『鎌倉殿の13人』第5回「兄との約束」(2022年2月6日放送 NHK BSP 18:00-18:45 総合20:00-20:45)
今回は頼朝挙兵から石橋山の戦いまで。三谷幸喜脚本であまり血の出るシーンはないかと思っていたが、堤信遠を討ち取るシーンではいきなり血しぶきが上がっていた。義時はびびってトドメを刺すことができずに兄の宗時が代わってトドメを刺した。「これで終わりじゃねえぞ。はじまったばかりだ」と父時政の言葉は、まさにその通りで、これから40年ほどかけて義時は権力争奪戦を勝ち上がっていくこととなる。
この頼朝挙兵に激怒した大庭景親、伊東祐親らは頼朝討伐の兵を挙げる。その数は3000騎。一方、頼朝方についたのは当初わずか300騎。今回のメインである「石橋山の戦い」が幕を開けた。『平家物語』でもよく知られている石橋山の口合戦、大庭景親と北条時政の見せ所は良かった。しかし、北条から見れば、三浦の援軍を待たなくてはならないところを逆に伊東の軍に挟撃され、山中に敗走。その際、義時の兄の宗時が「源氏も平家もどうでも良い。俺はこの坂東を俺たちだけのものにしたいんだ。西から来た奴らの顔色をうかがって暮らすのはもうまっぴらだ。坂東武者の世を作る。そしてそのてっぺんに北条が立つ。そのためには源氏の力がいるんだ。頼朝の力がどうしてもね」は良かった。
その宗時は本隊から離れた隙に伊東の下人・善児に謀殺される。九郎祐清は「いくさの習わしに反します」と諫言していたのだが、祐親の「決して討ち漏らすな」という命を忠実に実行したものであった。実際には祐親軍と戦って討ち死にしたらしいが、「武士の戦い=正々堂々」というイメージだけでは語れないようなこうした暗殺や謀略のほうが史実に近そうな感じがするし、今後のドラマ全体にも欠かせないと思う。
次回以降の伏線としては、頼朝の「所信表明」である土地の分配政策について描かれていたのが重要。頼朝が房総に逃げて、再び蹶起していく過程で坂東武者たちが続々と加勢していったのには源氏の棟梁たる頼朝が坂東の政事、つまり土地の分配をおこなったからにほかならず、それを補強したのが以仁王の令旨や後白河の院宣であった。あとは戦争を支える経済力ということになるが、これには寺社勢力が大きく関わっていたはずである。