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恐怖の内臓迷宮5本目

 友達の家でゲームをすると、いつだって心が揺さぶられる。見たこともないゲームがあれば、異文化交流が始まる。

 彼が持っていた「スーパーチャイニーズワールド」、「GO!GO!ACKMAN」、「超原人」。どれも画面に映し出されるのは未知の世界だった。「ドラゴンボールGT」で意思疎通はできたが、それ以外は、互いに異星人だった。

 特に忘れられないのが、超原人の体験だ。ゲームの冒頭は、見慣れた東京の街並みが舞台だった。原人が現代に現れ、頭突きで浅草を駆け抜けるキャッチーなスタートだ。しかし、2ステージ目に入った途端、状況は一変する。なんと、怪獣の体内に侵入することになるのだ。

 うねうねと動く粘膜や柔毛のようなもの、壁の奥に見える血管。赤黒く不気味な色合いと生々しい質感に、私の胸はざわざわと落ち着かなくなった。「なんでこんな気持ち悪いところを進まなきゃならないんだ」と戦意を喪失していた私を横目に、友達が「気持ち悪いよなあ、このステージ」と笑い、ゲームを続けた。遊びに来たはずなのに、私はただ苦しんでいた。

 擬似的な不快感を楽しむ、という考えを私は持ち合わせていない。ジェットコースターは怖い。だから「気持ち悪い」「怖い」「早く終わらせたい」と思うばかりだった。いっそ、ゲームを中断してしまいたかったが、友達の前でそれは言えなかった。勇気が足りなかったのだ。私はただ耐えながらゲームを続けた。

 あの体験は間違いなく異なる価値観や感覚とのぶつかり合いだった。友達は、私が嫌がる体内ステージを楽しそうに笑っていた。彼にとっては、あの不気味な世界もまたゲームの魅力の一部だったのだろう。大切な異文化交流の記憶ではあるが、やはり今思い出しても怪獣の体内は気持ち悪いと思う。

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