プレミア12 アジアラウンド・各国見どころ紹介

日本代表🇯🇵


 野球界というのはMLBという絶対的王者のリーグが存在します。その絶対王者が開催するWBCという大会で大谷翔平やマイク・トラウトといったMLBのスター達が世界一を競い合う事で、大会は大いに盛り上がりをみせたのは記憶に新しい事でしょう。

では、彼らが存在しない中で決める「世界一」の存在意義とは何か?

そういった感情の野球ファンが多いという事は十分に理解できます。しかしながら、プレミア12にはWBCとはまた異なる面白さがあるという事を私は伝えたい。

MLB40人枠の参加が不可能となっているプレミア12、その中でNPBという世界二番目のリーグは必然的に大会に参加する中でトップの座に君臨します。
WBCではアメリカやドミニカ、メキシコといったMLB選手を多く抱えた国に対して挑戦者として望んだ日本でしたが、プレミアでは一転、絶対王者として世界一の座を防衛しなければならない訳です。
言い方が少し悪くなってしまいますが、KBO🇰🇷もCPBL🇹🇼もMiLB🇺🇸もLMB🇲🇽も、NPBからすれば皆格下
それ故にWBC以上に勝つ事が求められてしまう大会。そんなプレッシャーの中で戦う侍ジャパンという構図の大会です。

といっても別に負けたところでNPBが世界第2位のリーグである事には変わりないし、負けたら何かペナルティがあるという訳でもなく。
無論今の日本野球は絶頂期であり、今の韓国野球はWBCでの圧倒的大差での勝利で、ライバルでもなんでもなく遥か格下というイメージに上塗りされています。
しかし待って欲しい。プレミア12と同じNPBvsKBOの対決となると、最近戦ったのは2021年の東京五輪。その時は8回に山田哲人のタイムリーが出るまでどちらが勝つかわからないような接戦だったのを覚えてはいませんか?またトップ層の対決ではないものの、昨年のAPBCでも2試合とも一点差、決勝戦は延長にまでもつれ込んだ大接戦でした。

国際大会が少ない野球というスポーツは、その国の強さに対するイメージが直近の試合によるイメージで固まりがち。しかしながら野球は先発の状態や運によって大きく左右され、1試合ではその実力差が正確には表れづらいスポーツです。今季の西武だってホークスに負け越しはしているものの、1試合を切り取れば8回勝っています。もしかしたら、その1試合をいつか日本が引き当てる可能性だってある訳で。

なのでこのプレミア12で様々な国と戦い、相手国との距離感を掴み、経験を積み、反省点を炙り出す。WBC連覇を目標をする日本にとってこれ以上の大会はありません。そして、NPBというリーグが世界第2位のリーグである事を改めて示す事ができるか。
日本にとってのプレミア12の面白さとはこういった所に詰まっているのではないでしょうか。

韓国代表🇰🇷

WBC3大会連続の1時ラウンド敗退、東京オリンピックでは3位決定戦でドミニカに敗れ、まさかのメダルを逃す事態に。
しかし杭州アジア大会にて初めてとなるプロ野球シーズン中断なし&若手を大幅起用する思い切った方針転換をとりながらも見事優勝。
その後若手主体のAPBCでは準優勝ながらも日本と好勝負を繰り広げ、ドジャース&パドレスとの親善試合では昨年のドラフト1位だった投手を登板させるなど、若手への経験という点では日本と同じかそれ以上に力を入れています。そして今回のプレミア12。既に最終予備ロースターが発表されましたが、この時点での全選手平均年齢は24.8歳。WBC'23での平均年齢が29.4歳だったので、僅か一年でここまでの若返りを果たしたという訳です。

韓国の若手選手、その中でも1番の目玉選手として一際存在感を放つのがKBOのニュースター、キム・ドヨン(KIA)です。

昨年のAPBCでも選出され、2024年に突如の大覚醒。3•4月から異常ペースで盗塁と本塁打を積み重ね、8月にKBO史上最年少の20歳で30-30達成。KIAタイガースシーズン首位に大貢献し、最終的にトリプルスリー(.347 38本 40盗)を達成するすばらしいシーズンを過ごしました。
おそらくプレミアでも主戦力として韓国を引っ張る存在になる事でしょう。

