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「こたえのない学校」代表・さとさんの夢中観に迫る。

夢中ピンク・うらちゃんです。

今回は我々が所属するLearning Creator's Labを主宰する『一般社団法人こたえのない学校』(https://kotaenonai.org/)の代表理事である藤原さとさんにお話を聞きました!

記事が4000字に迫るほどの、とても勉強になるお話が聞けたので、ぜひぜひたくさんの方に読んでいただきたいと思います!


☆さとさんの夢中とは?

日々日々何かに夢中になる感じではないですね。2013年にこたえのない学校を始めたのですが(2014年に法人化)、サラリーマン時代は長く働き続けられる自信がなくて、3か月以上の定期を買ったことがありませんでした。

今は家族もいるし子育ても楽しんでいますが、今の団体(こたえのない学校)のお仕事はライフワークになっています。夢中と言っていいのかはわかりませんが、中心軸にある感じがしています。


☆そんな仕事に取り組んでいるときの状態とは?

自分から何かを追いかけることはほとんどないですが、来たものを受け取ろうという気持ちが強いです。アイデアはある日突然降ってくる感じで、自分の中で「あれをやりたい、これをやりたい」という気持ちが強すぎるとメッセージを受け取れないので、静かに何かがやって来るのを待っている時間が多いです。

本も読みますが、今月はこれを読もうというリストはありません。気になる本は買っておいて、10年くらい放置している本も中にはありますが、ある日突然本に読んでねと言われて読んだりします(笑)。

今回の本の執筆(「探究」する学びをつくる)も、いろんな人から本書かないの?と言われていましたが、書こうと思ったことはありませんでした。でもやっぱり書こうかなと思い始めて、夢中と言えるかはわからないけど書きました。

実は今の団体もなんとなくママ友と作っちゃって(笑)。時々能動的だし、人から見ると能動的に見えるらしいですが、どっちかというと、アリ地獄じゃないけど下にいて来たものをばくっと食べる感じです(笑)。

チャンスの女神ってよく言いますが、今ここでつかまないと、絶対に二度と来ないという感覚を持つことがたまにあります。来ないと気が付かないみたいなタイプです(笑)。

常日頃気を付けてるのは時間も含め、心に余白を作っておくということです。舞い込んでくる隙間を大事にしています。

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さとさんの本 『「探究」する学びをつくる』


☆アイデアはどうやって降ってくる?

いつももやもやっとしたいことについて考えています。たとえばLCLはピンとくる形は思いつかないけれども、大人のためのプログラムをやりたいと、ずっと考えていました。すごく調べたりするわけではないですが、LCLのスタート前にやりたいと思っている時期が1~2年ほどありました。

ふっとアイデアが降りてきて、これだったらできるかなと思ってからは、がっと動きます。今もそういうものがいくつかあって仕込んでいます。でもやりたいことがあって体制を作っていても、断られてばかりで前に進まない時もあります。

これまでのプログラムでも、自分たちがやる意味がわからなくなって、紆余曲折したこともあります。これを夢中と言うのかはわからないけれど、持続的に24時間考えています。


☆どんな瞬間に一番喜びを感じる?

常に快感ではないですが、アイデアが降ってわいてきた瞬間は高揚感があります。でもその前の段階はずっともやもやしているし、そのあとに絶対いけると思って動いてみると、反応がなかったりして落ち込むこともあります。

そのときはそのことに捉われず、自分の中の気持ちを冷ますというか、今は動かない時期だと考えます。動き出したら動き出したで雑務が増えるし、楽しいことばかりすることはできないので…。おおざっぱにいうと楽しいですが、目の前でいえばストレスを感じることもあります。


☆何をしているときに充実していると感じる?

やっぱり「学ぶ」ってことが好きだと思います。だからこの仕事をしていると思うこともあります。小学校の頃は先生になりたかったので、寺子屋みたいにホワイトボードを家に持ち込んで、年下の子たちを家に呼んで学校ごっこをしていました(笑)。

これまでの楽しかった時期とそうでない時期のバイオリズムを振り返ってみると、「学んでいる」時期が幸せだったと思います。仕事も学びがないと飽きて続かないんです(笑)。

今の団体をずっと続けていけると思ったのは、興味ど真ん中の「学び」が仕事になったからだと思っています。それまでは旅行気分でいろんな仕事をしていました。仕事ってこんなもんねとわかると学びの高揚が下がってしまいます。今はやっと旅行が終わったって感じです。安定が耐えられない性格なので、常に新しいものを見たいみたいなところがあります(笑)。


☆さとさんの考える夢中とは? 

