何のためにここに来たの?
この仕事を続けて10年以上経つ。
四半世紀分のお酒は飲んでいるだろうし(体感)
四半世紀分の見たくないもの、知りたくないものも
味わってきたと思う。(体感)
長くお付き合いした婚約者もいた。
そのタイミングで仕事を辞めようとしたが
婚約破棄になり、後先のことなど考えずに
がむしゃらに走り続けてきた。
何度もこの仕事を辞めようと思った。
私は元々この業界でやっていくには
向いていない性格だったので
芽が出るのも遅かったし、
上手くいってる時、いかない時の
気持ちの波も大きかった。
そして先月、何年かぶりに求人サイトを見た。
接客は向いていると思うので
徐に都内の飲食店の求人に目を通す。
今まで何があっても今の仕事に食らいついてきたが
いざ別の仕事を探してみると
少しだけ気持ちが楽になった気がした。
私にはまだ選択肢があるのだ。
私の居場所はここしかないと思っていたから。
自分の視野の狭さを改めて知る。
しばらく探してみると
良さげな料亭を見つけた。
家からもさほど遠くないし
こじんまりした感じの素敵なお店。
ここで驚いたのが
今の時代ボタンひとつで応募ができるということ。
履歴書いらんの?
何せ最後に履歴書を書いたのは高校生の時。
早速必要事項を入力して
いざ応募のボタンを押そうとする。
『このままでいいの?』
『このまま終わっていいの?』
『何のためにここに来たの?』
いつもこういう時に頭をよぎる
もう1人の私の声。
私もう十分頑張ったよ。
疲れちゃったの。
もう色々限界なんだよ。
『あなたはたくさんのひとに愛されてるよ。 』
『忘れないで。』
毎日泣きながらお店から帰ったこと
空回りし続けて従業員の手をとにかく煩わせたこと
教えてもらったことを全てやったこと
イベントを成功させて社長から初めて褒めてもらったこと
お店から認めてもらえたこと
トップ争いに負けた私を
何も言わず店長が抱きしめてくれたこと
上手くいかなくて何回病んでも
必ず向き合ってくれたこと
最後には必ず「みめさんなら必ずまた上がれる」と
言い続けてくれたこと
諦めたわけじゃない。
この12年、ただ泥水啜ってきたわけじゃない。
たくさんの人に支えてもらって
たくさん愛されて
ここまで来られたんだ。
このままじゃ終われない。
だって最後を綺麗に終わらせるために
ここへ来たんだから。
私はそっとブラウザを閉じた。
私にはまだ選択肢があるということ。
これを知れただけでも少しは気持ちが晴れた。
結果今日もフロアに立つ。
『あなたは何のためにここに来たの?』
みめ
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