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「お嬢さん放浪記」
すごーく、面白いです。この本。もう何度読んだことか。
パッと開いた箇所をつまみ読みするだけでも内容がものすごく濃いです。
エピソードひとつで1冊の本が書けそうなほど。
1948年に留学目的で渡米して、でも目的地の大学の授業は退屈だった、とか小遣い稼ぎのために講演を始めてそれが好評でアメリカ各地を回った、とか、病床でも小遣い稼ぎのために手仕事を始めてそれがものすごく儲かった・・・とか。。
最初の章だけで目が回るような展開です。
現代においても英語の習得に四苦八苦している私からしたら、アメリカの大学の授業がつまらないって・・・!と驚きます。英語がわかることがすごいじゃん、なんて低レベルな私。。
元総理大臣の孫娘で、財力も権力もあったものの、「娘らしい思い詰めた気持ち」から人の世話にならずに留学の実行を考えたそうです。
それも渡米は本当の目的ではなくて、本当はヨーロッパが目的地で
・ギリシャ・ローマ古典の遺産や中世美術としての建築と絵画、それに現代ヨーロッパ思想の流れなどを自分の心に触れ、自分の眼で眺めたかった
・各国から集まった若い女性たちが共同生活をしながら学問的精神的職業的なトレーニングを受け、社会へ散ってキリスト者としての自らを浄めるという”グレイル”と呼ばれる理想主義的運動に参加する
ことが目的だったとか・・・。
スケールの違いにただ驚くばかりですが、この人の素晴らしいのは、どんな人種・職業・国の人とも即座に打ち解けること。偏見をまったく持たず、また自分を低く見せることもなく、心から触れ合っていく。
次々と立ちはだかる難関を前にしても、ただただ、そうして人と向き合っていく。
こんなくだりもあります。
私はまたたいてもう消えそうになったローソクの焔をみつめながら考えた、共通なはだかの人間性に触れようとしてゆく限り、どんな未知の国に一人で行っても自分は一人きりではないのだ、・・・「友情のパスポート」はどこにでもある、どこに行っても探せば必ずみつかるのだ、と・・・
「レイシズム」と対極にある「ヒューマニズム」の正統性を一冊を通して証明してくれているようです。
素晴らしい賢さに目が眩みそうになりますが、それ以上に感動が大きくて。
私の拙い文章力ではとても表し切れませんので・・・
ぜひ、読んでみてください!