私自身は薄くずっと夢中なプロジェクトはあるけれども、意識して自分が夢中だって思えるほどに夢中な瞬間はそんなにないです。プロジェクトの中でその瞬間瞬間の高揚が夢中というのであれば夢中だと思うし、全体通しても嫌なことや疲れること、やめたいと思うこともありますが、全体としてそれを夢中ということができる気はしますね。 

教育的なことをいうと、人生を通して大きな意味で、持続してそのことに向かえるようなテーマが見つかると良いと思います。どこで見つけるかはわからないし、早いから良いとか遅いから良いというわけでもないけれど、見つけたら大事にしてあげると良いと思います。自分が取り組んでいることに対して手をかけてあげるというか。

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さとさんの趣味の一つである料理(美味しそう!)


☆さとさんの考える夢中になれない子に対してできる働きかけは?

すごく楽しいやこれが好きかもって思える瞬間が多いほど楽しいと思います。それがわからないまま大人になると、そう思っていいんだと思えなくなったりして、その感覚を取り戻すのが大変になると思います。 

もともとこたえのない学校では、10歳前後、小学校中学年くらいをターゲットに探究のプログラムをやってきましたが、そのくらいの年齢になると自分の思ったことを思ったまましゃべらないし、どこか良い正解があると思っていて、それをあてに行くんですよね。「世の中の素敵な誰か」「人が認める誰か」になろうとして、自分を押し込めてしまうんです。

思春期は葛藤の時期でもあるので迷うのは良いことですが、それが自分の言いたいこととずれてきて、抑圧され続けると良くないですね。残念ながら学校はそれを加速させている側面もあると思います。

保護者もやりたいことって何?と聞きながら、保護者自身の素敵だなと思うリストがあって、それと違うことを言われたときに拒否したりすると子どもは混乱しますよね。

夢じゃなくても、学校で上手くいかないときにどうしたら友達としゃべれるんだろうとか、そういう悩みに一生懸命になっているときに、「それもあなたがやりたいことだね」って認めてあげないといけない。

幼児期から地域によっては小学校受験や習い事漬けの子どもも多いですよね。何がやりたい?と聞かれる前にいろんなものをやらなきゃいけなかったりとか、それが積み重なった子たちを中高では引き受けないといけない。違った難しさがあると思います。

だから特に小さな頃は子どものやりたいことを大切にしてあげなければならないし、中学高校くらいになってきたら、その子の特性を伸ばす、ということだけではなく、大きくなるまでに、自分らしさを見失ってしまう子もいるので、そうして損なわれてしまったものをどういう風に回復させるかという技術的なものを持っておいた方が良いと思います。


☆具体的に私たち教員ができることは?

仮説としては、大人が変わらなきゃいけないと思います。先生たちが世の中でこういう先生じゃなきゃいけないというものに捉われて、本来のあなたじゃなくなっている姿を、毎日子どもたちは見ているわけですよね。

小出しでもいいから、先生が本当に心からやりたいことをやっている姿を見せ、子どもがそこから感じ取ることが大事ではないかと思います。先生たちの日々の授業はその人たち自身の表現だと思っているので、そこを模索する。思春期の模索と一緒です。子どもたちに人生を掴んでほしいなら、そのプロセスを、上手くいかないことを含めて後ろ姿として見せる。そういう姿の方がむしろ価値があると思っています。

「探究学習」といいますが、根本のところは、漢字を書けるから漢字を教えるのと一緒。先生は先人として人生に悩んで成長しているのだから、自分が経験したことをベースに、人生って大変だけどこういう良さがあるよ、こういう風に学ぶと楽しいよ、っていうことを教えるってことなんじゃないかと思います。だからこそ、自分の経験、体感覚みたいなものが役に立ってくるのだと思います。

ー インタビュー終わり ー


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”持続してそのことに向かえるようなテーマに出会い、それを大事にしてあげる。”

この言葉を聞いて、これこそが夢中が人生を豊かにする所以だなと改めて認識することができました。

教員として子どもたちの「好き」や「やりたい」を無視せず、できる限り彼らの声に耳を傾けてあげる時間を作りたいなと思えるインタビューでした!

忙しさにかまけて対応に時間がとれないときも多いため、教員になった本来の目的を見失わないように頑張ろうと思います。(なかなかそれが難しいのですが…泣)


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★おまけ さとさん12歳の名言

さとさん:夢中ってなんだろうと思って、小学校の12歳のときに書いた作文集を見ていたんです。読んでておかしいところがあって、「とにかく12年生きてきたのです。私には人生の足跡はありますが、人生の予定表は持っていません。」ってところがあって(笑)。

うらちゃん:かっこいい…(笑)!!!


さとさん、貴重なインタビューありがとうございました!!!


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