあるけれど、未来のパートナーとの子供が欲しくなった時のために「自分ができることはやった」という自負があるから以前のように焦りから落ち込んだり動揺するようなことはなくなった。

卵子を凍結しているからと言う理由以外にも前ほど焦らなくなった理由は沢山あると思う。以前に比べてほんの少し生き方の多様性に対する人々の考えが寛容になったような気がするし、いろんな選択がしやすい状況が生まれ始めている気がする。
自虐的な言い方をすると、40代の私に対する周囲の期待が薄れたが故にそう感じている可能性も大いにあり得るけど。
それでも女性だったら結婚して子供を産むのが当たり前と言う見えない縛りが緩和されてきている印象がある。

また40代で妊娠、出産するケースが増えてきていると言う事実も間違いなく焦りの軽減に繋がっている(厚生労働省の統計でも40代の出産率が増加傾向にあることがわかっている)。
ここ数年で同年代の友人たちの出産を間近に見届けてきて、人知れずとても勇気づけられている実感がある。
もちろん個人差はあるし、凍結卵子があるからといって受精、着床、成長を経て出産するまでのハードルは高いし、年齢が上がれば上がるほど確率が下がるのは変わらない事実。

現在の日本では、卵子を凍結しておける年齢の上限も平均して45歳と言われている。
つまり私もあと3年。
私が卵子を保管しているクリニックは手術などの初期費用に採取した日から1年間分の保管費用が含まれていて、それ以降は3年毎に保管料を支払うシステムになっている。21年に採取し、22年に3年分の保管料を支払っているので、来年25年の秋にまた継続保管料を支払うことになっている。
来年の秋には43歳になっているから最後の更新。

その時にまだ妊娠の予定がなかった場合はまた違った焦りや不安が押し寄せてくるのだろうか。
それとも、どこかで腹を括っているのだろうか。
未来のことはわからない。
わからないけど、未来の私のために3年前の私が下した決断は間違っていなかったと思う。

お金も時間もかかるし、何よりも身体への負担が大きかった。本当に体調が元の状態まで回復したと思えるのに私の場合は余裕で一年はかかった。それでも焦りと不安と孤独に押しつぶされそうになりながら過ごしていた日々と比べると、やっぱりあの時卵子凍結をして良かったと思っている。

そしてこの経験を通してありがたい副産物を手にすることができた。
それは、女性の生理やウェルビーイングについて考え続けることから生まれたアイディアと、アイディアを形にしてみようと思う勇気だ。

長く付き合っていかなければいけない自分の身体のことなのに、あまりにも知らないことが多かったという事実、そして向き合わざるを得ない生殖機能のタイムラインについて。
この経験を通して得た学びも多かったが、抱く疑問や感じる違和感はそれ以上に多かった。

女性として自立した社会生活を送る上で直面する様々な課題を少しづつでも解消していけたら、そのような取り組みに微力ながら貢献できたら。
自分のためにもこの課題に向き合い続けたい、そう思うようになっていた。

だから、ここまではあくまでも私のストーリーの序章。

悩み、考え続けた数年。
精神的にも物理的にも今までにない「旅」をしてきた。
そんな期間を経て、ようやく新しい章が始まった。
今はただ晴れやかな気持ちで新しい挑戦を前に
鳥肌が立つような緊張感と高揚感を覚えている。

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