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10人の反抗の“オノマトペ”

ONE LOVE ONE HEART 主演舞台
「オノマトペ vol.2」

初めての舞台観劇でとにかく泣いた!辛かった!
見終わってすぐは言語化出来なかったけれど、アルバムのA盤買って沢山見て、少しずつ書き足していった感想です👍🏻


あらすじ

コロナ禍で無くなった学校行事、
大人の都合に振り回され、
思い通りに行かない中学校生活、
そして部活動廃止の噂が本当になった時
緒方空人は“反大人デモ”を企画する。
賛同した9人を含める10人 それぞれの苦悩、怒り、悲哀、未来への絶望が混じりあった先に見つけた
答えは。


「あなたの存在ってどうやって決められますか?
 あなたを支えるものって何ですか?
 それって本当に支えですか、依存ですか?」

そんな言葉を問いかけてくるような舞台だった。
私という存在、崇拝対象の存在、自分の指針、周囲の目、ゲームへの依存、死にたい願望。
自分の心の支えって何だろうな〜

舞台全体の感想、というと難しいので10人の登場人物の紹介と一緒に話していこうと思います🙆🏻‍♀️


藤咲碧羽 as 来栖真央  (写真右下 グレーの服)
⋯ 舞台の主人公。LGBTQの“Q”=クエスチョニングであることに悩み、答えを求め続けている。あることをきっかけにゲームにのめり込み、オンライン上の友達を心の支えとするようになる。現実世界の自分とゲーム上での自分の乖離がより広くなり、希死念慮を抱くようになる。

碧羽ちゃんはスカウトされてすぐこのラブワンになった、から お芝居ってどうなんだろう⋯?と思っていたけれど 堂々の主役。
siriに「質問を質問で返すな!Please Answer!」と怒り叫ぶシーン、「死ねると思ったのに。逃しちゃったじゃん!」と泣き叫ぶシーン、どれも心が持っていかれそうになる。
声が裏返りながらも感情込めて言葉を伝えた後、その感情のまま 劇場に安定した美声を響かせる碧羽ちゃんは貫禄すらあった。喜怒哀楽の表現の仕方、答えが見えない苦悩、いつもの碧羽ちゃんとは違った笑顔、全てが来栖真央ちゃんで、「助けてくれ」と思うほど辛かった。
真央ちゃんはアウティングにも苦しんでいたけれどそれよりも前に「皆と同じではない」ということに悩んでいたと思う。
佐倉湊くんにも通ずるけれど “名前=存在”であって
男(女性が恋愛対象) / 女(男性が恋愛対象) に当てはまらないから悩むというのは 単に知識の欠如かな〜と思ってしまった。
中学生 故だろうな、一緒に辛くなった


佐々木杏莉 as 斎藤彩音  (写真右上 黄色の服)
⋯ 真央の小さい頃からの親友。青井樹に好意を持っていたが、樹が真央に告白したことから真央とも疎遠になる。これは裏切りだと真央の悪口を裏垢に書き、真央は不登校に。両親が弁護士で、自身も将来弁護士にならなければいけないことに反抗してみたり、諦めていたり。

恋多き女の子な感じが上手く出ていたし、樹が真央に告白するシーンでの立ち振る舞いはとても自然で、辛かった。すぐに裏垢に真央の悪口を書くシーンでは中学生の危うさというか、ネット社会に頼っている彩音の行動の軽薄さがよく出ていた。真央に対して「私より絶望してる子がいれば楽だから」と思っているのは あったな〜と思ってしまった、あったよ中学生の時、そういうの、引き立て役的なポジション。
「そうやって真央は1人で幸せを見つけてわたしを置いていくんだね」と最後につぶやくシーンでは、両親がひいたレールに結局は反抗できない辛さを感じた。


相原一心 as 青井樹  (真ん中上 緑のパーカー)
⋯ いつも気だるそうに過ごしている。来栖真央に告白するが、実は恋愛感情は無く、「僕と似ている気がするから」という理由だった。前から死にたいと思っていて、デモが失敗すれば、真央と共に死のうと思っている。