本来主戦力となるはずだったキムヘソン・カンベクホは兵役基礎軍事訓練の為不参加。この大きな穴を埋める為にはキムドヨンの活躍は不可欠。
他にも野手陣だとソン・ソンムン(キウム)、ユン・ドンヒ(ロッテ)、ノ・シファン(ハンファ)ら他の若手にも期待。

ウォンテイン

投手陣にも目を向けてみましょう。
韓国の投手の特徴としてチェンジアップを決め球として使う投手が多いです。(特に先発)
日本人の投手の多くがスプリット・フォークを使用しているのに対して、ウォン•テイン(サムスン)、クァク・ビン(斗山)、コ・ヨンピョ(KT)といったKBOトップの先発投手は主にチェンジアップで三振を築く投手。
よくよく考えると、韓国の伝説的大投手であるリュ・ヒョンジンはチェンジアップを駆使していたので、そういったところももしかしたら関係しているのかも…という考察をしてみる。
日本と韓国というお隣の国ながら、その投球術はまるで異なります。十人十色のチェンジアップを楽しむのもまた一興かもしれません。

もう一つ楽しみなのが、先程述べた親善試合で登板した2023年のドラフト1位(全体2位)であるキム・テギョン(斗山)。
ルーキーながら守護神として一年間登板し、60登板の大酷使。max155キロかつ回転数の非常に高いストレートを武器に戦いました。もし選出されれば若手の多いプレミア12韓国代表内でも最年少となります。(そもそも1年目から60登板させる李承燁監督何考えてんだよ)

おそらく今回のプレミア12などで選出された選手は、今後の国際試合を太極旗を背負う事になりそう。狙うはプレミアの優勝だけではなくさらにその先、WBC26,そしてLA2028です。

チャイニーズ・タイペイ(台湾)代表🇹🇼

2012年の工事開始以来、市と建設グループの争いやコロナによる建設延期などを経て2023年遂に完成した野球界のサクラダファミリアこと台北ドーム(臺北大巨蛋)。ドーム開場によってCPBL史上最多観客数動員数を記録し、レジェンド・周思齊の引退試合では4万人もの観客が来場。こちらはCPBLの1試合史上最多となりました。

今回のプレミア12グループBの主な開催地となる台北ドーム。これまで以上のホームアドバンテージによって、相手国は完全アウェーの状態になる事でしょう。この「地の利」をいかし台湾代表がどこまで戦えるのか?という点は一つの注目ポイントです。

台湾代表ロースター
https://www.facebook.com/share/p/oRrvgSRT38gictaV/? より

既に発表された選手ロースターですが、正直言ってメンツがちょっと…と感じてしまいました。
今期途中から加入した張育成(富邦)や呉念庭(台鋼)の負傷、現CPBL最強投手である徐若熙(味全)は怪我明け&来年のWBC予選のために辞退、一時NPB行きが噂されていた曾峻岳(富邦)も右肩の状態が悪いため辞退…と投打に主力を欠いてしまう事態に。その上でちょっと謎人選も多い、なんで曾子祐より張政禹?
旅外=海外球団所属の選手も、多くの選手が出場を希望する一方で最終的に所属球団の制限や選手の状態等もあり、全ての面でベストメンバーとは言えない状態です。

それでも強力な選手が居ない…というわけではありません。打線のキーマンとなるのはパイワン族の捕手・吉力吉撈鞏冠(ジリジラオ・ゴングァン)でしょう。
野手がパワーレスな選手が多い台湾にとっては唯一と言っても良いほどの主砲。ジリジラオの前にランナーを出し、その上で彼がどれだけ暴れられるかによって台湾の勝利が決まります。

ジリジラオ・ゴングァン

台湾投手陣の核となるのは古林睿煬(グーリンルイヤン)。APBCでは日本戦に登板し7回1失点の超好投を見せた統一獅のエースです。格上の国に勝つ唯一の方法としては古林を先発させ、あとはリリーフを注ぎ込み点を守り抜くという形しかないです。

かといって中継ぎもそこまで圧倒的ではなく、野手がパワー不足すぎる為今回のプレミアは非常に苦しい戦いとなることが予想されます。地元開催のアドを活かしてどこまで戦えるのか。

