秋の百句会 2024 川柳100句
「秋の百句会 2024」(2024/10/13、太代祐一さんが主催)に投句した川柳100句のまとめです(当日は特に言及しませんでしたが、連作として作りました。なお、後に※印のついている句は、当日、批評用に自選した句です)。
川柳連作『あゆみ百景』
目覚ましを止めるきのうの重い雨
薄皮を着替えて青い血を流す
結晶で顔を洗って泣く鏡
陰口を開けずに銃で歯を磨く
火だるまで犬に散歩をさせられる
入念に手を洗っても手の匂い
物笑いみたいに回る洗濯機
朝食の代わりに骨へ謝罪する
曇天にドライフードの降りしきる
擦ったら皿が悲鳴をあげる朝
天に召す洗濯物を干しながら
はとがまめくてぱくてぱと他界する
玄関でまだ乾かない罪を着る
空洞にいってきますが鳴り響く
道すがら全て蒸発する世界
約二分遅れで赦し光る駅
車両には捨てる部位だけ詰め込んで ※
目を閉じてそっと近づく鑑別所
ロープ式エレベーターで行く地獄
大量の赤いおざます嘔吐する
青白い命にタイムレコーダー
ぐるぐると回り続ける判決書
行く川の流れの中で浮く絵文字
リアクションお願いします製造機
人事部の事部にマウスで墨を塗る
カチカチとカチャカチャを吸う日本晴れ
ぎこちない笑顔だらけの受信箱
どこまでも血の止まらない噛み合わせ
意図的にランチを雨にすり替える
先鋭な指でさされる昼休み
消しゴムで休み時間を消してみる
モニターに映った9の曲線美
落下する了解ですの領海へ
表情の計数管理できますか
月面の地層から出たエビデンス
白壁のオフィスに生えるトリカブト
美に耽る赤く輝く会議室
違和感でとどめを刺せる処刑台
リスケから滲み出てきたリンパ液
再考の余地に建てたい資料館
毒キノコみたいな顔の人の群れ
塗りたくる黒いお疲れ様でした ※
電源に残業という名を付ける
じっくりと抽出された濃い格差
いつまでも処理をされない危険物
樹海なら別に帰っていいですよ
足のある幽霊たちを運ぶ波
行進は最終前の前の前
快速の窓に映った免罪符
閃光が包む朝とは違う駅
憲法でトイレは使用出来ません ※
コンビニと次のコンビニまでの腸
海賊版玉音だけが鳴り渡る
鍵穴に差し込む舌と華厳経
大量の酒に浸した鳩時計
晩飯か夜食か毒かわからない
概念も裸になればいいのにね
盛り塩のシャワーで流す「私なら
不名誉が足ふきマットなのですか
歯を磨く草臥を磨く死を磨く
溜息でゆったり原子力寝間着
錆びついたフォークとともに床に就く
入眠の前に隈なくガンマ線
眼球に反射するのは第一趾
右下の次の動画に出る汚辱
楽園が液晶越しに燃えている
ののしりのののあたりとはいうものの
覚醒に昨夜と同じ藤が咲く
心音で開けるあしたの袋とじ
知らぬ間に精神的な火事になる ※
目を閉じて呼吸で罪を軽くする
色のない記憶の中のすべり台
肺の中 微かに響く鎮魂歌
刻まれる膝を抱えた子、目、涙
忘却の彼方から来る深緑
足音で敵と味方が入れ替わる
駄菓子屋でこっそり買った皆殺し
境涯が自我を囲んで餅を焼く
聖人が笑顔でくれたざまあみろ
束の間の停戦に降る雨と棘
混濁と試算が載った提案書
バス停に没落だけが列をなす
精神の愉悦をかけたオムライス
教室に期待外れの雪が降る
光合成出来る人間ランキング
喉にある小骨を取って塩を塗る
原因と結果まぶして飯を食う
焦燥を当事者間で合意する
まぶたにもアサガオの咲く望薄
慎重に朝が夜中を切除する ※
桂剥き出来ずに不眠ファンクラブ
次からは計画的に猫となる
順番に意識とともに消える指
尊厳もミンチにすれば一緒です
息の根を記念に植えるボランティア
悲壮から絞り出された朝露に
夢の中、そこに経験的な鐘
目覚ましが私刑で壁を爆破する
朝は来るそれが違憲と知りながら
止まらないアラーム、または生きること
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