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#今週の一曲一枚

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2019年6月から、InstagramとTwitterで始めた週一回の感想文。 シングルリリースの「一曲」やアルバム「一枚」、はたまたミュージックビデオまで。形式にこだわらず好き…
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2023年11月の記事一覧

#今週の一曲一枚 Ogawa & Tokoro / Mutual Mutation (2023)

音楽は空気だ。音楽には実体がない。 Ogawa & Tokoroの曲を聴くと、そのことを思い出す。 管楽器をたくさん使ったり、大きな声のヴォーカルがある曲が「大きい音楽」だとするならば、彼らの音楽は小さな音楽だ。彼らの曲は、電気信号を増幅させることで私たちの元へ届いている。 今時そうでない音楽の方が割合としては少ないと思うが、Ogawa & Tokoroはそのことをより強く意識させる。理屈としては、アナログな楽器の方が直接空気を揺らしているとは思うけれど、理屈が脳内で逆転

#今週の一曲一枚 George Riley / Un/limited Love - EP (2023)

最近気になるリリースが個人的に多いNinja Tuneから(レーベルの名前も気になる笑)。 1曲目"Lust"は作品一発目の雰囲気が強い。浮遊感たっぷりでやさしく、ジャケットの、海か湖のようなところに浮かんでいる写真にぴったり。2曲目の"Skin"でじわじわとビートが強くなっていく。音のないところから、この作品が立ち上がったような感じがして好きだ。自分とも、生活ともじんわり繋がっている感じがする。 "Star"のハイハット系電子音の強いビートとマリンバぽいこれまたおそらく

#今週の一曲一枚 250 / Bang Bus - Single (2021)

ひょうきんで、気が抜けていて、なんだか心を掴まれる。徹底的な電子音が、古いようでもあり、新鮮にも響く。 最初に聴いたとき、「YMOみたい!」と思った。しかし私個人としては「なんかそれっぽい!」という浅い感想しか持てなくてそれ以上の分析を伴わないから、なんでこの曲が好きなのかまったく別軸で考え直すことにした。 まずイントロが良い。イントロより先でも鳴り続ける、日本で生まれ育った人は「チャンバラの音」とか「抜刀の音」と思うであろう「シャキーン!」という音(実際はこんな音はしな

#今週の一曲一枚 Donny Hathaway / Someday We’ll All Be Free (France Release) (2010)

大長編を選んでしまった。 私はいつも音楽はサブスクリプションで聴いているが、アプリからのおすすめではなく、もっぱら友人からのお薦めやSNSで見つけた気になった音楽ばかり聴いている。 1曲だけお薦めする人が多いが、その場合でもそのジャケットのアルバムやらEPやらを丸ごと聴く、というのが私のスタイル。 その1曲だけでは特にとても好きにはならなくても、丸ごと聴くととんでもない出会いがあったりする。だから必ず「丸ごと」、だ。 今回は3曲だけ取り上げよう。 Jealous Guy