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アダルトチルドレン⑦
こんなこともあった。
当時は、国内最大の広域暴力団◯◯組と◆◆会の抗争が全国で一般市民を巻き込む形で勃発していた。
父親は酔って千鳥足で歩いていたのだろう。すれ違う人、特に真面目そうな人間を選んで、わざと肩に当たり、いちゃもんをつけるのである。
そうして大声で得意の『俺は◯◯組だ❗』と。
運が良いやつだ。大好きな輩が前方から数人歩いて来ていた。
その輩が何と◆◆会の面々で、『お前ちょっと顔貸せや』と。
大好きな輩に呼び止められ、この世で一番大好きな暴力で可愛がられたのだから、至高の歓びを味わったであろう。
顔が原型を留めないほど腫れ上がって、両目がパンダになっていた。
このパンダは、何処の動物園に行っても雇って貰えないだろう。
程なくして私は仕事の関係で家を出て、虐めに耐えられず帰って来ていた姉も、母に言われて家をでた。
自分の妹を手籠めにする男だ、娘にだって手を出さないとも限らないからである。
そして母は一人残った訳だが、一人だと、危ない時はすぐに逃げられる。
3人だと、行動に制限がかかってしまう。それは今までに何度も逃げる機会を逃した経験があったからである。誰か一人でも逃げ遅れたら、という足枷があったのだ。
程なくして、その時は意外と早く訪れた。
夜の夜中に父親が、私のアパートにやって来た。
その頃は既に家庭を持っていた私は、家族を守らねばならない。
ドアを開けると、木刀を持った父親が立っていた。
『来てるんだろ❓』
『誰が❓』
『いや、いいんだ』と言って、木刀を使って、玄関の靴を確認し始めた。
玄関に置いてある我々家族の靴がバラバラになった。
『夜の夜中にいきなり来て、何をやってるんだよ💢』
『いや、何でもない』
と言って帰って行った。
その時、母が出ていったのだと分かった。
母が居なくなると、生活が出来なくなるから必死で探すのだ。
と言うよりは、甚振って楽しむ道具が無くなってしまう寂しさなのだと思う。
後から聞いた話では、本当に殺される寸前だったと。
診断書を取り、全ての事態に備えていたようだ。
父親には、一人だけ怖い人間がいた。
母の3人いる兄の真ん中、私の叔父に当たるその人は、トラックの運転手をしているが、実は筋者でその兄の家で匿ってもらっていた。
父親はその叔父を恐れていたのである。
そして、叔父と母は、父親の家に行き、必要なモノや着替えを一式、持ち帰って来た。
その時に『もう酒やめるから戻ってきてくれ』と言ったそうだ。
酒をやめるとかやめないの問題じゃなかろう。
お前はにんげんをオモチャにして、殴る蹴る、そして強制性交をし、妊娠したら堕胎させ、体が癒えぬ母を無理矢理退院させ、更に同じことを繰り返す。
『これからは一切、妹に関わるな。もし何かあったらお前、どうなるか分かるよな❓』
帰り際、父親は捨て台詞を叫んだらしい。
『お前一人幸せにはさせん❗』
て言うか、お前は何十年も地獄を味合わせただろう。
もう充分だろう。五体満足で終わらせて貰った事に感謝しろよ❗である。
つづく