田舎はそんなにいいところじゃない #2 その5
#2 木を切る人々 ⑤
生きている限り季節は巡る 寒い間は葉を落とした冬木立も美しかったが時期が来れば芽を吹いて 新緑の季節 緑の葉の色もいっせいに変わって 新しい美しさを120%感受できる幸福感にあふれた季節だ しばらくは豊かな緑を見て過ごせる。 が。 これはTOKYOでのハナシ。
このイナカでも新緑となった時期には スパスパと切られた枝も茂った葉が隠してくれて それまでよりは目を向けられる状態になった。ストレスも少しは緩和された。
来たばかりの頃 てっぺんを切り取られた駐車場のタイサンボクも ふと見ると回復して健常な姿になっている。しかし この形になるまでに5 6年はかかった。
観察してみると 木によってそれぞれ回復の度合いが違う。ヤナギの木なんかは おそらくその性質で 豊かに葉をつけた しなる枝を風に揺らして自然の醍醐味を感じさせてくれる。が 目につく サクラ イチョウ ケヤキは 木によってはなるべく見ないようにしている。サクラの木はとくにズタズタにされている頻度も度合も高いし ケヤキは刈り上げたようなさっぶい形で堂々とさらされているし イチョウは数年がかりで回復したものもあるが ケチョンケチョンにされた形状を残しているのと 強剪定時 初見のショックが払拭されないのだ。
最後に写真をのせておきます 数年前に無惨な姿にされた 生活圏内にある けっこうでかい木だ。ある日まるでブロッコリーを真っ二つにするように半身の枝を切り落としてしまった。ちなみにこの木のある場所は 近くに住宅やローソンすらある地点。
一目見てガクゼンとして 以来視界に入れないように近づかないようにしてきた あまりにイタい。切った当初のそれなら絶大なインパクトであったろうが とても正視できず今の機会になった。あれがあるだけで 「ここの社会はやさしくないな」と感じながら生きてきた。
今回 この#2を終わらせるにあたって 数年ぶりにこの木に近寄ってみれば この何年かの間に枝が伸び 割とノーマルな形状に感じられホッとした。よく見ると切られたところから伸びた細い枝にまだ葉が残っているが その葉は若いせいか緑色が鮮やかに見える。
もう一つはごく最近身近に出現した新しい「心痛むオブジェ」です。 幸いなのは生活圏とは外れていることだ。 二度と通らない。
ここに来て様々な点でTOKYOとの違いを感じてきた。TOKYOでは熟考を重ねた結果が区民に提供されていたり それもバリエーションのある 正しさや満足を感じさせるものであったり 行政のやることもそうだが 市井の人々の考えやサービスも随所にある暮らしをしてきたことを思うと ここで過ごした数年はあまりにも中身のない寒々しいものだ。
そしてこの 木のことだ。
ここは私が今住んでいるイナカ地域ではない。大きいJRや市役所も地続きに近い地点でこんな有様は明らかにおかしい。ヒトの住む街に重要な一つの観点が明らかに抜け落ちている。これは人の住む街ではない。
この並木道が何年かかってまともな姿になるんだろう その間どのくらいの時間 無惨な光景を晒し続けるのだろう。 こんな町には住みたくない。
最近出た ここいらの情報誌はここの近くのお店を紹介しているらしい。そこも廃墟のようなところだが その表紙ではきれいなお姉さんが楽しげに街を闊歩する風に写っており 背後に件の悲惨な木が小さく見えるのでゾッとした。
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