大人の社会科見学の話
どうも、私です。
今日は、「子供の頃にやり残してきたことを、今やってみた話」をします。
お付き合い下さい。
◆
私は、子供の頃にあることをやり残した。
それは、小学生の頃の社会科見学での話だ。
5~6人の班に分かれ、1ヶ所は、学校指定の場所へ。もう1ヶ所は、学校側が用意した選択肢の中から、自分達で場所を決め、行くという内容の社会科見学だったのだが、
『ピースおおさか(大阪国際平和センター)』
『なにわの海の時空館(2013年閉館、2025年体験型ミュージアムとして開業予定)』
『大阪くらしの今昔館』
という3つの候補が残り、じゃんけんをした結果、私の班は『ピースおおさか』となった。
平和について学ぶ貴重な施設であり、有意義な時間を過ごせたと今では思う。でも、
「社会科見学の場所を選択できるのなら、楽しめる場所に行きたい」
というのが、当時の私達の本音で、私自身、本当は『大阪くらしの今昔館』に行きたかった。
今ほどではないが『レトロ』に興味があったからだ。
「でも、行こうと思えば行ける」
そう思い、いつか訪れる日を夢見たまま、『大阪くらしの今昔館』に行くこともないまま、私は大人になってしまった。
そんな話をしていたある日。
姉「じゃあ、行く?」
という姉の提案により、立派な大人になった今、『大阪くらしの今昔館』へ訪れた。
私「おーーーーー!!!!!」
エスカレーターで展示場『なにわ町家の歳時記』へ続く通路に着くと、これから私達が足を踏み入れる天保年間(1830年代)の大坂を再現した架空の町『大坂町三丁目』がガラスの向こうに広がっている。
(4~8月は『夏祭之飾(なつまつりのかざり)』、9月~3月は『商家之賑(あきないのにぎわい)』が展示されていて、私達が行ったときに展示されていたのは後者だった)
そして、『大坂町三丁目』がどういった町並みかを解説している声をよく聞いてみると、
落語家・桂米朝さんの声だった。
私「米朝さんの声が聞けるなんて、聞いてないよ!」
姉「謎の文句。笑」
私「早く言ってよ!←」
姉「大声。笑」
米朝さんの声をしばらく聞いた後、入口の木戸門をくぐる。
そこには、江戸時代へタイムスリップしたかのような『大坂町三丁目』の町並みが広がっていた。
入って右手にある『風呂屋シアター』では、『大坂むかしまち巡り』が上映されており、米朝さん(声のみの出演)と落語家・桂米團治さんの父子共演による町の案内を聞くことが出来る。私達が来た頃、ちょうど上映時間だったので、中に入って映像を見た。
米朝さんの声と米團治さんの落語を交えた案内は、とても貴重で贅沢だった。
姉「贅沢かよ」
私「父子揃って、いい声」
姉「落語聞きたい」
私「それな」
と20分近い映像を見た後、町通りを散策。
平日ではあったが、とても賑やかで、あちこちで楽しそうな声が響いていた。
私「え、待って。マジで最高なんだけど。お姉ちゃん、ここ最高なんだけど」
姉「おうおう、興奮してんな。おい。笑」
私「何で、私は今まで来なかったの!」
姉「だから、大声。笑」
20年近く来られなかった後悔とやっと来られた喜びで、それはそれは興奮した。
唐物屋や本屋を見て回り、写真も何枚か撮った。
姉「どう?20年ぶりの念願が叶った感想は」
私「めっちゃ楽しい。笑」
姉「よかったね。笑」
私「20年も経てば、興味もそこそこ薄まってるかと思ったけど、そんなことなかった。笑」
姉「子供の頃に興味あったけど、出来なかったことみたいなのがある人は、大人になった今でも体験すればいいですね」
私「大人になった今だからこその楽しみもありますからね。子供の頃と今では、知識量も違うし」
姉、私「ねー」
と互いに笑い合っている間にも、この展示場内で出来る『着物体験』をした着物姿の子供達が駆けて行く。
最高に楽しい。
もうひとつの展示場では、『モダン大阪パノラマ遊覧』として、明治・大正・昭和の大阪の町並み、住まいや暮らしを再現した『住まいの大阪六景』などの模型が展示されており、ここでは、八千草薫さんが語りを担当している『住まい劇場「あの日 あの家ーある家族の住み替え物語ー」』が上映されていた。
姉「はい、最高!」
私「細かいなー!」
細かく描写されている展示の背後では、八千草さんの柔らかい口調の関西弁が響く。
そして、展示されていた大阪市役所旧庁舎で使われていたシャンデリアやステンドグラス、今では見られない旧式の家電にテンションが上がった。
姉「便利すぎる今より、ちょっと手間がかかる感じもいいね」
私「そうね。メールじゃなくて手紙みたいな」
姉「それが、逆にいいと思う」
私「分かる」
便利すぎるのも困るかも、と2人で笑いつつ、私達は展示を眺めた。
姉「どう?今回みたいな、大人の社会科見学は」
私「行ってみたかった場所だったのもあって、楽しかった」
姉「また、こういう風に出かけたいな」
私「うん!」
帰り道、ふと、私は自分に聞いた。
あの日の私、楽しかったかい?
今とそんなに変わらない、小学生時代の自分が、満足げに笑っている気がした。