1番喜怒哀楽が表現しにくい役だと思った。クラスメイトが大人に反抗しようとする態度にはふわふわと躱し、部活動廃止の報告には「でもしょうがないじゃん」と微笑む。1番大人に近い子なのかなと思っていたが、1番人生に絶望していた。
何をしてもワクワクしない、死にたい、ならみんなで死のうか。と、これまた微笑む姿には恐怖すら感じる。儚さが相原一心くんの表現や立ち姿からも感じ取れた。
この10人、言動全てが本気なんだよね〜だからこそ 待って!と思いながら見てた
結局は、自分の人生に期待しているんだ、と死ぬことを辞める。改めて考えればあの気持ちは衝動的なものだったのだ、と察するのは大人への着実なステップだと思った。どこか悲しい。
↑大人への着実なステップ?それとも恐怖に直面してただ怯えた?


笹原遼雅 as 村川遼 (真ん中下 右色のカーディガン)
⋯ 学校では一言も話さないことで、いじめ対象者とされた。正体不明ティックトッカーとして若者に人気であるが、誰にも明かしていない。匿名で真央のゲーム友達として真央の人生に大きく関わっていくことになる。真央が本当に樹と共に自殺するのではないかと懸念している。

最初は、他人の人生なんて関係ない、僕は僕の心の拠り所があるんだ、と思っているような内気な少年だと思っていた。物語が進むにつれて、真央や神崎真奈美の人生に大きく関わるし、デモ活動の作曲もすると立候補するのは、心の拠り所が見つかったからだと思う。光を闇、闇を光だと思っていた遼くんがマザファッカーMRとして歌詞を書く時は「服従ではなく反抗」を言葉にしていた。無口で周りを拒絶しているようでマジョリティーに対抗したいと思う気持ちがあったことに驚く。また、人一倍優しく、真央の将来を本気で心配していた、報われて欲しいじゃなくて、なんと言えばいいか分からないけれどとにかく優しかった。
独りだ、誰も共感してくれない、と思ってもそこから行動に移せる遼くんは本当に強い。 自分のために行動できるのも強さ、他人を本気で心配して行動できるのも強さ、人に頼れるのも強さ。
あと「栄養っていうより脳を一時的に騙している薬物、の方がしっくりきます」というセリフ、何度も咀嚼して考えている。 全てにおいて当てはまる気がして。表情が良すぎるからみんなも見て欲しい


洸瑛 as 佐倉湊 (真ん中 白のベスト)
⋯ 宗教二世という立ち位置に苦しめられている。母親が宗教勧誘するため、周りにも信仰が知れ渡り、いじめられている。弱気な性格。

“救われる” と謳い文句を並べながら、宗教二世はこうして苦しめられている、そんな現状がひしひしと伝わってきてとても苦しかった。
「ねえ神様!名前があるなら存在しているんでしょ!?」と、見えない崇拝対象に縋り救われたいという気持ちも、母親から自立して自分で物事を決めていきたいと思う気持ちも、共感だらけで湊くんのセリフひとつひとつを噛み締めるように聞いていた。洸瑛くんの優しい表情、潰されそうな表情、全てが心を締め付けた。
真央「暴力の対処方法ってなんとお考えですか!?ただ耐え忍ぶしかないんですかね?」
神崎「自殺じゃない?」
湊「自殺じゃない?__いや!耐えて耐えて耐え忍ぶしかないんだ。」
という独り言も辛かった。
ずっと、同級生からのいじめと、宗教への義務感と、母親からのプレッシャーと、崇拝対象への半信半疑の気持ちに潰されながら生きる湊くんがずっと自己暗示してきたことなんだなと思った。
「ごめんなさい」が口癖のように使われているの辛かったな〜
母親に反抗して宗教から縁を絶つことだって出来るはずなのに、「僕、もうちょっと見守ってみるよ。宗教ありきのお母さん、そのお母さんありきの僕だから。」と言うのは決して弱気なんかではなく、湊くんの優しさでもあるし、母親にさえ愛されなくなると思ったんだろうな。
学校に居場所なんてないのに、母親の信仰まで否定したら誰からも愛されなくなって、居場所がまた1つ無くなるんだと思ったら耐えるしかないよね〜😭
湊くんが周りに気遣ったり寄り添うシーンはあっても、湊くんに味方がいる描写が全く無くて、この先のこと考えてもっと辛くなっちゃった、味方が絶対にいるよ;;
いや〜本当に序盤も序盤で 蓮くんから大声で責められて泣いた、普通に震えた。何も悪くないのにごめんなさいと思った、辞めれるならとっくに辞めてるよ とも思った。


