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薄暮と手袋

薄暮の時間になると、一段と冷え込んできた。冬の空気は澄んでいて、それでいて目の覚めるような冷たさだ。

垂直落下の後、アメリカンウォーターフロントからメディテレーニアンハーバーへ足早に移動し、ザンビーニ・ブラザーズ・リストランテの列に並ぶ。思ったより並んでは居ないけれど、屋外なので寒さは解消されない。

早く入って、温かな食事を食べたい。そんな思いでやってきた私と親友の鼻の頭はとっくに真っ赤で、手を擦らずには居られなかった。

寒い日、寒い場所に限って毎度薄着の親友に、冬の厳しさを極度に恐れる私は片方の手袋を渡した。少しは寒さが解消されると良いな、という願いを込める。

その時、ドオン!と地響きのような音が鳴り響く。思わずそちらに目線を向けると、プロメテウス火山が噴火したところだった。群青に染まる空を、太陽を思わせるオレンジがこれでもかと言うほど照らした。

思わず私も親友もシャッターを切り、しばしその様子を楽しんだ。

良いものが見れたとほくほく顔をしていると、レストランの順番が回ってきた。中に入ると、体を包み込むような温かさにほっと息を吐く。各々パスタを注文し、窓際の席に着く。ここからショーは見れるだろうか。

クリームパスタをフォークでつつきながら、他愛の無い話に花を咲かせる。一瞬にも永遠にも感じられる時間は、会えない時を埋めるようだった。レストランの顔ぶれも変わり、少しずつ空席ができ始める。そろそろショーが始まるのだろう。

宴もたけなわ、そろそろ出ようかと席をたち、夜の盛り上がりを見せ始めた人混みに私たちは繰り出した。


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