ドミニカ共和国代表🇩🇴

WBCでは強力なMLBプレーヤーを揃えたもののベネズエラ・プエルトリコに敗戦。とはいえフリオ・ソト・マチャドらトッププレーヤーが打線にラインナップされたあのオーダーは正に全野球ファンにとっての夢でした。

MLB選手の出場が許可されていないプレミア12という大会。ならドミニカ代表はそんなに強くないのでは?と思うかもしれません。しかし実を言うとその逆、今大会でダークホースとなりうるのがこの国です。

ドミニカの強みというのはMLBに頼らなくてもそれなりのチームを組める層の厚さにあると私は考えます。

その根拠となるのが2020東京五輪での戦いです。
FAとなっていたホセ・バディスタとメルキー・カブレラの元MLBのベテラン、フリオ・ロドリゲスらMiLBの有望株、国内WLの選手、当時巨人だったCCメルセデスとサンチェス。これらの選手によって構成されたチームは最終的に韓国を破り銅メダルを獲得する事ができました。
MLBロースター外の選手のみで構成されたチームで兵役免除のかかった韓国を破ってしまったのですから恐ろしい。
日本戦ではCCメルセデスの好投もあり8回まで2点差で負け、9回裏になんとか打線が繋がり勝てたというギリギリの戦いを強いられたのが印象深いです。
自国にレベルの高いWLが存在する為、MLBに頼らなくてもそれなりのチームが組めるドミニカ。
その上で、今大会はアジアの戦力をどれだけ呼び込む事ができるかが重要な鍵を握っています。 

前回大会ではエンニーロメロ(当時中日)、アレハンドロメヒア(広島)、カルロスペゲーロ(楽天退団)の三人がNPBから出場。
今大会はGMを含む首脳陣の陣容が早期に発表され、リクルーティングの動きはかなり良好。
ドミニカのニュースではロハス(KT)、ポランコ(ロッテ)、デポーラ(中信)といったアジアリーグの選手が候補に挙げられていました。

そして発表されたメル・ロハスjr.の参戦。
NPBで活躍できなかった印象が強い為、「ロハスでも代表になれるドミニカは弱い」という意見もちらほら見受けられますが、今回のロハス参戦が意味することというのは大変大きな意味を持ちます。というのも、アジア各国に散らばっているドミニカ人を招集できる程にドミニカ代表が力を入れているという点です。
そもそも戦力的な面でも、今回のグループBでスーパーラウンドに進出できるトップ2の国を順当に考えた場合、日本そして韓国となります。故にKBOで無双したロハスjrの招集というのはドミニカにとっても大きな補強。

まもなくメンバーの最終ロースターが発表されると思いますが、そこでどの程度のメンバーを招集する事ができたのかを楽しみにしています。

オーストラリア代表🇦🇺

WBCでは韓国に大金星を挙げ史上初のベスト8に輝いたオーストラリア。WBCではMLBロースターに入っていた選手がいなかった為、今回のプレミア12のメンバーはWBCとほぼ同じ戦力となる事が予想されます。
当時は準々決勝進出する上で、万が一韓国戦を落としてもオーストラリアに勝てばOKと言われ、MLB組の力もあり圧勝で終えました。しかし今大会はこのオーストラリアがグループの中でも比較的下位の序列という点を踏まえると、このグループBというものが如何に魔境かという事がわかりますね。

さてさてオーストラリア野球の国際大会における一つの武器として、タイプの異なる投手をマシンガン的にどんどん注ぎ込んでいくというものがあります。前回のプレミア日本戦やWBCの韓国戦がまさに良い例で、前者は4回以降から始まった継投策によって打者が打ちあぐね続け、結果日本は勝てたものの苦しい結果に持ち込んでいる、後者は計8人の投手による継投で韓国との打ち合いを制しました。150キロを出せる投手もいながら、変則サイドや左投手などの選手も多いため、初見殺しの策にまんまと嵌められてしまうと苦しくなるのがオーストラリア戦です。