咲太朗 as 緒方空人 (写真左上 赤色のベスト)
⋯ 生徒会長。大人への反抗を過去にも企むが全て失敗に終わっている。“反大人デモ”の首謀者。冒頭では自暴自棄になっているが、頭が良く、リーダーとして活動していくようになる。「ルール」ということに1層濃く嫌悪感を持っている。1度デモが失敗した後も卒業式でのデモを企画する。

咲太朗くんが最年長で19歳。(舞台当時です)全く違和感なく見ることができた。生徒会長としての正義感をどんどんと履き違えていく過程が、見ていて楽しくもあり、怖かった。「勝手に抜けることは許さない。だって俺がここのルールだから。」というシーンでは
こちらもハッとさせられた。
頭がいい故に磯山柚の葛藤にも気づき牽制するような発言をする。終盤になっていくにつれて言葉一つ一つが怖いんだよな〜、権力での支配は長く続かないことを体現しているようなリーダーで怖かった。


久昌歩夢 as 峯田蓮 (左 ピンクのTシャツ)
⋯ 芽衣と付き合っている。怒りっぽい性格で、部活動廃止に反抗し署名活動に参加するが、思い通りに行かず怒りを生徒会、社会にぶつけている。 芽衣がステータスの為に自分と付き合っていることを察し、怒りの矛先が芽衣に向かうこともある。

1番驚くのは久昌歩夢くんの声量。最初のセリフ、立ち振る舞いから“根っからのいじめっ子”。怒りっぽい性格だから声を張り上げるセリフが多く、それに煽動され、また誰かが声を張り上げる。まとまらない複雑な心情が良く伝わるシーンでの主役というか
見せ場だったと思う。「お前の母ちゃん 勧誘に来た時もっとラリってたぞ!ほらもっと!神様お願いしますって言えよ!」と佐倉湊に叫ぶシーンではこちらまで責められているようで苦しくなる。
中学生3年生と思えないスタイリッシュさと目つきの怖さ⋯笑  LIVEシーンでもアクセントを付け加えてくれるようで表現力すごかった。
「反抗したかっただけっぽい」というセリフ、めちゃくちゃわかる〜


矢嶋由菜 as 矢田芽衣  (右上 ピンクの服)
⋯ 峯田蓮と付き合っているが、自身のステータスの為に付き合っている。親友という友達も上辺だけで “友達”にコンプレックスを持っている。蓮が署名活動などに必死なことに嫌悪感を抱いていてる。

蓮との姿は樹と彩音のようなよそよそしさはないものの、どこかチグハグな恋愛感情が見えたし、ステータス、外見、マウントを気にしながら生きる芽衣の焦りが表情によく出ていた。いじめ対象者に声をかけるシーン、殺人犯の娘となった神崎真奈美に声をかけるシーン、声を発さなくても伝わる恐怖と邪魔者を排斥しようとする威圧感。LIVEシーンでは由菜ちゃん かわいい!しかなかったんですけど⋯⋯(そのくらい豹変ぶりが凄い)


