# 女性を守るという大義は、障害者差別を正当化するか vol.2 何があったか_前半
「女性を守るため」という大義のためであれば、障害者差別を扇動することが正当化されるでしょうか。
もちろんそんなことが許されるはずがありません。
女性差別をなくすという目的のために連帯した男性たちが、精神疾患を持つある男性(以下 A氏)を危険人物であるかのように印象づけて、接近・接触の注意喚起を促す文章を不特定多数の人に向けて拡散する、という事件についての検証、今回は第二弾です。
この事件の初めからざっくりと何が起こったのかを見ていきます。
よかったらこの問題を一緒に考えてください。
まだの人は前の記事からお読みいただくと、この事件の問題点がわかります。
## イベントの内容
映画『月光』オンライン上映と、性差別や性暴力の問題に取り組む活動や発信をしている人たちによるトークイベントになる予定でした。
### イベント主催者
#AgainstSexismProject
https://www.againstsexismproject.org/
(魚拓 https://megalodon.jp/2020-0925-0010-40/https://www.againstsexismproject.org:443/ )
メンバー
- A氏
- [くぼゆうすけ](https://twitter.com/yskkun)
- [Sohei Mukoyama](https://twitter.com/MukoyamaSohei)
- [涅槃の今日一](https://twitter.com/iitaikoto1u)
- [くまくま](https://twitter.com/kyorokuma)
- [まけまた](https://twitter.com/katsumatashoot)
- [Ryuichi 'Risto' Miyazaki](https://twitter.com/Risto_suomi)
- [モバイルプリンス](https://twitter.com/mobileprince_PR)
- ほか
### イベント日時・詳細
映画『月光』オンライン上映会・トークイベント
2020年 9月26日・27日
映画『月光』
監督・脚本・編集: 小澤雅人
http://gekko-movie.com/
<ストーリー>
> ひとりで細々とピアノ教室を営むカオリ。ある夜、教室主催の発表会の帰りに彼女は教え子の一人であるユウの父親トシオから性的暴行を受ける。この事件は彼女の心身を傷つけただけでなく、過去の忌まわしい記憶まで呼び覚ましたのだった。一方ユウもまた父親からの性的虐待にさらされていた。自らの被害を誰にも打ち明けられず、深い孤独の底で苦しむカオリとユウ。再び出会った2人は運命に導かれるように痛みを共有していく。そして、カオリはユウの願いを叶えるため、ある決断をするのだった――。
参考:
> [性暴力を描いた映画『月光』、男性監督が作品に込めた思いとは (治部れんげ)](https://news.yahoo.co.jp/byline/jiburenge/20160508-00057435/)
> [「性犯罪者は死刑に」極論だけでは何も変わらない 映画『月光』が促す議論(小川たまか)](https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20160520-00057891/)
トークイベント
テーマ「性暴力の実態/なくすためには」
司会
- A
- 津田大介
登壇者
- 小澤雅人
- 伊藤詩織
- 石川優実
- 東小雪
- 山本和奈
- 浜田敬子
- 小川たまか
など
## 9月某日 イベント告知
A氏のツイッターや#AgainstSexismProjectのサイトなどでイベントが告知されました。
司会の津田大介氏や登壇予定者などもA氏の告知ツイートを拡散し、注目が集まります。
## 9月16日 突然のイベント中止
イベント開催予定日の10日前にあたる9月16日、突然のイベントの延期発表が、主催者の一人であるA氏から出されました。
「上智大学エンパワーメントサークルSpeak Up Sophia @SpeakUpSophia」のツイートで、ぼくはこの件を知りました。
このイベントを楽しみにしていたひとりであるぼくも、この時点でA氏に問い合わせをしています。
## 9月19日 関係者の公開批判開始
登壇者の一人であった石川優実氏が、主催者サイドの対応の悪さに疑問と不満のツイートをします。
このツイートを重く見たのか、主催者メンバーが表立って動き出します。
A氏がイベントと無関係のツイートをしたため、主催者メンバーの怒りに火がつきました。
この人たちも主催者サイドのはずなのに、A氏ひとりに責任を押し付けて公開処刑しているような印象を受けます。なぜリプライではなく引用リツイートなのか。
## 9月20日 DM公開
登壇予定者である石川優実氏とA氏の間で交わされたダイレクトメッセージが、主催者の一人であるくぼゆうすけ氏から公開されます。
連続6ツイート、計22枚のスクショ画像でした。
後半には口調が強くなり、石川優実氏を攻撃的に批判します。
A氏の発言内容をざっくり要約します。
- 映画上映取りやめの告知
- トークイベントを伊藤詩織氏と石川優実氏の著書を題材にしたブックトークにすることの提案
- 他の登壇予定者とコミュニケーション状況
- 石川優実氏への批判
- など
ダイレクトメッセージの公開が石川優実氏からの依頼であることがわかります。
フェミニスト女性に「初めまして」と話しかけることを危険だとして、拡散と注意喚起をフォロワーに依頼しています。
## 9月20日 A氏 病名公表
厳しい批判にさらされたA氏は、自身の病名をツイッターで公表します。
- 双極性障害という持病が原因であること
- 石川優実氏にDMを送った記憶を失っていること
- 自分の加害性に向き合うこと
- 石川優実氏に謝罪すること
を述べています。
これ以上批判を続けることは人道的に許されません。