もう一つオーストラリアの注目ポイントとなるのが2024年MLBドラフト全体1位、トラビス・バザーナ(CLE)の参戦についてです。

オーストラリア人として初となるMLBドラフト全体一位のトッププロスペクトの参戦、プレミア12にとってもこのクラスの有望株が登場するのは大会史上初のことではないでしょうか。
ガーディアンズ側もバザーナのプレミア参戦についてOpen-minded(前向き)であると述べられており、私としても彼が参戦できることを強く望んでいます。

【追記】やったアアアアアアアアアアアアアアア

初戦はバンテリンドームで日本と対戦するオーストラリア。来日の際は府中で練習を行う事が多いので、もしかしたら府中で会えるかも…?時間に余裕があれば行ってみてはいかがでしょうか。

キューバ代表🇨🇺

強力選手達の相次ぐ亡命によって、代表メンバーが年々高齢化&弱体化しつつあるキューバ。その対策として近年はアルエバルエナのように、亡命選手の国内リーグ復帰や代表チーム参加を認めています。
今大会も亡命選手に対してリクルーティングを送っているようで、元巨人のヨアン・ロペス、辞退こそされたものの、エルネスト・マルティネス(MIL2A)といった選手が予備ロースター入りしていたそうです。

キューバもオーストラリアと同じくWBC時点でMLBロースター内の選手が少なかったため、プレミアの戦力もWBCのそれに近いものとなるかもしれません。簡単な計算をすると、WBC-(ジャリエル+ロベルトJr)+亡命組となり、こうなると普通に強い。
無論、現NPB組のモイネロ・ライデルマルティネス・アリエルマルティネスは強力。おじさん化しているとはいえ、デスパイネやグラシアルなどの元NPB組は依然として侮ってはいけません。普通に台湾をボコすぐらいの戦力は残っています。

またキューバ代表はかなり大きなアドバンテージを持っています。というのも、国内選手のみではありますが、KBOの教育リーグ(日本で言うところのフェニックスリーグ)にキューバ代表として参加する事が決定しているという点です。
野球の国際大会における事前の強化試合は精々2〜3試合という事が多いですが、これによって代表チームとしての実践経験は他の国より多くなり、間違いなくこの点は有利。
プレミア12は野球強豪国・キューバの復活の象徴となる大会になるのでしょうか。

おまけ:チェコ共和国代表🇨🇿

今回プレミア12の強化試合として日本と対戦するのは、今世界の野球に新たな風を吹かせているチェコ共和国です。
WBCでの印象的な戦い、欧州野球選手権の大成功、プラハ・ベースボールウィーク…と段階的な成長を遂げているチェコですが、今回はアジア遠征という形で、プラハでスイス代表との試合の後台北→名古屋と移動し、計6試合を戦います。
こうしてトップクラスのチームと強化試合が組めるのも、元を辿れば全てあのゲロ甘初球チェンジアップ被弾から生まれた物語。ありがとう朱権。

さてさて、チェコは今後の2026WBCや2028LAに向けた代表強化のプログラムを定期的に行っており、今回のアジア遠征もその一環。サトリアチェルベンカといった代表主力勢の参戦は勿論ですが、ゼレンカシンデルカといった若手有望株も選出。アメリカの独立や大学でプレーしていたエスカラパディサクも入り、WBCの時と匹敵する戦力を整えてきました。

注目選手はやはりフルプパディサクでしょう。
巨人に育成で入団したフルプは今フェニックスリーグでよりレベルの高い実践経験を積んでおり、元々高かったポテンシャルの選手がこの短期間でさらに成長すると考えると恐ろしい。支配下へのアピールとして台湾・日本戦では大暴れできるか。
パディサクはWBC中国戦に先発登板した投手で、出力に関してはチェコNo.1の92〜94mphを平均で出す事ができ、ドラフトリーグでも好成績を残しました。
おそらく投手陣の中では彼が1番NPBやMLBに近く、日本戦でも登板する可能性が高いです。スイスとの強化試合では第2戦目にバウアーと投げ合う事が予想されます。

そして今回のアジア遠征では、台北・名古屋の両球場チェコ側ベンチ裏にチェコ代表応援スペースを確保しています。完全アウェーの両球場で席を確保できたのは代表陣営のファインプレー。PBWでも見せてくれたような応援を披露してくれるのか、そもそも立ち応援はちゃんと許可されるのか

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