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ボードゲームの地図
重さバイアスを補正した修正BGGランキングで話題のDinesh Vatvani氏だが、その次作として、ボードゲームの地図を作成するという取り組みをされており、大変興味深いので紹介する。
和訳はこちら
ボードゲームの地図の作り方
Dinesh Vatvani氏の取り組みは次のとおり。
①BGGユーザーごとの個別のゲーム評価を収集し、ゲーム間の評価の相関を確認。この相関を、ゲーム間の何らかの類似性と解釈する。
(例)モノポリーを好む傾向のあるBGGユーザーは、リスクも好む傾向があるが、サイスは好まない。これをモノポリーはリスクと似ているが、サイスとは似ていないと解釈する。
②すべてのゲーム(152,628)と他のゲームの類似性をt-SNEを用いて二次元グラフでマッピングする。
T-SNEの解説は私の手に余るので省略する。ここでは、「地図」はBGGユーザーの好みの傾向を遠近で表現したものであるということが分かれば十分だろう。
成果物として作成されたのが次のページのダッシュボードである。読み込みに時間がかかるが、気長に待っていただきたい。
地図の使い方
ダッシュボードにはボードゲームが点でマッピングされている。縦横の軸に意味はなく、意味があるのは任意のゲーム(点)の間の距離だ。距離が近いほど好みの傾向が近いことを意味する。
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「Choose an option」にゲーム名を入力することで、マップ上の点にマーキングをすることができる。各点をマウスでポイントすると、ゲーム名とBGGの評価及び重さ、傾向の近いゲームを教えてくれる。
各クラスターのラベルはDinesh Vatvani氏が付したもの。
例えば、「テラフォーミングマーズ」、「サイス」、「ブラスバーミンガム」の位置をみると次のとおり。
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太枠円のうち左から「サイス」、「テラフォ」、「白ブラス」
BGGのFan Also Likeでも、「テラフォ」のページを見ると「サイス」や「白ブラス」は挙げられているが、地図を見ると「テラフォ」を好むBGGユーザーは「白ブラス」よりも「サイス」の方を好みやすく、更にはストーンマイヤー社のゲームも好みやすいという傾向が見てわかるようになっている。
ただし、この地図は、本来は552次元のグラフが必要なところ2次元に落とし込んでいるので、グラフ上の距離の遠近は厳密ではない。近い範囲を比較する場合には注意されたい。
同じページの下部で、ゲーム名を入力することで類似度の数値を確認することができる。例えば「テラフォ」で確認すると、地図では「サイス」が最も近いようだが、下図のとおり、最も似ているゲームは「サイス」ではなく、「ワイナリーの四季」である。
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「ボードゲーム地図」の意義
この「地図」の意義は次のようなところだろう。
「〇〇が好きなんだけど他にオススメのゲームないですか?」という問いにエビデンスをもって答えられる。BGGのFan Also Likeとはアルゴリズムが異なると思われ、併用しても参考になるだろう。
Dinesh Vatvani氏の主な問題意識だと思われるが、ボードゲームの分類について、好みの傾向の一致という観点を加える。これは、メカニクスやテーマといった整理では表現できない、(好みの差を生む)ゲームのコアの類似性を表しているかもしれない。
どんなラベルを付けてグループ分けをするか、有識者の意見を聞いてみたいところだ。
参考:BGGユーザーの分類
こちらの記事では、BGGユーザーが5つのグループに分類されている。2007年の分析だが、どのようなユーザー層が評価をつけているかということを知っておくと、BGGの評価を眺める際には有用だろう。
1 コアなユーロゲーマー
BGGユーザーの約半分。プエルトリコ、電力会社を好む。
2 ファミリーユーロゲーマー
BGGユーザーの約5分の1。カルカソンヌ、チケット・トゥ・ライドを好む。
3 複雑なユーロゲーマー
BGGユーザーの約8分の1。エルグランデ、蒸気の時代を好む。
4 アメリゲーマー
BGGユーザーの約10%。War of the RingやArkham Horrorを好む。
5 ウォーゲーマー
BGGユーザーの10%未満。ハンニバル:ローマ対カルタゴなどを好む。