王国の支配者
ゲームのバグを見つけると、その瞬間、自分がその世界の支配者になったかのような気分になる。
タイトルが「Bugdom=虫の王国」なのは偶然だが、このゲームには3Dゲームにありがちな壁すり抜けのバグがあった。壁をすり抜けると、地平線の彼方まで進んでいくことができる。そこには何も無い、ただ自分だけがいる。まさに新天地だ。そこには何も無いが制限もないので、世界が自分だけのものに感じられた。
同じくPangea Softwareのゲーム『Nanosaur』では、何かに乗ることで大気圏まで飛んでいくことができた記憶がある。プログラムされていないので宇宙空間は無いが、空の支配者になったような気分を味わえた。現実のルールに縛られない、ただ自分だけが知っている秘密の空間だ。
また、恐竜をテーマにしたディズニーの『ダイナソー』でも、プテラノドンか鳥に乗って本来はいけない空のさらにその上に行けるバグがあった気がする。このバグは、残機がおかしくなり増えたので便利なのだが、数回しか成功できなかった。
なおゲーム自体はドライな空気感でヒントが少ないため、すべてのプレイヤーに受け入れられるかはわからない。しかし私にとってはバグを探求する楽しみがあった。
ゲームのバグは単なる不具合ではなく、開発者が意図しない、その世界の裏側に触れる特別な体験だ。通常のプレイでは到達できない場所に行けたり、予期しない挙動を見つけたりするたびに、自分がゲームの枠を超えてその世界の探検者、いや、支配者になったような気持ちになる。
ゲームの限られた空間でありながら、そこに広がる無限の可能性。バグのひとつひとつがゲームの世界をより魅力的にし、私たちを惹きつけてやまないのだ。
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