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日々是随筆-戦後80年、日本のあり方-
今年は第二次世界大戦の敗戦、広島・長崎への原爆投下から80年を迎えた。来年には日本国憲法公布から80年を迎える。
ロシアによるウクライナ侵攻により、日本の安全保障をめぐる議論が憲法制定の理念から離れ、軍備力増強を目指す流れとなってきた。
ここで改めて、市民全員の幸福を目指す人間の安全保障のあり方について考えてみたい。市民が一つの国家のもとに安全かつ幸福に暮らす条件は次の3つと考える。
① 食料の確保(食糧安全保障)
②エネルギー資源の確保(エネルギー安全保障)
③他国からの信頼
食糧安全保障は人間が生存するための最低限の条件である。しかし、日本の食料自給率は38%(摂取エネルギーベース)しかない。しかも、家畜の飼料、種、肥料も海外に大きく依存している。こうした状況を改善するためには、米食中心の食習慣を向上させることが必要である。国内で生産される現在過剰気味であるお米は栄養価も高く、自給性も高いので米食を復権させることがまず第一条件である。次に永続的な農業の担い手を育成することである。AIやドローンの活用による農業の現代化と労働条件の改善が必要である。
海外の石油や天然ガスに大きく依存している現状をすぐに変えるのは難しいが、まずできることから始める必要がある。それは再生エネルギーを最大限活かすことである。公共施設や大規模建築物のみならず、全ての戸建住宅に太陽光発電を設置することで、日本のエネルギーの多くは賄えるはずである。これに加え洋上風力や水力発電(夜間電力を利用した都市型水力発電を含む)を組みわせることも必要である。また大陸棚に眠るメタンハイドレードの実用化も急ぐべきである。
他国から信頼される国にはなるには、まず過大な軍事力保持による脅威を与えないことが前提である。そして、他国から必要とされる人材や商品・サービスを提供することである。「やはり日本がなければ・・・」と全ての国に信頼される国になることが本当の安全をもたらすと考える。そのためには、教育への投資が不可欠である。現在日本の教育への投資は先進国の中では低位にある。高等教育までの無償化や大学院教育の充実が必要である。
中国の軍拡、北朝鮮のミサイル実験、そしてロシアのウクライナ侵攻によって、日本の政治家は防衛力の増強、特に「敵基地攻撃能力の保持」「南西諸島防衛」「同志国への防衛品供与」に前のめりになっている。
このような政治家たちは本当に戦争の現実を理解しているのだろうか。戦争では確実に市民の命が失われる。兵器があれば戦争ができるのではない。
敵基地攻撃をする場合、自衛隊員の誰かが参加する。そして命を落とす可能性もある。ここまでの想像力を政治家は持っているのか大いに疑問である。少子化で若者が減少していく日本において、考えるべきは若者を先に挙げた3つの安全保障の担い手に育てることである。
防衛費を増やすのではなく、日本国憲法制定時の精神に立ち返って、非軍事ないしは最小限の防衛力のもと、外交力や経済協力、人的協力により他国から信頼される日本を目指すべきと考える。