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2024年に読んだ本など(4)(2025年に読みたい本、読むべき本)

承前。今年もあと残り一日。前々日に少し片付けて掃除した研究室。1999年に着任して27年目に突入する2025年。どのような読書年になりますか……。

まずは大学史関係では自分が担当する下巻とは直接関係ないものの、読んでおきたいのが、荻野富士夫『戦前文部省の治安機能 「思想統制」から「教学錬成」へ 新装版』(明誠書林、2022年)西山伸『検証 学徒出陣』(歴史文化ライブラリー、2024年)。下巻に関係するものとしては、児美川孝一郎『新自由主義教育の40年: 「生き方コントロール」の未来形』(青土社、2024年)がある。児美川本のAmazonの紹介文では「改革の〈抗いがたさ〉を見つめる なぜキャリア教育は「生き方教育」化してきたのか。大学改革はいかに教育を変容させていったのか。教員たちの真の「働き方改革」とは何か。なぜ教育の「市場化」に抗うことは難しいのか。教育現場に寄り添いながら、現代日本の教育史を問い直す一大クロニクル」とある。キャリア教育中心の分析のようだが、参考になりそう。

ところで2025年は戦後80年の節目の年。昭和はちょうど100年ということで普通選挙法制定、治安維持法制定からもちょうど100年。何かとメモリアルでアニバーサリーな1年になりそう。というわけでゼミのテーマも「戦後80年の日本経済史を検証する」と掲げたら応募してくれた学生はたった3人だった(笑)。そんな有望なゼミの学生とも一緒に読みたいのが2024年に新書として刊行された禹宗杬、沼尻晃伸 『〈一人前〉と戦後社会 対等を求めて』 (岩波新書、2024年)渡辺将人『台湾のデモクラシー メディア、選挙、アメリカ』 (中公新書、2024年)原武史『象徴天皇の実像 「昭和天皇拝謁記」を読む』(岩波新書、2024年)原田昌博『ナチズム前夜 ワイマル共和国と政治的暴力』 (集英社新書、2024年) など。あと新書ではないが、山川から出た「日本史の現在シリーズ」の5巻6巻など。2024年以前刊行の本としては、加藤聖文『「大日本帝国」崩壊 東アジアの1945年』(中公新書、2009年)坂野潤治『帝国と立憲 日中戦争はなぜ防げなかったのか』(筑摩書房、2017年)も是非読んでもらいたい。指導すべき院生などがいれば、 黒田昌裕『科学技術と日本の経済成長:知的資本投資の効果測定』(慶應義塾出版会、2024年)もや重松利彦『江戸時代の人口・耕地面積・主要穀物生産高の再検討―江戸時代・明治維新期における農民の摂取エネルギー・穀物摂取量にもとづく』(農文協プロダクション、2023年)も面白そう。

最後に蔦屋重三郎が主人公の2025年大河ドラマ関連本をいくつか思いつくままに。まずは、今田洋三著『江戸の本屋さん』(1987年、平凡社ライブラリー版2009年)は絶対にはずせない。初版以来の再読中。まずは読んでおくべき一冊だろう。江戸時代の出版文化史は数多出ているが、時代は田沼時代。田沼時代と言えば、かなり古いが実証史学の立場から田沼再評価のきっかけとなった辻善之助『田沼時代』(原著は日本学術普及会、1915年、岩波文庫版、1980年)。こちらも院生時代に読んだ本。再読必至。あわせて藤田覚『田沼意次 御不審を蒙ること、身に覚えなし』(ミネルヴァ書房、2007年)も。田沼失脚後に「寛政の改革」を主導し「出版文化冬の時代」を現出させた松平定信は、当然、蔦屋の敵役。だが、もちろん単なる敵役としてではなく、2021年大河ドラマの主人公・渋沢栄一が敬愛していた人物という側面も出して欲しいところ。また鬼平こと長谷川宣以も登場するが、この歴史小説上のヒーローであると同時に石川島人足寄場などの設営など「社会政策」を実現した人物についても面白そうな本があれば読みたいのだが、今のところあまり見当たらない。瀧川政次郎『長谷川平蔵』(中公文庫、1994年)くらいか? また曲亭馬琴も蔦屋の勤め人として登場するので、2024年のヒット映画『八犬伝』の原作、山田風太郎『八犬伝』、河出文庫)も読んでおきたい。

そして、2025年は自分の本を是非読んでみたい。







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