麦のこと③
ささみスープすら口にしなくなって、8日が過ぎました。
後ろ脚に力が入らないながらも、よろよろ歩いてお水を飲んだり、トイレを使ったり、ひなたぼっこしたり。
でもそれも日一日とふらつきが大きくなってきた。ずっとなにも食べてないのだから当然だよね。
麦はうちに来た子猫の頃から、ずっと毎日私の布団で一緒に寝ています。
今もおぼつかない足取りで私の布団に乗って来る。私にとっても、それはかけがえのない幸せな時間。
足がふらつくようになってからは、夜中も介助してオシッコさせていたのだけど、昨日はいつの間にか漏らしてしまってた。幸い濡れたのは毛布だけで布団は無事だったけれど。
残された時間があとどのくらいなのかわからないけれど、麦が望むなら最後まで一緒の布団で眠りたい。迷ったけれど、ドラッグストアで猫用のおむつを買ってきた。
ほんとうはおむつなんてさせたくなかった。
ごめんね、嫌だよね。そう話しかけながら麦のその痩せ細った体を抱っこする。おとなしくおむつを着けさせてくれたけれど、もう嫌がる力もないんだな、そのことにまた胸が詰まった。手伝ってくれた夫も涙声だった。
いまも麦は私の布団の上でぐっすりと眠っています。安心するのかここが一番よく眠れるみたい。
してあげられる事なんて、もうほとんどないのだから、せめて嫌がる事はしたくない。そう思っているから、おむつを使うのには迷いがあります。
麦と一緒に過ごせる時間が、残り僅かなのは間違いなくて。さらさらと落ちる砂時計の、最後の一粒が落ち切るのは間もなくだろうけれど。でも下に積もった砂はこれまでにもらった、たくさんの幸せな記憶だから。
最後の一粒もまた、いつかはいとおしい記憶になるのだと思うのです。
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