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大切な本76「逃亡くそたわけ」
追いかけたい女性作家さん⑤
すべての作品にパンク魂を感じる絲山秋子さん。湿度0%のカラッとした作品のタイトルもいつも素敵で、どれも私好み。
名だたる文学賞を次々と受賞されてその才能は今更説明するまでもないのだけれど、改めていくつか読み返してみても、書き手としてのセンスが抜群にある方なのだなあと気づかされる。生まれ持った才能とはこのことか…
芥川賞受賞作「沖で待つ」も傑作で大好きな作品だけれど、個人的に一番好きな小説は「逃亡くそたわけ」(たわけ、は名古屋弁で「ばか」「あほ」のような意味合い)。メーカーの営業職だった時に名古屋へも赴任されていたそうで、名古屋の地元ネタが色々出てくるのも嬉しい。
登場人物の愛称としても使われている「なごやん」は地元のスーパーやコンビニならどこでも売ってるお菓子で、名古屋人の自分には食べ慣れた味の日常おやつ。シンプルだけど飽きの来ない、個人的に結構愛着のあるお菓子なので、絲山秋子さんの小説にさりげなく出てくるところがまたポイント高い。
躁うつ病を患われていたこともご自身のエッセイで赤裸々に語られている。
「絲的メイソウ」「絲的炊事記」「絲的サバイバル」 「絲的ココロエ」…自分の殺伐とした生活に重なるところも多くて、笑えるのに、一方で妙にドキドキもする。小説にもうつ病だったりクレプトマニアだったりどこか危うげな登場人物が多く出てくるけど、彼らと自分に境界を感じなくて、その微妙な「これって自分ごとかも」感が絶妙なバランスの作品群。
とにかく偏愛&敬愛している作家さんのお一人。最近は新作が出るペースがゆったりめなのかな?次の作品も首を長くして待ってます♡
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