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夏の1コマ|オリーブの木陰から、新麦入荷しましたって。


オリーブの実を食べるより、その葉を眺めるのが好きだ。
実りは秋だが、細めでしゅっとした形の葉が互いに身を寄せ重なり合って、いきいきとのびてゆくのは日差しが眩しい夏である。
かすかな青みをおびたグリーンの葉は、種類によっては光の加減で銀色にも見えることがある。

大きく育ったオリーブの木は、勢いづいて波を描くように葉を茂らせ、自由に枝をのばしていく。
おしゃれなカフェやイタリアンの店先でお目にかかるたび、いつかはうちの玄関にお迎えしたいと、この夏もまた熱い眼差しで見つめてしまうのだ。

とある私鉄沿線の駅を降り、お目当てのパン屋に向かう。
夏休みの時期でもあり、店内で食事をする席に着くためには、ある程度の行列は覚悟の上だ。

奔放に枝葉を持ち上げるオリーブの木の陰に、だいぶ色の馴染んだ藍色の暖簾が見えた。


新麦、入荷しました


真夏の炎天下、パンを求めて並ぶ人びと。
お店の方から、申し訳なさそうに冷たい飲み物を手渡される。

順番を待ちながら、黄色い貼り紙が目にとまった。

新麦しんばく、入荷しました〟


“新麦”とは、その年の夏から秋にかけて収穫した小麦をすみやかに製粉した、獲れたて・挽きたての小麦のこと。

8月10日解禁の九州にはじまり、10月20日の北海道まで、桜前線のように「小麦前線」が日本列島を縦断していきます。

新麦コレクション公式ホームページより



思いがけず、小麦前線の通過をここで味わえることを知った。

小麦やレーズンの天然酵母を使った全粒粉パン、ライ麦のハードパン、大小さまざまな種類の食パン、季節の素材を使ったキッシュ、見たこともないほど頑丈そうながっしりとしたタルトなど。

ああ、そんなパンたちを目の前にするまで、真夏日の行列は1時間ほど続いたのだ。
オリーブの木陰は、見た目ほど涼しくはなかった。


木造の民家を改築したというお店


パンの盛り合わせが、組体操のように緊張感を持って登場。
3種類のレーズン、胡桃、胡麻、酸味、甘み、うまみ。
噛めば噛むほどたまらなくおいしいのは、
きっと新麦のせいに違いない。


トマトとチーズのサンドイッチと、


チキンと卵のサンドイッチは、
もちろんひとつずつ交換した。

ゴツゴツしたパンの焼き目と、
土を感じる器の力強さがよく似合っていた。


           🍞🥖🥐



とある私鉄沿線の別の駅にある、
小さなイタリアンのお店にて。


釜焼きピッツァのあとは、ジェラートケースのパレットから絵の具を選ぶように自家製ジェラートを注文する。



葉っぱの飾りは、果樹園の思い出なの?



赤くて甘い、夏の味。




まさかキミから、
海をとじこめたスノードームをもらうなんて。

雪の舞うボールの中でりすが木の実を抱えている、
お気に入りのスノードームは
確かに年じゅう飾っているけれど。

キミが好きなものに気づいてくれたことが
ただ、すごくうれしかったんだ。




            🍉






ここまでお読みいただきありがとうございます。 絵とことばにこめた、思いのカケラが届きますように。