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愛する猫の命が天に還っていった。ここにある喪失感から、今日これからをどう生きようか。 ( 2 )


こちらの続きです。


目が覚める。
「あおが昨日なくなったんだ」
と思い出す。
後悔やさみしさがおしよせてくる感覚がして、咄嗟に忘れようとする

スマホから流れ続ける動画に、
脳はおいついていかないけれど
音がして、誰かが笑ってる
だけで気が紛れる

まだ現実に帰りたくないから
布団をかぶったまま
限られた世界ですごしていると
シェアメイトが私の部屋に来てくれた
手を握って、気分はどう?
ときいてくれる

意識が現実にかえってきて、
手のあたたかさにほっとして
涙がぽろぽろと溢れ出す

ああ、やっぱり夢じゃないんだよね。あおちゃんのいるはずの日常はもうおわってて、これからはあおちゃんがいない日常がはじまるんだ

頭の中で私の想像していた未来を
何度もかきかえて、
身体でおぼえようとする

前にFacebookで見かけた詩で、「喪失はなんども、永遠におとずれる」とあったことを思い出す

あなたが誰かを失うのは
たった一度ではない。
何度も繰り返し、ときには、1日に何回も、
失うのだ。
そのひとを失ったことを、
ひととき忘れていると、
喪失は、そうっと近づいてきて
背後からあなたを襲う。

失ったのだという想いが、こころを叩いて
新しい悲しみの波が押しよせ、
そのひとは、ふたたび、
いなくなるのだ。

あなたが誰かを失うのは、
たった一度ではない、
夜明けに目覚めて、
まぶたを開けるとき、
あなたの記憶も目を覚まし、
あなたの胸を貫いて揺さぶる稲妻もまた目覚め、
そのひとは、ふたたび
いなくなる。

誰かを失うということは、旅路なのだ。
たった一度の別れではない。
喪失には終わりがなく、
できるのは、喪失の波が襲うとき、
その中で浮かぶためのわざを学ぶことだけだ。
この嵐の海を渡っているひとに
やさしくあってほしい。
そのひとの旅は長く、
日々、気づくたびに衝撃を受ける。
大切なひとがもういないことに。
あなたが誰かを失うのは、
たった一度ではない。
一生の間、毎日
失うのだ。

エリカ J グリーゼナウアー (訳:すずきしげこさん)

人がいることのありがたさが、いつも以上に身に染みる。

ひとりでいると放心して、涙も出ないのに。誰かがいてくれると、安心して悲しみがでてこれるみたいだ

昨夜も動物病院の駐車場で、私はどこにいったらいいのか、どうしたらいいのか、まったく検討がつかなかった。

友人が電話口で泣き出した声を聴いて、私の魂がかえってきた。あのまま一人でいたら、心細さと混乱のまましばらく抜け殻だったのだとおもう

ああ、あなたがいない世界を生き抜いていく自信はない。その意味もわからない。べつに死んでしまってもかまわないじゃないか・・・と一瞬よぎった考えをさえぎったのは、「やりがいのある仕事」でも「挑戦したかった何かへの後悔」でもなく、身近にいる人の存在だった

私がこのままぴょんっと死の淵にむかったら、私の肩に重くのしかかっているこの悲しみや絶望をまた誰かに分けあたえてしまうことになるんだ。

私はひとりじゃなくて、共に泣いてくれる人がいる。あおちゃんを共に看取ってくれるひとがいるんだ。そう思った時に、ようやくからっぽの感覚から、かすかに生きる意味と理由がわいてきた


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

朝、手を握って隣りにいてくれるシェアメイトの目もはれていて、何を言うでもなく、静かに時間がすぎていく

共にこの悲しみや寂しさを
生きてくれていることが肌でわかる
一人じゃない

人がいる、それだけであたたかくて、心強くて、彼女がいてくれるうちに、あおちゃんに声をかけようと決めた


さっきまで布団に潜って、あおちゃんの姿を見ないようにしていたことを思い出して、申し訳なさや、怖さを握りしめ、「ドク、ドク」と心臓で感じながら、「あおちゃん、おはよう」と声をかけた


昨日のよる、全然布団に入ってこなかったから、「やっぱり」って感じではあるのだけど、やっぱりあおちゃんは昨日の姿のまま固まってた


ああ、もう受け入れるしか無い
あおちゃんと遊べる日々はもうこない
そうやって理解をしながら
なんども撫でて、キスをした
とめどなく涙がでてきて、
頭がガンガンいたかった

「今日もかわいいね」
「あおちゃん、昨日は寒かったよね、ごめんね」
「助けられなくてごめんね」


ふわふわだった身体はびっくりするくらい固くなっていて、ずっしり重くなっていて、あおちゃんらしくなかった。



ああ、目をさましてしまった。今日はどんな風にやりすごせばいいんだ。
時間が早く過ぎて、抱えきれるくらいの大きさの悲しみになってくれればいいのに

早く忘れたい
でも絶対忘れたくない
どうしようもできないジレンマに襲われる

何も考えたくない、
何も感じたくない
何をする気にもならない
そんな一日をどう過ごしたらいいんだろう

もう一度布団にもぐりこんで眠ってしまおう、としていたら、宅急便がとどいた。

「なんだかすごく素敵だからひらいちゃった。」とシェアメイトが見せにきてくれた小包には桜の花びらが入っていて、かわいいおにぎりがびっしり入っていた。

ああ、そうか。昨年共感セッションをしていた愛さんが、きっと贈ってくれたんだ。

愛さんは先日出産して「あお(明音)くん」が新たにこの地球にやってきていたのだ、ということを思い出して、そのご縁につながりを感じながら、おにぎりに添えられたメッセージを読む。

母の愛のようなものを感じて
心に染みてくる。

今日も生きなければ。
まずは太陽の光をあびよう。と思った。


あおちゃんとの日々を、忘れないために。
安心して忘れ、また思い出すために。
この体験から、新たに私の生命を生きる意味を見出すために。
喪失感や弔いや、生命に向き合う人との分かち合いのために。
最後の日々をここに残しています。

最初はこんなに小さかったのに
もうお尻しか入らなくなったね。
前のめりで「ねずみの取り方」を学んで
骨折してるんじゃないかと思うほど、変な寝相でねて
じゃれあって
布団をふみふみして
車にのって弟のトラキチに会いにいって
揃ってご飯食べて
箱にはいってあそんで
疲れたら寝る。


やっぱり、その姿が本当にいとおしい。


ここまで読んでくれてありがとうございます。
この動画もとても可愛いのでぜひみてください。
初めての雪デビューです*


▶つづき。


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