1978年 Valter Enlund

 順番が前後して申し訳ありません。資料の都合上、まずはこの方からご紹介します。1978年のMestaripelimanniは3名います。

 ※なお、本稿を始め、mestaripelimanniに関する記事は全て、Toim. Ilkka Kolehmainen. "Kokoelma Mestaripelimannit" Kauhavan Sanomalehti Oy, Kauhava 1992 (ISBN 951-9268-19-7)を参照しています。

 Valter Enlund、1912年、ラップヴェルトLapväärt教区で生まれました。お父様は農業を営んでおり、本人も農家を生業としていました。

 彼がヴァイオリンに興味を持ったのは7歳の時。よく家を訪れていたヴァイオリン奏者のシグフリッド・リリェーダールSigfrid Liljedahlとの出会いからでした。リリェーダールは、Valter少年の関心に気づき、楽器を買ってあげたそうです。

 練習に明け暮れた十代を過ごした後、結婚式にダンス音楽を提供するペリマンニ楽師として、早くから注目を浴びるようになります。3歳年上のパートナー、Torsten Pärusと共に数えきれないほどの式で演奏し、後にバンドを組むことになるArtur Nyholm、Selim Nyholm、Torsten Nyholm、Selim Kronman、Valter Kronmanの5人ともこの頃に出会いました。

 そして1930年代後半になり、Valterはダンス・オーケストラ「リオ・リタRio-Rita」を結成、20年に渡り活動していくことになります。

 オーケストラの活動は活発でしたが、時代の波が押し寄せます。

 1950年代に入ると、Valterたちペリマンニの音楽が段々「古臭い」ものになり、海外から入ってきた「新しい音楽」が結婚式で演奏されるようになると、徐々に活動は衰退、解散してしまいます。

 Valterは、それでも今まで自分が演奏してきた音楽を信じ、Torsten Pärus、Selim Kronmanと共に、トリオバンド「Pärus spelmanslag」を結成。50年代を3人で駆け抜けます。1958年にはフィンランド国内の民族音楽コンクールで優勝し、注目を浴びましたが、1963年にSelim Kronmanがスウェーデンに移住したのを機に解散することになりました。

 Selimが移住する一年前、1962年にValterは別のバンド、「Lappfjärds spelmanslag」を結成します。ValterとTorstenがフロントマンを務め、Larsa Lillhannusを加えた3人が中心となって活動を支えました。

 Selimの移住後、Lappfjärds spelmanslagの活動が本格化します。ValterとTorstenは特に馬が合ったのか、バンドはもちろん、デュオでも盛んに演奏活動を行っています。二人の演奏家としての名声は確固たるものになり、同時にフィンランドとスウェーデンの音楽文化の橋渡し役として、なくてはならない存在となったValter EnlundとTorsten Pärus。そして1978年、二人は同時にMestaripelimanniの称号を授与されました。

 その後も、1978年から80年にかけて、彼らはフィンランド・スウェーデン民俗音楽協会Finlands svenska folkmusikinstitutや学校でのコンサートを通じ、演奏活動を続けました。

 ValterとTorstenは一緒に演奏することが多かったため、ほぼ同じレパートリーを持っていました。1920年代から30年代の伝統的な結婚式で演奏されていた儀式のための音楽、結婚式のための音楽(結婚行進曲、祝歌、お酒の音楽)から、新しいダンス音楽(メヌエット、ポルスカ、ワルツ、ポルカ)にかけての幅広いレパートリーが、彼らの持ち味だったと言われています。

また、長年の間に、二人の間には役割分担が出来上がりました。デュオで演奏するときは、Valterがセカンドパートを、Torstenがメロディパートを演奏することが多かったそうです。

彼らの演奏は、以下の三つの録音で聴くことができます。

*Valter Enlundia voi kuulla seuraavilta äänitteiltä: Finlandssvensk folkmuik 2. Bröllop och Dans. Lappfjärds spelmanslag (LRLP 16)

*Hejsan grabbar! (SFLP 8513)
https://www.youtube.com/watch?v=A2mM8B3aT-0

*Bröllopsspelmännen Valter Enlund ja Torsten Pärus (FMI LP 6).

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