### 双極性障害について
A氏が双極性障害であることは、A氏の言動と責任を考える上で重要だと思います。
事件の経緯から離れますが、双極性障害について説明します。
厚労省ウェブサイトの『精神障害(精神疾患)の特性(代表例)』のページから引用します。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/e-learning/seishin/characteristic.html
> 主な特性
> 気分の波が主な症状として表れる病気。うつ状態のみを認める時はうつ病と呼び、うつ状態と躁状態を繰り返す場合には、双極性障害(躁うつ病)と呼ぶ。
> うつ状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状がでる。
> 躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする。その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でもできると思い込んで人の話を聞かなくなったりする。
> 配慮のポイント
> 専門家の診察の上で、家族や本人、周囲の人が病気について理解する。
> 薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する。
> うつ状態の時は無理をさせず、しっかりと休養をとれるよう配慮する。
> 躁状態の時は、金銭の管理、安全の管理などに気を付け、対応が難しい時には専門家に相談する。
> 自分を傷つけてしまったり、自殺に至ったりすることもあるため、自殺などを疑わせるような言動があった場合には、本人の安全に配慮した上で、速やかに専門家に相談するよう本人や家族等に促す。
つづいて、貝谷久宣氏が監修された『よくわかる双極性障害(躁うつ病)』から引用します。
> 双極性障害は、「躁」状態と「うつ」状態とが繰り返しあらわれる病気です。
> 躁状態になると、気が大きくなって自信に満ちあふれ、陽気になりよくしゃべる、次々と新しい計画を立てる、気前が良くなる、そしてときに無茶なことをする、といったことが起こります。
> 一方、うつ状態になると、心のエネルギーを失い、楽しいことがなく、気分が沈み込み、意欲がわかず、抑うつ感に悩まされます。
> このような両極端な状態に気分が揺れ動き、自分ではコントロールできないのが双極性障害で、もともとは「躁うつ病」と呼ばれていました。
> 双極性障害は、大変複雑な病気で、症状のあらわれ方はさまざまです。
> 12p
A氏の「暴言」や無理のある計画は、双極性障害の症状の影響だと推測されます。
> 双極性障害は脳の病気です。
> 脳になんらかの変化が起こり、調子をくずしていると考えられるのです。では、脳のどこの具合が悪いのでしょう。
> このところ脳の研究が進み、双極性障害についても少しずつわかってきています。
> 一つは、神経細胞の減少です。
> 海馬の「介在ニューロン」という抑制性の神経細胞が、双極性障害の患者さんの脳では4割ほど少なくなっていることが、米国の研究グループによって報告されています。
> また、神経細胞のカルシウム濃度が高くなり、細胞死をまねきやすくなっていることもわかってきました。
> 59p
本人の性格や考え方とは関係がなく、脳の病気であることが重要です。治療は薬物療法が中心です。
また、双極性障害は鬱病と比較して自殺リスクが約2倍にもなる病気であることにも社会的認知と理解が必要です。
『双極性障害とうつ病で自殺リスクにどの程度の差があるか|医師向け医療ニュースはケアネット』
https://www.carenet.com/news/prognosis/carenet/37817
> 18ヵ月の間に自殺企図をした患者は、BD(双極性障害)が19.9%、MDD(大うつ病性障害)が9.5%であった。
## 主催者メンバーによるA氏への苛烈な批判
A氏が事情説明として病名を公表したにもかかわらず、主催者メンバーは批判をさらに強めていきます。
カウンセラーに相談するよう促していることをみても、主催者メンバーが双極性障害に理解があるとは思えません。
双極性障害を持つ人が他にもいると安易な相対化をし、警察や法的手段をちらつかせます。A氏は何の罪に抵触しているのでしょうか。
関係のない野次馬までもがよってきて公開リンチがはじまりかけていたので、部外者は静観するようをよびかけました。
呼びかけの甲斐なく、A氏は多くの批判と揶揄に晒されました。
## 次回予告
この夜、くぼゆうすけ氏とモバイルプリンス氏ら主催者と、登壇予定者だった石川優実氏はツイキャス配信を行います。
酒を飲みながらの欠席裁判が行なわれました。
A氏もこのツイキャスを見たのか、配信終了1時間後に希死念慮を思わせるツイートをします。
長くなってきたので、続きは次回に書きます。
次回はツイキャスでどんなことが話されていたのか、障害者差別扇動の「注意喚起文」がだされた前後の動きなどを書く予定です。
※ この件に関係するみなさまにおかれましては、関連するツイートを削除されませんように。すでにスクショで保全してあります。
もし間違いがあったと気づかれたら、あったことをなかったことにするのではなく真摯に謝罪されることをおすすめします。
## 有料部分について
荒らしコメントをさけるために有料記事にしていますが、有料部分にはなにもありません。金を払ってでもひとこと言いたい人はどうぞ。
この記事に売上があった場合は、同額を上乗せして、11月初旬ごろを目処にぼくとは無関係の反差別系団体に寄付します。その際は有料部分に入出金の明細画像を貼ります。
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ありがとうございます。
2020-11-10 非公開部分に寄付の報告について追記
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