ペロンミ・前本彰子「天使たち」@"いつやってんの?"ストロベリースーパーソニック
何度かnoteで書いてるが、日本現代美術史上でたぶん相当重要な作家である前本彰子(まえもと・しょうこ)とSNS世代の新進作家ペロンミの2人展に行った
金・土・日の14時以降しかやってないのでめちゃくちゃ要注意!!!
尚、文中敬称略
ストロベリースーパーソニックについて
作家・前本彰子が高円寺に開いたお店
そもそもここがあんまりやってないと評判である
場所は高円寺
そんなに駅から遠くないのでまあ迷うことはねえだろう
道中には麻雀漫画の聖地である片山まさゆきの雀荘「ミスチョイス」もあるで!(ぜんぜん関係ねえけど
作家について
▼前本彰子(と80年代初頭という時代)
小勝禮子の以下の論に詳しいので時間ある人はこれ読んでほしい
書籍・ネット含めて現状では前本論の決定版だろ
立派な小論のあとで完全に蛇足だが、自分のガバい理解も書いとく
美術手帖に83年3月に登場するが、テキスタイルを使った半立体作品で、これが作家の代表的なスタイルとなる
で、この83年がだいたいどういう時代だったかというと
<世界の状況>
・バロック'81展でシュナーベル登場
→「ミニマリスムから表現主義へ」by藤枝晃雄
→みんな禁欲的に色をいじくるだけのミニマルアートが重要だと思えなくなり、そっから表現主義者が出てくる
・82年ころ「ニュー・ペインティング」という言葉が登場する
<日本の状況>
・もの派全盛期が終わってポストもの派へ
→っていわれるが、「ポストもの派」is 謎
・前本的には「色使うなっていうから反発してスパンコールとか使った」
→奇しくも世界的潮流とばっちりはまっている件
ちゅう感じで、たまに美術史である「同時性のある出来事」だったのかもしんない
ちなみに「色使うな」と前本に指導していたのは当時の偉い人たち
具体的には彦坂尚嘉や堀広哉な模様
彦坂や堀は美共闘で反もの派な人たちだが、(当時、批評家の伊藤順二も書いてるが)ミニマル全盛の70年代はそういう抑圧的な雰囲気だったのかもしんない
・・・という流れで装飾的なテキスタイル作品でデビューした前本は、その後「超少女」というラベリングで世間にもてはやされる
が、このせいで展示機会はやたら増えたものの「まともに作品・作家として向き合われない」という、よくあるイロモノ的な状況に陥ってしまう
現在では(特に海外で)日本のフェミニズムアートのはしりと評価されることが多いが、以前も書いたように当時本人にそのような意図はなかったという点は注意しとく必要がある
また、この時代、こういう服っぽい作品を作っていた作家としては、同じ美手帖に紹介されている柳田郁子がおり、繊維でいろいろやっていた人としては宮本和子、戦前からやってる高木敏子らが挙げられる
▼ペロンミ
SNS時代にツイッターで発見された作家で、√Kコンテンポラリーに所属していたが、その後やめている
いわゆる(広義の)「キャラクター絵画」に属する作家だろうが、そもそもこの領域の定義があいまいなのでこんな定義はそのうち意味なくなるだろう
パープルームギャラリー主宰である梅津が取り上げてて、貴重なインタビューもYoutubeで見られる
個展行くとだいたいほぼすべてに売約シールが貼られてるような、実はめちゃくちゃ人気のある売れっ子作家である
例によって前置きがながくなったのでさっさと展示風景にいくが、今回は展示スペースが壁一面しかないのですぐ終わるんだな、これが
展示風景とか
というわけでストロベリースーパーソニック前に来たわけだが、見るからに怪しい見た目のわりに案外入りやすい
たぶんガラス張りで中が完璧に見えるからだと思う
中では店主の作家本人が出迎えてくれるわけだが、とりあえず一通り見てからいろいろ話した
などという展示だった
かんそうとか
前本は見た人をビビらせるようなものを作りたいと願っていると昔書いてたが、その仕事は継続されているようだった
今回は点数的にもペロンミの作品が多かったので、ペロンミ中心でいくと、ちょっと前よりも抽象度が上がった&背景というかマチエールが複雑化しているように思えた
そもそも造形だけで味がある作家だったが、背景からもめちゃくちゃ味が出ている
意識しているのかはわからなけど、それとバランスをとるようにクレヨンの素描のような作品も展示されているのが興味深い
これがいいかんじの空白になってくれて、全体として見やすい壁になってた
また、そもそも絵の配置がよかった!
高いの低いの、あと前本作品との絡みもよくて、これは作家本人がちゃんと来てインストールしてそう(orしっかり指示した)だと思ったっすね
(一番上の素描が横に並んでるのとか、すげえいいと思う
羽が生えている人物が描かれることから、ふつうに若干の神々しさがあるペロンミ作品だが、ほぼ神棚な前本作品と並ぶことにより、完全に聖像画っぽく見えていたのは思わぬ作用だった
以下前本と話したこと
今の作家は方向性が見えなくて大変じゃね?って話
これはその通りだと思った
前本のデビュー当時は(さっき書いた通り)ポストもの派の時代で、とにかく禁欲的なミニマルなインスタレーション作品ばっかだったわけで、逆にいえば対抗すべき仮想敵がいた
が、いまは特にそういう方向性もないし、これといった流行もない
強いて言えば、マンガ・イラストの芸術方面への接近、(それと別件でもない)キャラクター絵画という謎の領域の誕生などがあるが、ぶっちゃけ美術運動じゃなくマーケットベースの流行でしかんいので様式ととらえるのも難しいし、どう発展させようというのも、平面作品として固定化されていることもあって難しい額装しないの?とペロンミに聞いたところ
「世界堂があれば・・・」みたいな返事だったとのこと
そう、実は仙台は美術不毛の地なのだ!
という感じの話をだらだらしてしまったので大変お世話になりました
近々別の作家のトークイベントも企画してるってことで、その作家にも自分はすげえ興味あるのでまた行くことになると思う
とりあえずそんなところっす