10代をターゲットにした美容広告に対する英国の対応
はじめに
昨年末くらいに物議を醸した、10代向けの美容整形広告。
その後も特に規制される気配はありません。
運営元としては「コンプレックスを植え付ける意図はございません」との回答だったようですが、十分に若い女性の心身に影響を及ぼすものだと思います。
SNSが普及し若い女性が毎日のように使う中で、他人から共感を得ようとしすぎたり、自尊心の低下などの心理的な悪影響が明らかになっています。そのような女性にとって美容医療が一つの解決策なのは理解できます。
一方で商業目的でルッキズムを助長させ、成長過程の未成年に美容医療を勧める姿勢は賛否両論あるかと思います。
日本政府の姿勢
厚生労働省の「医療法における病院等の広告規制について」によると、誇大広告(「No.1」「最高」「絶対」など)、曖昧な価格表示、安易に誘導する表現などが禁止されていますが、年齢への考慮は特になさそうです。(2024年現在)
英国の姿勢
Leeds大学形成外科のSimon Kay教授が2003年に英国形成外科ジャーナルに美容医療へのアクセス規制の仕組みに関する社説を出しました。
社説では健康をもたらす手術(保険適用)とライフスタイル手術(自由診療)を明確に区別し、美容医療のあり方は恣意的で政治的なものになりやすく、規制を下す部署の所在が難しいことを提起しています。
その後時は進み、現在では英国の保健社会福祉省のウェブサイトの「イングランドの女性の健康戦略」に英国政府としての姿勢が明確に示されました。
注目すべきは「メンタルヘルスとウェルビーイング」の項です。
・オンラインで他人と不健康な比較をすることの影響について学校で教育することを義務づける。
・18歳未満の人を非外科的美容処置の影響から守るために、政府は「ボツリヌス毒素および美容充填剤(児童)法2021」を可決し、18歳未満の人が美容目的で「ボトックス」や美容充填剤を利用することを禁止した。
英国では未成年への美容広告を禁止している
以下は同ウェブサイトからの引用です。
・18歳未満をターゲットにした美容整形の広告は禁止し(外科的介入、非外科的介入の両方を対象)、Facebook、TikTok、Instagramなどのソーシャルメディアサイトから看板やポスター、新聞、雑誌、ラジオ、ソーシャルインフルエンサーマーケティングまで、18歳未満をターゲットにしたり、その年齢層に特にアピールする可能性のあるすべてのメディアでの広告を禁止する。
まとめ
英国ではルッキズムの助長やコンプレックスを煽る広告は明確に若い女性の心身に悪影響を及ぼすものとして禁止されています。
それに対して日本では商業目的にそのような広告が蔓延し、規制される気配はありません。
特に日本人の周りと足並みを揃えようとする性質上、広告の蔓延により未成年への施術は今後ますます一般的になると思われます。
今や美容施術数世界第3位の美容経済大国となった日本ですが、それらを取り巻くものの一つとして広告のあり方に違和感を覚えたため記事を書いた次第です。