テアラロアを歩く
ニュージーランドを縦断するロングトレイル「Te Araroa(テアラロア)」のうち、南島の約1300kmを2ヶ月間かけて歩いてきた。海外のロングトレイルはもちろん、英語圏の国を訪れるのも初めてで、長期の海外旅行や国際線の飛行機に1人で乗ることさえも初めてだった。出発するまでにはワクワクする気持ちもあったけど、同時に不安もいっぱいだった。
ニュージーランドでの滞在期間は3ヶ月。有難いことに職場の上司からは「また戻ってきてね」と言っていただけたので、帰国後の仕事を心配する必要はなかった。
まだ海外旅行経験が乏しい私が、いきなり3ヶ月もニュージーランドに行くと周囲の人に話すと、ほとんどの人が驚いていた。何もかもが初めてだったけど、わたしはそれが楽しみだったし、なんならほんの少し苦労もしてみたかった気持ちがあった。
Te Araroaでは、太ももまである泥の中をひたすら歩いたり、1日に40回近くも渡渉しなければならない日もあった。川を渡りきれず流されそうになったり、ルートを見失いかけて焦って崖から滑り落ちたり、牛の寝床だと気づかずにテントを張り、ヒヤヒヤしたり…。
真っ黒に日焼けし、傷だらけになりながら2ヶ月間歩き続けた日々は厳しい時もあったけど、振り返るとどれも愛おしい思い出となった。
たくさん歩いたはずなのに、またどこか新しい場所を歩きたいという気持ちが再び湧いてくる。毎日山に囲まれて歩くなんて、どう考えても楽しいし幸せなことだ。
最近、ニュージーランドに行く前に勉強したノートを見つけた。心配しすぎて、あれこれ細かく書いてある。1年前の自分に「大丈夫!きっと何とかなる!」と伝えたくなった。私は何事も考えすぎる性格なので、ときには思い切って飛び込むことも必要だったのかもしれない。
グリーンブックという映画の中で、「寂しい時は自分から先に手を打たなきゃ」という大好きな台詞があるんだけど、吹替でなく英語だと
"You know ...the world's full of lonely afraid to make the frst move."
単純に訳せば「世界は最初の一歩を踏み出すのを恐れる孤独な人々で溢れている」って意味になるらしい。吹替版の翻訳も大好きだし、どちらの意味でも素敵な表現。自分のことみたいに思えてこの言葉がもっと好きになった。行く前はこの旅がどうなるかなんて分からなかったし、行きたいなと思ってから実行に移すまで3年もかかったけど、勇気を出してニュージーランドに行ってテアラロアを歩くことが出来て本当に良かったと思っている。
長くなったけど、旅の記録として、そしてこれからTe Araroaを歩く人に役立ててもらえるよう、日記を書き残しておきたいと思う。