家のこと③森の中の家
森の中に静に佇む木の家。そんな家がいいなぁと思うようになったのはいつの頃からか。
建築家・吉村順三氏の手がけた山荘が軽井沢にあって、そのひとつに作家の下重暁子さんが住まわれている。
まるで森の一部のような、簡素で無駄を削ぎ落した美しさ。
木材にその姿を変えても、木は生きているんだと感じます。そのぬくもりは他の建材では味わえないもの。包み込まれているような、なんとも言えない安心感。
中村好文氏、伊礼智氏、堀部安嗣氏など、この家いいなぁと感じた建築家の方たちは吉村順三氏の弟子、孫弟子なのだと知った。そうか、設計思想が受け継がれているから、世代は違っても同じような「精神」を感じられるんだな。
夫の勤めていた会社の保養所が長野県の蓼科と、静岡県の伊豆にあって、どちらも静かな森の中にあった。周りの建物との間隔が大きいから、部屋の窓からの景色も森の中の雰囲気を味わえる。
どちらの保養所も木材がふんだんに使われていた。その重厚なぬくもり、目にやさしい木肌。手ざわり、香りのよさ。あのときの安らぎが、木の家への恋しさにつながっているのかもしれない。
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