2021年10月の記事一覧
それではみなさん、よい終末を
未来のお話。
その頃の人類の世界観、歴史観をたとえるならば、それは砂時計で考えるのが一番わかりやすいだろう。砂は時間とともに確実に減っていき、じきにすべて無くなる。最後の砂のひと粒が落ちる。そして、何もかもが終わる。
何もかもが。
これはいまよりもだいぶ未来の話。
その、未来の人類は、この世界が何か大それた究極の目的に向かっているとか、あるいは大いなる円環を作っているとか、あるいは無目
世界は君が思うよりシンプルだ
朝、目を覚ますと、ガールフレンドが子どもを抱いてあやしていた。まだ物心もつかないくらい幼い子どもだ。
こちらの視線に気付いたらしく彼女は小首を傾げた。彼女の腕に抱かれた子どもも一緒になってこちらを見た。
「なに?」
「誰?」
「子どもよ」と彼女は子どもを軽く揺さぶる。「わたしたちの」
「ふむ」と答えたものの、我々に子どもなどいるはずがない。何しろ彼女とは一週間前に知り合ったばかりなのだ
一番恐ろしかったこと
帰還兵がもううんざりしている質問。
「戦場でもっとも恐ろしかったことは何か?」
尋ねられる頻度にもうんざりだが、何より嫌なのは、問いかけた人間の見世物小屋的表情だった。
最初、帰還兵は彼らのその表情が何を望んでいるのかわからなかった。それは憐憫にも似ていたし、悲哀にも似ていた。そこに何が潜むのか、捉えられないまま、ただ居心地の悪さに身を捩るだけだった。しかし、メッキは剥げるもので、次第にその
わたしのあたらしいこころ
ぐでんぐでんに酔っ払っているけれど、彼の職業はエンジニアである。エンジニアだって酔っ払うことがあるし、テレビの配線に苦戦することがあるし、それで妻に罵られることもある。
酔っ払っているのは妻に罵られたからではない。それはこれから起こるべきことかもしれないが。
彼は仕事上の付き合いで飲み、いまとても不機嫌である。そもそも彼は酒を飲むと不機嫌になる。じゃあ飲まなければいいのに、それでも飲む。飲ん