ガンガーと聖典
インド北部のヒマーラヤから西のコルカタのベンガル湾へと流れる聖なるガンジス河。インドでは単なる川ではなく、女神ガンガー様として崇拝されています。
その流れる水で沐浴すると、自分のパーパ(悪行の結果で自分に苦しみを与えるカルマ)だけではなくご先祖様のパーパも浄化し成仏することができると言われている聖なるガンガー。
インドでは朝と晩に沐浴をしますが、その沐浴は流れる川の水でするのが一番正しい方法だそうです。ガンガーには朝の4時くらいから日が沈む前まで沐浴やプージャーをする人たちが訪れます。
私もガンガーが好きすぎて&暑すぎるので(6月は連日40度超えでした)リシケーシに来てからほぼ毎日二回は沐浴をしています。
このガンガーの流れは、同じくインドでは神聖なものとして崇拝され絶えることなく受け継がれている聖典の知識の継承に例えられることがあります。
どのように例えることができるのか、共通点を見ていきましょう:
①ガンガーも聖典の知識もシヴァ神の頭から流れている
ガンガーはもともと天界にいる女神さまで、Bhagirathaという古の王が、自分のご先祖様である6000人のsagaraを供養するために、タパス(苦行)をして、天界から降りてきてくださいました。しかし、そのまま地上に流れたらすべてを破壊してしまうほどの威力を持っていたので、シヴァ神に受け止めてもらわなくてはいけませんでした。シヴァ神はガンガーを頭で受け止めて、そして地上に流してくれています。
同じように聖典の「全ての人が幸せに生きていくための叡智亅も、すべてに溢れています。しかし、そのままでは一般の人は知ることができません。なので、シヴァ神からマインドを研ぎ澄ませた人に受け継がれ、そのリシと呼ばれる人たちから現代でもマインドを研ぎ澄ませた人達であればわかるように教えてくれているのがヴェーダだと言われています。
どちらもシヴァ神の頭から流れているのです。
ガンガーで沐浴をするときは川上を向けば、シヴァ神にナマスカーラムをすることが出来ます。聖典を真摯に学ぶことは、その源であるイーシュヴァラとそれを伝えて下さっている聖人や先生方へのナマスカーラムとなります。
②すべてのターパ(苦しみ)を取り除いてくれる
インドの気候は「Hot, Hotter, Hottest」と言われるように、Hottestの時は40度を超える日々が続きます。そんな時でもガンガーはキンキンに冷たいので、熱中症になりそうなの身体の熱を取り除いてくれます。
同じように聖典も人生で起こる熱(心が燃え尽きてしまいそうな辛いことや怒り)を、自分の本質=常に満ち満ちている、という真実を教えてくれる知識によって根こそぎ取り除いてくれます。
③ 無闇に飛び込むと危険なので正しい態度が必要
ガンガーでは子供たちが水遊び感覚で遊んでいる姿をよく見かけます。なので、何も知らない人は軽率に同じように飛び込んだりしてしまうのですが、骨折などの怪我をする人、また、流されかけた人、実際に流されてしまう人もいます。きちんとした態度で慎重に、敬意を払って入ることが必要です。土足は厳禁です。サンダルを洗うなんてもってのほか。まずは足を洗ってナマスカーラムをする、などのお作法もあるので、沐浴の仕方を知っている人にガイドをして貰うことをおすすめします。安全なスポットや流れの強い場所、危険な場所を知っているので。
聖典も同じように、敬意を払ってきちんとした態度で近づかないときちんとした理解ができず、時には危険な解釈をしてしまう場合があります。学ぶ姿勢がない人には全く理解が出来ない教えなので、勉強しても意味がない、との自己判断で勉強をやめてしまう人が多いのは、きちんとした入り方を知らない事が大きな原因です。
④入る時に正しいガイダンスが必要
ガンガーで沐浴をする際にはガートと呼ばれる沐浴をするための場所があります。そこには入るための階段や沐浴中につかまるための鎖などのインフラが整っています。沐浴をし慣れた人が安全な入り方や沐浴の仕方を教えてくれ、安全に沐浴ができる場所です。
同じように、聖典を学ぶ際にはきちんとした入り方ができるように先生が必要です。その先生は伝統的な教えを受け継いでいるのでの、勉強をする際に何処からどのようにして始めると安全で効果的なのかを知ってるので、ガイドしてくれます。
また、聖典は自分の本質を教えてくれる教えです。自分の事なら自分が一番良く知っていると思いがちですが、聖典はあなたがあなただと思っているあなたはあなたの本質ではないと教えてくれます。
通常私たちは他のものと同じく、自分自身を捉えられるもの=客体を見て、それを自分だと見間違えてしまいます。自分自身は客体ではなく主体なのに、その間違いを取り除き、その本質が何なのかを教えてくれるのが聖典の教えです。
ヴェーダーンタの先生はその間違いの取り除き方を知っていて、聖典の教えに沿って取り除いてくれます。
自分自身では出来ない知識による認識のトランスフォーメーションなので、必ず有能で教え方を知っている先生が必要です。
⑤入る前の色々と躊躇をしてしまう
ガンガーで沐浴するのはとても良いことなのですが、早朝はまだ暗く(ヴェーダの生活では日の出前に沐浴を済ませないといけない)、沐浴に慣れていないとちょっと怖く、危険な場合もあるので、やめようかな、と躊躇をすることがあります。しかし、いざ心を決めて沐浴をすると、とても気持ちがよく、沐浴して良かったと思うのです。
聖典の学びも、いろいろと躊躇をしてなかなか始められない場合がありますが、勉強してみたら、なんで今まで勉強してこなかったんだろう、もっと早くすればよかった、と思うものです。
そして一度入ったのであれば、ずっと浸っていたい、と思うのも聖典のとの共通点です。
と、ガンガーと聖典に関しては、挙げたらきりがないくらい様々な共通点があります。
9月にはインドのグジャラートからSwami Paramatmananda jiが来日されます。ヴェーダの伝統的な教えへ正しく導いて下さる「ガート」となって下さる素晴らしい先生です。この機会に、素晴らしいヴェーダの教えに浸ってみて下さい。
ちなみに、ガンガーに入って病気になった、おなかを壊した、などなどの話を聞きますが、これは全部ガンガーのせいではなく、その人のカルマ(前世やこの世での行い)の結果です。よくないことが起こったとしたら、ガンガーがパーパをあるべき形で浄化してくれたので、感謝の念を持ち、これからの善行に励むのが良いでしょう。
नमः पार्वतीपतये हरहर महादेव
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