飯塚瑠乃 as 磯山柚 (右下 白のベスト)
⋯ 推薦枠に執着していて、いじめ撲滅特攻委員として意気揚々といじめ対象者に話しかけるが案の定相手にされない。デモを実行中 先生にリークし、デモは失敗に終わる。

役になりきっているというより全く違う人物。最初の「チャイム鳴ってますよ!」と皆を諭すセリフから一瞬で“磯山柚”の性格や対人関係が感じ取れた。
よくある勉強の出来る優等生ではなく、「何をしても上手く行かない、勉強も出来ない、だから特攻委員は推薦枠を勝ち取る絶好のチャンスなの」という狂気ととれるセリフがあるのも脚本に一癖あって面白い。いじめ対象者に「私がはけ口になってあげるって言ってるの!」と にこやかに話しかけるところも相手の気持ちを考えずに推薦枠に執着している姿が分かる。デモに賛同したのは元から先生にリークしようとしていたためか。それとも別の理由があったのか。1度観劇しただけでは10人全員の背景が上手く掴めないため何回でも見たいと思えた。


イーチ as 神崎真奈美 (右 黒のセーター)
⋯ 父親からの虐待の痕を隠すため年中長袖を着ている。夏休み、母親が父親を殺し“殺人犯の娘”となりいじめがエスカレートする。真央の一言により、真央に好意を抱くようになり、ゲーム内でも匿名で、友達になり真央の心の拠り所になっていく。

真央に「なんて言うか、!お母さんすごいね、」と言われたときから真央への態度、気持ちが変化していくのは見ていてドキドキするし シリアスな雰囲気が続くなか、 劇中歌 “You&Me” は可愛らしくてほっこりする。
遼と共に真央を心配するシーン、真央が自殺してしまうかもしれない、それなら24時間ずっとゲームをして真央と繋がっていたい 現実なんて見なくていい
そんな気持ちがひしひしと伝わってきて辛い。
ゲームのボイスチャットで真央が「神崎さんと村川くんって人と一緒のチームなんだけど まじ気まずいの!」と笑うところではいたたまれない気持ちになった。真央の心の拠り所だからこそ、こんなに心の内を開いて愚痴を言ってくれるんだろうから責められないし、というか真央のこと大切だし、でも自分のことそんな風に思ってるのか、と思ったり⋯
真央を中心に色んな感情がグルグルする。
最後のシーン、真央に救ってもらったように真奈美が真央を闇から引っ張り出す存在になっているのがとても素敵だった。


登場人物はONE LOVE ONE HEARTの10人のみ。
大人たちは ミサイルの音や爆発音で表現し、子供たちの将来を呆気なく破滅する、太刀打ち出来ない存在だと暗示させる。
中学生と、怒りの捌け口となるSNS、ゲーム、周りをシャットアウトするヘッドホン。デジタル社会との癒着が怖い。
Siriの音声や冒頭の卒業式のシーン、いじめ対象者への声掛けのシーン、10人 声を揃えてものを言うところはどこか機械的で、大人から強制的に言わされている雰囲気が伝わる。


「あなたの存在ってどうやって決められますか?
 あなたを支えるものって何ですか?
 それって本当に支えですか、依存ですか?」


15歳の彼らなら。
コミュニティが家族と学校の2つしかない、
乃至SNSを含めた3つしかない彼らなら。

家族に虐待を受ける、学校でいじめられる、支えだった友達がいなくなる、自分を裏切る、これまでの努力が無駄になる、毎日が窮屈な学校生活

存在を証明してくれるコミュニティがひとつひとつ自分を否定していき、自分がたくさん苦しんで悩んだ末の答えや意見が、伝えた瞬間「ギャーギャーうるさい」と、単調なオノマトペに変わる
彼らに感情移入していくと、とても苦しくなった


10人の歌声、パフォーマンスにも圧倒され、
本当にいつまでも覚えておきたい素敵な経験でした。



何回でも生で見たい!!

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