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甘さの代償

 お酒は弱いので、飲み会ではソフトドリンクを頼むことが多い。糖分の摂り過ぎは避けているつもりだが、ついついオレンジジュースやグレープフルーツジュースを注文してしまう。これらにはビタミンCやミネラル、様々な栄養素が含まれているはずなので、おつまみの塩分と油分を相殺し、トータルでプラスマイナスゼロにできると信じている。「信心深き者は救われる」と言うし、きっと大丈夫だろうと自分に言い聞かせている。

 そして、コーラは別格だ。飲むと自然と心が軽くなり、口の中を駆け抜ける発泡感と官能的な甘さが、普段の抑制を解き放ってくれる。冷えたグラスに注がれた琥珀色の液体を一口含むと、全身に広がる爽快感で体が喜び、次々におつまみへと手が伸びる。さらに、民間療法として風邪にも効くと言われることがあるので、風邪気味のときなどは「これで風邪も吹き飛ばせるかも」と景気づけの一杯にちょうどいい。

 しかし、最近ふと気づいてしまったのだ。コーラには100mlあたり約10mgのカフェインが含まれているという事実に。どうりで活力がみなぎり、飲み会の最中は楽しくなり、そして終わった後に寝付きが悪くなるわけだ。つまり、コーラを飲むこと自体が体を盛り上げ、夜中の興奮状態を引き起こしていたのだ。

 だが、そんなことに気づいたとしても、飲み会の楽しげな空気には勝てない。いつもと同じようにコーラを注文し、泡が弾ける音に耳を傾け、グラスに口をつける。そして、カフェインのことは頭の片隅に押しやって、次から次へとおつまみを貪るのだ。自己矛盾に満ちた一杯とともに、こうして今日も夜は更けていく。翌朝の後悔と焦燥感を引き換えにして。

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