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家で過ごす1日の癒し


 外が暑すぎてぐったり、家で過ごす毎日でくり返されるのは麦茶を飲むこと、麦茶を沸かすこと。

 我が家では水出しでも作れる麦茶パックを使用しているが、母の申しつけによりヤカンで沸かした湯にパックを投下する丁寧な麦茶づくりをしている。換気扇をつけてぬるい水道水で満たしたヤカンをコンロに乗せて最強火にかける。ゴォ~って音が段々台所に響くのが心地いい。寝起きにちょうどよく家に1人だったら、この音を聞きながら椅子に座って本を読む。

 寝起きの頭がクリアな瞬間だけ、何も気にせず読書に集中できる。30分以上経つと段々「あ、今日も頭痛い日だな」とか「首ずっと痛いな」とか、覚醒した意識が身体の不調に向き始めてままならなくなる。

 なんとなく本を選ぶ場所でジャンル分けがなされてきた。kindleアンリミテッドで選んだ本はエンタメ色が強いすぐに読み終われるもの、図書館で借りて来た本は逆にしっとりと進み読むのに時間はかかるけど味わい深いもの。そして本屋さんで買う本はあらすじと冒頭をチラ見して心の底から「読みたい!気になる!」と思ったもの。
 今の夢は、いまいち当たりの少ない図書館で思わぬ本との出会いを果たすことだ。阿部公房のエリアから抜き取って借りてから阿部公房でないと気がついた小説、面白いと良いな。

 最近、1日2リットル以上水分を摂ろうと頑張っている。そのため、ずっと家に居る日は1日に2回以上麦茶を沸かす。湧いた湯にパックを放り込んで、菜箸の先っぽでつついて沈めて、10分以上経ったら抜き取り三角コーナーへ捨てる。この時コンロとシンクの間に麦茶の水滴がぽたぽたと落ちるから、それをクーラーでカラカラに乾燥した布巾で拭う。このルーティーンに言いようのない癒しを感じている。

 だからきっと、1人暮らしを始めても私はヤカンで麦茶を沸かしていると思う。寝起きに狭いキッチンで、買ったばかりのピカピカのヤカンに水道水を満たし、火にかける。窓から差し込む光が照らす家具を見ながらぼーーっとする。その時の私が何歳なのか、本当に自力で生きていけているのか、夢を見ているだけなのに色々考えてしまうけれどーーー湯が沸いた。

 お湯を沸かす行為が好きなのかもしれない。ケトルで沸かすのも好きだ。ケトルの場合は、沸いたらコーヒーを淹れられる、ココアを溶かせる、カップラーメンにお湯を注げる、そんな瞬間だからというだけかもしれない。


 夜が来て、2回目の麦茶を沸かし終えた。隣のコンロにヤカンを移して、冷めるのを待つだけである。その頃にはもう母が帰って来ていて、私は寝る時間が近づいている。

 今日はここまで。

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