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星は眠りつづける、濡れたまま
きみの指は 太平洋を ふかくなぞりつづける ふくらはぎは 赤道を巻きとっている コーヒーカップに 水葬の音 まだ眠りつづけよ 地はびっしょり濡れている 青い瞳のように 砂漠に降るあかい雨のように 氷河におおわれた額 しろい波が 痩せている太腿 溶けていくつまさき 空に悲鳴がひびく それでも眠りつづける
きみはどこにむかうのか 河をわたり地下をはしり 眠りの下をくぐっていく 太陽系の寝息 溶岩の波音 夕立のように割れるガラス窓 眠りつづける 核爆弾の風が ゆらすスカート ひたすら眠ってきた 寝室はものがなしい 心と記憶が 枕にのこっている 朝が始まる きみの罪の 裏にひびく音色で 語られない夢で ひたひた鳴る波音 膝までびっしょり 濡れながら 水のなかで 存在のかたちをたしかめる 球体に刻み込む 指の跡のように
まもなく 靴は乾くだろう
星も きみも目覚めるころだ
濡れたまま