読書記録_004【魔法のカクテル】
◆ 詳細
出版社:岩波書店
著者:ミヒャエル・エンデ
訳者:川西芙沙
【出版社URL: https://www.iwanami.co.jp/book/b255491.html 】
◆ ポイント
・小学4・5年生向け。「モモ」「はてしない物語」よりも、対象年齢のめやすが低めに設定されており、コミカルで読みやすい。
・本文の装丁が凝っている。(各章のタイトルは「五時」「八時五分」「十時十五分」…などと時間で区切られているのだが、各章のページでは文字盤のイラストでその時間が記されている。)
◆ 感想
エンデといえば「モモ」や「はてしない物語」で有名だが、個人的に一番好きな作品はこの「魔法のカクテル」である。理由は単純だ。小学生の時に初めて買ってもらったハードカバーの本だったからである。
また、私は装丁と内容が調和した本が大好物なのだが、その種を撒いた犯人は紛れもないこの本である。
興味を持った方は、ぜひ「魔法のカクテル」の実物の本を手に取ってご確認いただきたい。挿絵だけではない、こんな装丁の工夫も読み手を物語に没入させる魔法(テクニック)なのだ。
「モモ」であるならばチャーミングで勇敢なモモが、「はてしない物語」であれば本好きなバスチアンや凛々しいアトレイユが主人公だが、「魔法のカクテル」では羽根がよく抜けるヨボヨボのカラスと、悪い魔術師にまんまと篭絡された猫が主人公である。
そのなんとも頼りない一羽と一匹が、大晦日に魔術師の陰謀を阻止するために奮闘する。タイムリミットである新年が刻々と差し迫る中、あまりの頼りなさゆえにハラハラしながらページをめくり、思わず彼らを応援してしまう。
そうなのだ、欠点だらけというのも物語の登場人物の魅力なのだ。
大人になって読み返してみて、主人公枠のカラスも猫も、ヴィラン(悪役)枠の魔術師も魔女も、記憶していたよりも本当にどうしようもない欠点だらけのキャラクターで笑ってしまった。
カラスと猫は最終的に魔術師の陰謀を阻止することに成功するが、ちゃっかりカクテルのおこぼれ?に預かって自分の望みを叶えてしまう。
それでも読み終える頃には、両者にどうしようもない愛着がわいてくるのが不思議である。大人になって色んな経験を重ねて、人間には多角的で、色んな面(良い所も悪い所も)があると思い知ったからこそ、よりキャラクターを身近に、魅力的に感じたのかもしれない。