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【11日目】『怒り』のトリセツと「叱る」との違い(カンジョウのトリセツ)

 今回も『怒り』についてです。怒りはとても扱いが難しい感情だと思うので、さらに深掘りしていきたいと思います。

◆怒りのトリセツと「守るもの」

 何度も書いていますが、怒りというのは

【防衛反応】

です。怒っている人というのは必ず、いいですか、必ずです、何か「守るもの」を持っています。

 怒っている人に対峙するのは、とても難しいものですよね。なにせ、こちらを害してくるかもしれませんから(気分的にも、物理的にもです)とても怖い気持ちになりますもんね。

 ですがそんなときこそ、こう考えてほしいんです。

「この人は、何を守ろうとしてるんだろう?」

 こう「アタマ」を動かすことによって、相手への「モトの流出」がすこし和らぎます。そもそも怖がっているということは、相手に注目しているということでしたね。後のお話にも出てきますが、「怖いものは、ちゃんと見つめると消える」んです。このやり方を、よく覚えておいて下さい。

 さて、怒りの話に戻りましょう。

 今度は逆に、自分自身が怒っているときです。怒りというものはとても激しい感情なので、自分自身でも「あ、怒ってるな自分」と考えている余裕なんか全然持てないものだったりもしますよね。あとで振り返ってみて「どうしてそんなに怒ってしまったんだろう」としみじみ申し訳なく思ってしまう……そういう経験は誰しもあるんじゃないでしょうか。

 とはいえ、大抵の場合はそこまで激しい怒りではなく、なんとなくイラッとしてしまったりとか、急にカーっとなるとか、そういう程度の怒りなんじゃないかと思うんです。そんなときは「あ、今自分は怒っているぞ」と、自分自身で気が付けたりするものですよね。
 他にも、アンガーマネージメントをしている方など、普段から「怒っている自分」に気がつけるように意識している方もたくさんいるでしょう。

 で、問題は「怒っている自分」に気がついたとき、どう「アタマ」を動かしたらいいか、ということです。

 ここでも、先ほどと同じ「怒りの正体」が役に立ちます。怒りは【防衛反応】なんでしたね。だから、どうして自分が怒っているのだろう? と思ったら

「自分が何を守ろうとしているのか」

に注目してみて下さい。あなた自身が怒っているときも、やっぱりアタマが「守るべきものが攻撃されている」と判断しています。そう判断しているからこそ、好き嫌いゲージが「嫌い」側にグイッと動いたんです。
 守ろうとしているものは本当に人それぞれなんです。それこそ

・立場
(先輩・後輩、親・子、上司・部下、先生・生徒、年上・年下、嫁・姑などなど)

・財産
(お金、資産、土地、権利、持ち物の所有権などなど)

・プライド

(私のほうが優れている、私のほうが金持ちだ、私のほうがカラダが美しい、私のほうが立場が上だ、などなど)

・自分以外の人

(家族、友人、先生、恋人、配偶者、そしてその人たちの財産や立場などなど)

・社会

(法律や常識的なもの、秩序や風紀、場の空気などなど)

といった具合に、もう本当に人それぞれで、場合にもよるんです。だから『怒り』の直接の原因はケースバイケースなんですけど、その根本はやっぱり【防衛反応】にあるんです。この

「何を守ろうとしているのか?」

という指針は、自分の怒りにも、相手の怒りにも有効なはずです。ぜひ活用してみて下さい。

◆テンカウント法で冷静さを取り戻す

 それでもやっぱり、自分の怒りをしずめるのは難しい、と思う方は「テンカウント法」を試してみて下さい。
 ココロに怒りの感情がわき起こると、脳が反応してアドレナリンをガッと出します。こうして怒りの感情がカラダに伝わって「怒る」わけですが、このアドレナリンの効果はだいたい10秒くらいだと言われています。
 ですから、カーっとなったらその場で目を閉じて、ゆっくり10秒数えてみて下さい。アドレナリンの分泌が緩やかになるので、すこし「カッとなる」感覚が収まるはずです。そしたら「守るもの」について考える余裕ができるかもしれません。

◆「怒る」と「叱る」の違い

 さて、こうやって自分自身の怒りと向き合った結果、怒りの気持ちがスッと収まることもあるでしょう。ですが、社会という場所では時折

「自分が怒っていること」を表明する

必要がある場合もありますよね。
 たとえばお子さんがイタズラをしたとき、やたらめったらに怒るわけではなく、ちゃんと「怒ってみせる」ことで「あ、これはいけないんだな」と子供に分かってもらおうとする、そういうコミュニケーションもよくあるものです。

 こういう行動は「怒る」ではなく「叱る」と呼ばれます。

 よほど無神経な人でない限り、人を怒らせてしまうと申し訳ない気持ちになるものです。特に自分が原因で相手が怒っているなら、なおさらです。その気持を利用してこちらが「怒っている姿」を見せることで、相手に反省を促す行動が「叱る」と呼ばれる行動です。

 ですから「叱る」ときは、アタマが「やりなさい」と命じています。これが「怒る」との違いです。怒りはココロがわき起こす感情ですからね。

 もちろん「怒り」をもって「叱る」こともよくあるでしょう。ですがアタマで考えた結果「叱る」選択をする、ということは、ただ単に怒ってモトを吸い取ろうとしているのではなく、最終的に相手の成長や成功を願っているからこそ「叱る」わけです。
 ですから、相手を叱っているときには「思いやり」の気持ちが含まれています。守ろうとしているものが、叱っている相手だったりするのかもしれませんね。
 こういう思いやりは、うまく伝われば相手を人間的に大きく成長させます。叱られたときは「モトが減る」のでシュンとなってしまうけど、あとで考えてみたら、あのときあの人がちゃんと叱ってくれてよかったな……ということも、歳を重ねていくごとに分かっていくものです。ご自身にも経験があるんじゃないですか?

 だからです、ただ単に「怒る」んじゃなくて、上手に「叱る」ことで、最終的に自分のモトも、相手のモトも増えることがあります。これはいわゆる『二番目のモトあつめ』ではありませんが、最終的に二人ともモトが増えるのであれば、僕たちが幸せに生きていく上で重要な手段であると言えます。

 大事なのは、ただ単に「怒る」のと「叱る」の区別をきちんとつけることです。これらは「出どころが違う」んです。ココロから出た気持ちに素直に従っているだけなのか、アタマできちんと考えて、なおかつ怒って見せているのか。ここがきちんと区別できると、自分自身の厄介な「怒り」の感情を上手に活用できるようになるかもしれません。

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 最後に繰り返します。「怒り」という感情にもメカニズムがあり、それは好き嫌いゲージの急な減少によって起こるのですが、なぜ減少するのかというと

「何かを守ろうとしている」

からです。すべての『怒り』は【防衛反応】です。よく覚えておいてくださいね。

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日南本倶生(みゅんひはうぜん)
「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)