テレビCMをしたい人のために全体像をざっくり解説してみます
テレビCM施策をしたことがない企業にとって、初めてテレビCMにチャレンジする時は一大事です。
数億円という巨額を投じ、かつ効果がまったく未知数。
大きく当たる過去事例を聞いて、「本当にそうなるのだろうか」という不安を抱きながら、数ヶ月という長い時間と、決して少なくない社内リソースをフルに使い、大博打に挑んでいくわけです。
私はいままで様々なテレビCM施策に関わってきたのですが、そのたびに、
「テレビCM施策ほど全体の流れがわかりづらいマーケ施策はない」
と思ってきました。デカすぎます、全体像が。
なので今回は、まず全体像がわかるようなnoteを書いてみます。
期間としては、やはり半年くらいはおきたいものです。
「なぜそんなにかかるのか?」と思われるかもしれませんが、
実際に進み出すと、半年間ですら様々な後悔を飲み込みつつ、
ところどころはえいやで泣く泣く決めつつ、進めなくてはならなくなります。その後悔をなくす意味でも、そのくらいは見ておきたいです。
まず社内でやるべきこととして、「RFPの作成」があります。
RFPとは、Request For Proposal の略で、
外注先に対して「今回の施策の目的はこれで、背景はこうで、前提条件はこれ、予算はこのくらい、期間はこのくらい。ターゲットはこの人たちで、訴求したいポイントはこれ、インサイトはこういうものだと思っている、留意点はこれとこれ」などの、今回のプロジェクトの要件を言語化したものです。
まずこれめちゃくちゃ大事です。
なぜならこういった「目的」「背景」「条件」などは、
プロジェクトが進んでいくなかで笑えるくらい簡単に吹き飛んでしまうからです。
それは外注先が忘れることによっても起きますし、
忙しさに飲み込まれて社内が混乱してしまうことによっても起きます。
そのときに立ち戻るべき、心強き指針、頼れる星座としてちゃんと作りましょう。
RFPを作成するときには、社内でのすり合わせも大事です。
この認識が社内でズレていると、CMができあがってから認識齟齬が起き得ます。「これ言いたかったんだっけ?」みたいな。
RFPをちゃんと文書化して、社内でもすりあわせたら、
外部パートナー探し&声がけに進みます。
懇意にしている総合広告代理店がいればその人に声をかけますし、
なければ自らアタックしていきます。
テレビCMという巨額が動くので、「コンペ」をしたくなると思いますが、フラットに言って一長一短です。
代理店の方々はもちろんポジショントーク的に、「コンペはしないほうがいい」と言いますが、それは半分真理で、もう半分がちゃんとポジショントークです。
コンペをやって良いことは、想像できる通り、「気合いをチーム組成してくれるかもしれない」「ちゃんと考えてくれるかもしれない」みたいなところですが、
代理店からしても「自社規模にとって大した額にならない案件」に対して、コンペで本気を出すかといえば、微妙です。数百億円数千億円出してくれるナショナルクライアント様なら、もうそれはそれは吐血するくらい全力でやってくれると思いますが、数億円の施策単発だけを頼もうとしている会社に全力を出してくれるとは到底思えません。(よっぽど「代理店から見たLTVが大きくなりそう」であれば別かもしれませんが)
誠心誠意、「お願いしたいです」と言って、一社に依頼することもいいのではと思います。
ここで少し疑問に思われた方もいるかもしれません。
「なぜ広告代理店のほうが『受注される側』なのにちょっと偉そうなの?」と。
ええ、それはもう構造の問題でしかたがないのです。
テレビCMは「結局蛇口を総合広告代理店が握っている」ものです。文句があるなら事業主が自分たちでテレビCMを作って流せばいいのですが、それができないのです。構造と歴史上。頼むしかないのです。なんならテレビCMという施策では、発注側である事業主のほうが弱い立場とすら言えます(それがネット広告の台頭でようやくほんんんんの少しずつ変わっていっている印象がありますが)
話がずれました。大まかな流れの説明に戻ります。
まず代理店にRFPを説明するオリエンをやります。
その後1,2週間待って、広告代理店からの提案を受けます。プレゼンってやつです。
プレゼンでは、「クリエイティブの中身」と「メディアプラン」をもらうことが多いかと思います。
クリエイティブの中身は、まだこの時点では「企画案」レベルのものです。「こういう感じのCMってどうですか」くらいのものです。ここで細かな議論をするというよりは、「本当にそのクリエイティブが目的を達成できそうか」「ターゲットがちゃんと態度変容して、売上につながりそうなのか」という観点でチェックしていったほうがいいと思います。
メディアプランに関しても、細かいところまでもちろん見るべきだとは思いつつ、ぶっちゃけそのチェックにかける時間対効果として、とことん細かいところまで見なくてもいいのではと個人的には思っています。それよりはクリエイティブの中身のほうが大事だと思います。どんなに良い枠でCMが流れても、CMの中身がしょぼかったら意味ないですよね?
ここから代理店とのラリーが続きます。
毎週の定例会議によって、代理店から提案がくるのが一般的だと思います。
クリエイティブに関しては、企画案が固まれば、コンテに進み、演出プランを固めていく流れになります。
ここでも、クリエイティブの人が「ちゃんと目的に向かって誠実に力強く向かうものをつくってくれているか」を確認していきましょう。
社内で「俺はクリエイティブに詳しいんだおじさん」が出てきて、わーわークリエイティブに対して言ってきたら、難しいかもしれませんができれば会議から永久追放しましょう。会議にずっといさせていいことはありません。そんなやつがクリエイティブをわかっているわけがないからです。
一方で、クリエイティブの人が「なんか信頼できなさそう」とちょっとでも思ったら、遠慮しないで代理店に言いましょう。
結局テレビCMのクリエイティブは変数が無限にあるので、ちまちま違和感を感じた部分を打ち返して修正しようと思っても無理があります。結局そのクリエイティブをつくる「人」にすべてかかっているのです。信頼できる人に頼むようにしましょう。
メディアプランに関しても、メディア担当者と何度か打ち返していきますが、テレビ媒体のターゲットはネットのターゲティングに比べてあまりに「大雑把」です。そういわれないように最近ちょっとずつテレビ媒体も「個人視聴率」なるものを出してきましたが、うーん、そこまで「とっても進化したもの」とはいえないのではないかと思っています。(ぜひご自身で確認してみてください)
あくまで今回の目的を達成するか、の観点で、質問をして、打ち返していく、くらいがいいのではないかと思います。
演出プランが固まると、PPMという、撮影を行う直前の最終確認をする儀式的ミーティングがあり、大勢で確認する会を経ます。
そしていよいよ撮影です。
大勢のスタッフが撮影のために動いており、「これが高い高い制作費の内訳なのか」と思うはずです。
大勢のスタッフがいても、ちゃんと撮影素材を見て「ちょっと違うんじゃないか」と思ったら代理店営業の方に言ってみましょう。
そのあとは仮編集です。素材をつなげて、ざっくり「こんな流れで映像がつながります」がわかる動画をつくります。
それを見てまた社内で確認します。
そのあといよいよ本編集を経て、最終素材ができあがります。
流れとしてはざっくり、こんな感じです。
評判が少しあれば、もうちょっと流れについて詳しく書く記事を書いてみたいと思います。勢いで書き上げましたが、今日はここまで。
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