見出し画像

numpyと、アダマール積

はじめに

皆さん、こんにちは。
今回は、アダマール積と、numpy 上でのアダマール積の実現方法について、話をさせていただこうと思います。


numpyとは!?

numpy は、プログラミング言語 python における特定の計算を、高速に実施するためのライブラリになります。

先ず、python については、別途以下の記事もありますので、よかったら参照下さい。

numpy に関しては、以下の記事が numpy の高速化について触れていますので、こちらもよかったら参照下さい。


アダマール積とは!?

アダマール積については、wikiに詳しい説明がありました。

一言で説明すれば、wiki中にある以下の画像のような形になります。

スクリーンショット 2020-05-31 10.29.22

要するには、同じ要素数を持った行列、或いは、ベクトルについて、同座標同士の掛け合わせを行う計算の仕方になります。

対して、一般的な行列積は、異なる計算仕様になります。
行列積線形代数の基本的な考え方については、以下の記事を参照いただけたらと思います。

アダマール積の計算仕様をイメージにすると、以下の様になります。
尚、アダマール積の記号は、になります。

スクリーンショット 2020-05-31 10.48.33

スクリーンショット 2020-05-31 10.50.55

同座標の値同士を掛け合わせて、その掛け算の結果を、同座標にセットする形です。

一方、行列積の計算仕様は、以下イメージとなります。

スクリーンショット 2020-05-31 11.05.18

スクリーンショット 2020-05-31 11.07.08


numpyで実装すると、どうなるか?

上記の例を、numpy で実装すると、以下のようになります。

import numpy as np

A = np.array([[1, 4], 
              [3, 6], 
              [8, 2]])

B = np.array([[3, 2], 
              [5, 1], 
              [7, 10]])

print('A * B = ')
print(A * B)
print()
print('A.T @ B = ')
print(A.T @ B)

出力結果は以下になります

A * B =
[[ 3 8]
 [15 6]
 [56 20]]

A.T @ B =
[[74 85]
 [56 34]]


特殊なケースにおける、numpyのアダマール積的な計算仕様

アダマール積は、基本的に要素数が等しい行列同士、ベクトル同士での計算が基本ではありますが、実際には、もう少し拡張したい時があったりします。

例えば、行列ベクトルとをアダマール積的に計算するケースです。
ケースとしては、ベクトルが縦であるケースと、横であるケースとの2つがあります。

前者ケースのイメージは以下です。
numpyアダマール積と同様に

スクリーンショット 2020-05-31 14.05.33

これは、要するには、縦のベクトルを、横にコピーして、アダマール積を取るような形です。

スクリーンショット 2020-05-31 14.10.14

後者ケースのイメージは以下です。

スクリーンショット 2020-05-31 14.15.07

こちらも、横のベクトルを、縦にコピーして、アダマール積を実施してくれます。

スクリーンショット 2020-05-31 14.16.56

或いは、行列スカラーの掛け算の場合は、行列の全要素に対して、定数倍を実施する形になります。

スクリーンショット 2020-05-31 14.22.39

こちらも、要するには、スカラーを縦横にコピーしてから、アダマール積を実施している形です。

スクリーンショット 2020-05-31 14.32.39

尚、アダマール積、或いは、アダマール積的な計算をする場合、掛け算記号の前後の変数が入れ替わっても、計算結果は変わりません。

import numpy as np

A = np.array([[1, 4], 
              [3, 6], 
              [8, 2]])

b = np.array([[3], 
              [5], 
              [7]])

c = np.array([[3, 2]])

d = np.array([3])

print('A * b = ')
print(A * b)
print()
print('b * A = ')
print(b * A)
print()
print('A * c = ')
print(A * c)
print()
print('c * A = ')
print(c * A)
print()
print('A * d = ')
print(A * d)
print()
print('d * A = ')
print(d * A)

プログラムの出力結果は以下となります。

A * b =
[[ 3 12]
 [15 30]
 [56 14]]

b * A =
[[ 3 12]
 [15 30]
 [56 14]]

A * c =
[[ 3 8]
 [ 9 12]
 [24 4]]

c * A =
[[ 3 8]
 [ 9 12]
 [24 4]]

A * d =
[[ 3 12]
 [ 9 18]
 [24 6]]

d * A =
[[ 3 12]
 [ 9 18]
 [24 6]]

一方、行列積の場合は、例えば、行列 A 行列 B について、ABBA の結果は異なります。

A = np.array([[3, 2],
              [1, 6]])
B = np.array([[4, 3],
              [2, 1]])

print('A @ B = ')
print(A @ B)
print()
print('B @ A = ')
print(B @ A)

プログラムの出力結果は、以下となります。

A @ B =
[[16 11]
 [16 9]]

B @ A =
[[15 26]
 [ 7 10]]


解釈がややこしいので、いっそfor文にしてしまえば…

上記、アダマール積的な計算に関しては、解釈が若干難しいので、なんならfor文を使って計算を表現した方が良いのではないか…?と思えてくる方もいることでしょう。

しかし、実は、python には、for 文によるパフォーマンス低下の問題があります。
numpy の機能を用いて、for 文を使わずに実装した方が、最適化されたライブラリ機能をフルに使うことで、パフォーマンスが格段に向上するのです。

その辺りについては、以下の記事にまとめられていますので、参考にして下さい。

記事中に実施した実験では、1000万個の要素を持つ行列同士のアダマール積にて、250倍程の高速化が実現されています。

250倍の高速化というと…。
高速化のスケールとして、「4分 → 1秒」「4時間 → 1分」「10日 → 1時間」という具合です。
スゴい違いですね。

その為、仕様を理解して、numpy を使ったアダマール積演算を行うことには、とても意味があります。


おわりに

以上で、アダマール積に関する記事を終えます。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。🙇

いいなと思ったら応援しよう!