9. 深部感覚なめてんとぶっ飛ばすぞ!
これまでは、姿勢を良くするために、筋肉や関節に着目したチェック方法やタイプ別運動などによる解決方法についてご紹介してきました。
9合目では “良い姿勢” に必要な感覚、特に深部感覚についてお伝えします。“姿勢” と “深部感覚” の関係を理解し、自分の感覚がしっかり働いているかセルフチェックする方法をお伝えします。
これまでとは少し違う視点でみる姿勢へ、Let’s マウンテン!!
はじめに
「1. 人類の姿勢を見直す」でお伝えしたように、
姿勢が良い状態とは、関節が最大に正しく動かせる状態
です。この “正しく” という点がとっても重要なのです。実は、人はそれぞれ歩き方や仕事中の格好などにより、関節の動かし方に癖が生じてきます。
この癖による誤差があるまま関節を動かしても、正しく動かせていないのです。そして、正しくない運動は関節に負担をかけてしまい、「8. “姿勢” と “関節疾患” の危険な関係」で紹介したような関節疾患に繋がってしまいます。
では、関節を “正しく動かせる” とはどういう状態なのでしょうか?
関節を動かすとき、筋肉は縮むこと(主動作筋の収縮)と緩むこと(拮抗筋の弛緩)が同じタイミングで(協調的に)起こる必要があります。おしゃマウが言う “正しい関節運動” は、この筋肉の収縮と弛緩が協調的に生じている状態を指します。
正しい関節運動 = 協調的な筋肉の収縮と弛緩
そして、この “正しい関節運動” は良い姿勢を “保つ” ことに重要な役割を果たします。
姿勢を “保つ” とは?
関節を自由自在に動かしたり止めたりできるというのは、いろいろな姿勢での静止状態や、立ち上がったり歩いたりする運動において、無意識に頭や腕や腰やあしの位置を正確に把握できている状態のことなのです。
関節は、頭や腕や腰やあしを繋いでいます。その関節を止めておく・動かす複数の筋肉が協調的に収縮・弛緩できると、静止状態では身体を安定でき、運動ではスムースに動けます。
静止状態で最も筋肉の収縮と弛緩が協調的に行えている姿勢は、解剖学的肢位(下図)と言われている姿勢です。
しかし、ほとんどの人は筋肉の収縮と弛緩を協調的に行えていません。理由は単純で、一部の筋肉を使った姿勢の方が楽ちんだからです。でも、楽ちんな癖をそもままにしておくと、だんだん Mindy さんや Wendy さんのようになっていきます。
“姿勢” と “深部感覚” の関係
例えば、椅子に座った状態を考えてみましょう。股関節はどん状態ですか?体に対して90度曲がった位置に大腿骨があります。筋肉を見てみると、腸腰筋は持続的に収縮し、骨盤が後ろに傾かないように働いています。同時に、大臀筋は弛緩し、少し伸びた状態です。
そして、ここからが重要な “深部感覚” の働きです。
筋肉が持続的に収縮していることや、筋肉が弛緩している状態を脳は常にモニターしています。センサー器官(筋紡錘や腱紡錘という感覚器)が、筋肉の伸び具合や腱の伸び具合を感知して、信号を脳へ伝えます。これが、“深部感覚” です。
“感覚” の中でイメージしやすいものとして、肌に触れた時に感じる仕組みがあります。これは、皮膚にあるセンサー器官が感知した触られたという信号が脳に伝えられ、我々は触られたと認識します(表在感覚)。“深部感覚” は、この筋肉版と考えるとイメージしやすいと思います。
この深部感覚により、関節の位置を正確に把握でき、関節を自由自在に動かしたり止めたりできるのです。
“深部感覚” が鈍る、悪い姿勢への負のスパイラル
深部感覚は、ずっと同じ姿勢でいると反応が悪くなり、正しい筋肉の長さが分からなくなってきます。すると、筋肉の収縮・弛緩バランスが悪くなり、関節を効率的に動かすことが下手になります。そして、パワーが出しやすい筋肉ばかりが使われ、正確性・効率性は失われていきます。
関節を正しくコントロールする主動作筋ではなく、パワーが出しやすい筋肉を使った運動を代償動作(トリックモーション)と言います。代償動作をしていても、いまの生活で困ることはありません。しかし、代償動作を長年続けると、関節を最大に正しく動かせなくなります。主動作筋ではない補助筋が過剰に頑張る過用や、本来は働かなくてよい筋肉が使われる誤用が生まれます。過用や誤用が続くと、痛みや骨への負担が増強していきます。
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ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。この深い内容までご理解いただけた方には、おしゃべりマウンテン特別山岳救助隊レンジャーとして認定したいくらいです(笑)
自分の “深部感覚” をチェック(部位別編)
やっとです。深部感覚が正常に働いているかをチェックしてみましょう!
■ 腕のチェック
1. 腕を左右に開きます
2. 腕をゆっくり動かして、目の前で両手の人差し指どうしを合わせます
徐々に速くしていきます。コントロールが難しくなってきましたか?今度は、速く動かしてから急激にゆっくりと動かしてみたりしましょう。
次は、目を閉じてやってみましょう。目を閉じると、自分の体の位置に意識を向けなくてはなりません。
目を閉じても正確に指どうしを合わせられれば、“深部感覚” がしっかりと働きながら関節を動かせていることになります。
■ 肩のチェック
1. 鏡の前で、目を閉じて、両腕を真横に水平に伸ばします
2. 目を開いて、鏡でイメージ通りの位置に伸ばせていたかチェックします
イメージ通りの角度でしたか?左右の差はありませんか?
■ 股関節と膝関節のチェック
1. 右足のかかとで、左足のひざを触ります
2. そこから、かかとをスネに沿わせて、足の甲まで動かします
3. 繰り返します
沿わせて動かした時に触れるところは、毎回同じですか?それとも少しずれますか?目を閉じても同じようにできますか?
自分の “深部感覚” をチェック(生活動作編)
■ ドアノブを持つ時
毎回ドアノブの全く同じところを掴めていますか?すっごく速く動かしてみても、同じところを掴めていますか?
■ 歩いている時
足の裏を床につく時、どこ部分からついていますか?毎回全く同じ部分からついていますか?
家の廊下を歩く時、毎回同じ部位からついて、さらに股関節も同じ大きさで曲げれていれば、たどり着ける歩数も同じになるはずです。
■ 自転車に乗る時
道路の白線の上をずっと進んでいくことができますか?(周りに十分気をつけてやってください)
まとめ
このように、日常のいろんな場面でも、正しく同じ動きができるかチェックできます。チェックしてみると、例えば、肩は100度までは正しく上げられるけど、それ以上は代償動作が生じている…など、自分の動きを理解できるようになります。
理解し、正しい動きを意識して生活していくと、徐々に関節が最大に正しく動かせるようになってきます。深部感覚は鍛えられます!さぁ、この記事を読んだ後は、Let’s マウンテン!
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現在地… 9合目だっちゃ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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