旅の効用

旅に出た。とても久しぶりの旅に。場所は福島県の南会津。

雪深い南会津の山奥にひっそりとたたずむタンボ・ロッジ。そこで2泊3日、のんびりと過ごした。

寒さをまったく感じさせない重厚なつくりのタンボ・ロッジは、なんとオーナーご夫婦の手作りと聞いて驚きだ。2年がかりで完成させ、かれこれ25年が経つという。建物だけではない、テーブルやベッドなどの家具までもが手作りだという。

ご飯もぜんぶ手作り。動物性の食材は一切使わないヴィーガンのペルー料理で、これがどれも美味しい。

ヴィーガンについてgoo辞書にはこう書いてある。

菜食主義者のうち、畜肉・鶏肉・魚介類などの肉類に加え、卵や乳・チーズ・ラードなど動物由来の食品を一切とらない人。

スクランブルエッグに見えても卵は不使用だし、デザートのケーキもバターは使っていないという徹底ぶり。

お客さんのほとんどがリピーターで、それもそうだと頷ける。ご夫婦のやさしいお人柄に、たとえどんな人であろうとも心癒されてしまうに違いない。

あたたかな部屋に、まぶしい雪景色。おいしいご飯に、ご夫婦の笑顔。幸い晴天にも恵まれて、穏やかで楽しい旅になった。

南会津から帰ってきてから、なんだか調子が良い。

たった数時間の移動で、こんなにも気持ちがリセットされる。そのことをすっかり忘れていた。普段の生活から別次元に連れて行ってくれ、生まれたての赤ちゃんのような、健やかな心に戻してくれる。

今の自分の枠をとっぱらい、新鮮な景色がどこまでどこまでも広がる。あたらしい朝、あたらしい夜。聞いたことのない世界の音、声。

旅にはきっと、そんな効用がある。

チェックアウトの後なのに、オーナーご夫婦が「いってらっしゃい」と手を振って送り出してくれた。おもわず「いってきます！」とこたえてタンボ・ロッジを後にした。

また来ますね。