むにみずべ 東京編10 神田川での染物 水元体験
暑い、暑い、暑すぎる。そんな時は川にでも入りましょうか。今ではほぼ体験出来なくなった川での染物体験が、こんな都心の川底でできます。
これ知っていますか?
贅沢できない武士の気合い
江戸の染物といえば、江戸小紋です。
ともすると気が付いても貰えなさそうな細部のこだわりこそ、江戸小紋の真髄です。
江戸時代、奢侈禁止令と呼ばれる贅沢禁止令が度々出され、武士も町人も派手な装飾を着ることが難しくなりました。
それでも、他人と一緒なんて耐えられない。
食わずに楊枝をしゃぶっている武士も、食って楊枝を使う粋な商人も、この江戸小紋の細部のこだわりこそ、プライドだった訳です。
さてそんな江戸の染物を一手に引き受けたのは、神田紺屋町。ちなみに、紺屋町以外で染められたものを指して、「場違い」という言葉が生まれるほど、その独占体制は桁違いでした。
飲んで漕いで洗い流す 神田川争奪戦
神田紺屋町の染物屋が、残った糊や余分な染料を洗い流したのは、藍染川と呼ばれた神田川の支流です。
思えば神田川は、江戸城の外濠でありつつ、最初の上水として整備され、神楽坂までは舟運が発達、そして河口付近には染物屋が染料を洗い流すという、大混戦の川でした。
品質が落ちては、「場違い」の皆さんに笑い物になってしまいますから、染物を洗う工程、|水元≪みずもと≫には、もちろん清流のたっぷりな水が必要です。
江戸が終わり、東京と呼ばれ始めて40年ほど経った頃、人口増加と共に汚れも多く水量も減る中、徐々に染物屋は神田川を遡り、妙正寺川と神田川が落ち合い、水量が豊富な落合のあたりに集まる様になりました。
今でも新宿の摩天楼がそびえるすぐそこで、落合、中井のあたりには染物業者が集まります。
そして年2回、夏と冬に街は染物一色に染め上がります。
神田川での水元体験
夏は、この水元体験。
小紋染は、型紙で柄の部分と、地の部分それぞれに違う色の糊を載せることで染め上げるので、最後に布に残った糊を洗い流す必要があります。これが水元です。
かつては当たり前だった光景も、環境への影響に配慮して染料を川に流すことができなくなりました。
江戸と並ぶ、京都と金沢にも、友禅流しという少し似た風景がありますが、手描きで華やかな柄を染め上げる友禅に対して、型紙でパターンを染める小紋は江戸で特に発達した着物です。
そんなかつての風景がよみがえるこの真夏の土曜日。まずは自分たちで布を染めた後、実際に水元ができるのがこの体験の面白さです。
せっかく川に入るなら、そこならではの体験ができると最高です。
なお。体験の主な対象は、戸塚地区の青少年達なので、全世界の老若男女が皆んな神田川に布と自分を浸せる訳ではありませんが、
もし体験できることになった方は、ラッキーですね。ぜひ楽しんでください。
けれども、この神田川親水テラスは8/10まで、開放中ですので、暑すぎて陸で生活できなくなった方は、川に入ることも検討した方が良いかもしれません。都内の方なら昼休みにバシャバシャできるかも。
染の小道
さて真夏の水元と並ぶ、この界隈の真冬のイベントはこちらです。
こちらは神田川ではなく、妙正寺川の上に染めた布をかける素敵なイベント。こちらもまた、この地域と川の繋がりを感じる取り組みです。
以上、大都会東京の少し前の風景と文化が垣間見える、と言うよりもまず、真夏に川に入れるむにみずべ、神田川水元体験でした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?