見出し画像

【MtG】続・食肉鉤虐殺事件は本当に駄作なのか?

コストが倍!恐怖も倍!

『ダスクモーン:恐怖の館』にて、《続・食肉鉤虐殺事件/Meathook Massacre II》が「スタンダードで猛威を振るった《食肉鉤虐殺事件/The Meathook Massacre》が帰ってくる!」「コストが倍!恐怖も倍!」というキャッチコピーで公開された(されていない)。

公式カードギャラリーより。
https://magic.wizards.com/ja/products/duskmourn-house-of-horror/card-image-gallery

《食肉鉤虐殺事件/The Meathook Massacre》の露骨に『悪魔のいけにえ』(Texas Chainsaw Massacre)を意識した英名を取り上げ、さらに映画の続編あるあるの「前作と似ているようでかなり違う」という所まで律儀に再現している。
フレーバーの大勝利っぷりは首席デザイナーのマーク・ローズウォーター氏から「開発段階のカード名が満場一致で正式採用された」という証言にも表れている。

下馬評は「重い」「ロマンカード」「禁止カードの名前負け」といった具合で芳しくない。ただでさえ本体コストの支払いが重いのに、初代《食肉鉤虐殺事件》のように除去に使うには追加コストを支払わなければならず、しかも2マナにつき、相手に選択権のある布告除去を1回。

しかし、『悪魔のいけにえ2』(Texas Chainsaw Massacre 2)は「初代と作風が違いすぎるだけでこれはこれで良作」と評価されることもある。
続・食肉鉤虐殺事件は悪魔のいけにえ2になりえるのか、筆者は「大いに有り得る」と答えたい。

「添加的散漫」

重要なのはXマナ呪文はX=0にすることもできるという事である。一般的に、Xマナ支払いはX点火力やパワーとタフネスがX/Xのクリーチャー(ハイドラ)といったカードについているためあまり意味がないが、続・食肉鉤虐殺事件はXXの支払いに関する能力を無視しても機能する。

つまり筆者が言いたいのは、X能力に目がくらんで、このカードがコスト相応かそれ以上の機能を発揮するラインを見誤っているのである。

こういった現象を、首席デザイナーのマーク・ローズウォーターは自らのコラムで「添加的散漫」と呼んでいる。
(下記事内(『ゲートウォッチの誓い』で、自分とチームメイトに影響する《栄光の頌歌》のような効果は検討しましたか?)など)

真の姿

では、実際に4マナで使用した際に残る部分だけ残して見てみよう。

筆者作成のモックアップ。

こうすることで、読者諸兄が使うであろう真の姿が見えてくる。

ライフコストこそあれど、自軍クリーチャーが一度の死亡では盤面から消えなくなり、さらに相手はクリーチャーが死亡する度にコントロール奪取かライフ3点を払うかの苦渋の決断を迫られる(まあだいたいライフなのだが)。

相手は除去をためらい始め、チャンプブロックでもライフや盤面の不利は免れられない。さらに、黒お得意の除去呪文が、盤面をこじ開けるだけでなく、相手のライフを削ったり、自軍の盤面の増強にもなる。
相手は残り3点、攻撃を通したいが相手のクリーチャーの数が邪魔で通せない。そして、自分の手札に除去は1枚。ここで続・食肉鉤虐殺事件があれば、これまで通らなかったリーサルを通せるようになるかもしれない。

そして、戦局を変えうるこの一枚に、マナが余った時のおまけがついてくる。盤面の強度を上げながら、確実に3点のライフを削ることができる。

トークンが主軸だったり、クリーチャーを使わないデッキ相手には強度は落ちるが、強力なクリーチャーを維持しやすくなる点でまだ使い所はあるだろう。

採用される構築

マナコストの黒の数から、使用する場合は基本的に黒単となる。
そして、スタンダードやパイオニアの黒単で維持したいクリーチャーといえば《黙示録、シェオルドレッド》である。

《包囲サイ》譲りの4マナ4/5に接死がつき、お互いがドローするだけでライフに差がつくという圧倒的な性能でスタンダードに黙示録アポカリプスを起こした黒環境の立役者である。
ハンデスやシェオルドレッドで固まった盤面に続・食肉鉤虐殺事件が並べば、シェオルドレッドが盤面から消えにくくなり、双方で大きくライフ差をつけることができる。

これ以外にも、黒の主力には《大洞窟のコウモリ》や《最深の裏切り、アクロゾズ》のように出た時の能力が優秀なものや、維持するだけでお得なクリーチャーが揃っている。試してみる価値はあるだろう。

こうして盤面が固まり、自分のマナが余った時、ようやくX点支払い能力の出番が来る。そして、戦場に出たときの能力なので、2枚目を引いても腐りにくいのである。

まとめ

いかがだっただろうか。
《続・食肉鉤虐殺事件》は初代の代わりにはなり得ないことは間違いない。しかし、そのコストの濃さと重すぎるXマナ支払い、そしてそのカード名そのものに惑わされず、独自の強みがある事に気づけるのが、一流のプレインズウォーカーなのである。

《続・食肉鉤虐殺事件》はただの開発の悪ふざけではなく、粗悪な続編でもなく、独自の面白さを持ったカードであると、筆者は信じたい。



普段と趣向が違うので普段の自分の紹介を置いておきます。

ゲーム翻訳
TOEIC Reading & Writing 940点の実力と海外コミュニティに入り浸る経験でハイクオリティな翻訳を安価で提供しています。

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に関する解説記事
映画やゲームのメディア展開だったり、外部コラボから来たご新規さん向けの解説をしています。

10月頭からシーズン3が始まる『ヴォクス・マキナの伝説』もオススメです。アマゾンプライムなら見放題!


TRPG配信

オリジナルの世界観で時々配信中。システムはもちろんD&D。


いいなと思ったら応援しよう!