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子供がいない人を傷つける言葉たち

女性は子供を産むべし!我が国の少子化問題を解決すべし!

そんな言葉が国会やら会社やら家庭など、裏で表で聞かれるこの令和の時代に、私は子供を産んでいない。

子供がいない女性だけが集まれるオンライン座談会に参加してわかったのが、みんな子供がいないことで、人からの言葉によって女としての自分の価値を否定されたり、勝手に見下されたりした経験を持っていたってこと。

お子さんはいるの?/子供はまだ?/子供がいない人には分からない/気楽でいいな/暇でしょ?/まだ頑張れば産めるよ/なんで産まないの?/将来不安じゃない?/子供がいると人間的に成長できるよ/子育てしている人の方が偉い

子供がいない人を傷つけるように、今の社会はできているのかもしれない。…いや、昔からそうだったはず。でも、最近ようやく子供のいない女性も声を出せるようになったからこそ、こういう声が聞こえるようになってきたのかも。

傷つけてくる人に対して、「痛い!」「やめて」とすら言えなかった時代に比べれば、進歩している。今日は自分の経験から2つ、子供がいない人を傷つける言葉をご紹介。

「不妊治療すれば?」

2018年の体外受精で生まれた子供は5万6979人で、16人に1人と過去最多となったらしい。同年の体外受精治療件数は45万4893件だった。(データは「朝日新聞デジタル2020年10月1日」より)

体外受精の成功率を単純に上のデータから計算すると、45万4893件÷5万6979人=7.9847…で、つまり約8回の体外受精件数中に1回成功したってことだ。これを多いと思うかどうか。不妊治療を経験した私は「少なっ!」と思う。だって、採卵めちゃくちゃしんどかったしね。こんだけの金と時間と健康を害してこの成果かよと思うね。

例えば手術でさ、お医者さんに「手術しましょう。成功率12%ですけど。手術しなくても生きていけますけど。もし手術を受けて失敗したらちょっと障害のこり得ます。」って言われたらどうする?やりますか?

それでもみんな子供を切望するから治療するんでしょう。切実なんだよ。「不妊治療したらぁ?」とか気安くお勧めするなし。

日本は治療件数に比べて出産率が世界60か国で最も低いという記事が簡単に探せる。

世界各国の生殖補助医療の実施状況をモニタリングしている組織「国際生殖補助医療監視委員会」が実施した調査では、日本の生殖補助医療の実施件数は60カ国中、第1位だったにもかかわらず、出産率は最下位の6.2%というショッキングな結果が出ている。(東洋経済オンライン2017年4月26日)

2020年内閣府の資料によると2011年の調査で20か国中、日本の体外受精実施件数は1位。2位アメリカに2.5倍の差をつけてトップであるにもかかわらず、出産件数は1位アメリカの5分の1という成績で惨敗の最下位であった。不妊治療をする人の年齢が高いことも原因だが、それにしても成功率の低さよ…。

不妊治療したこともなくて、こういうの知らないから安易に「不妊治療したら?」って言うんだよね。そもそもさ、失礼だよね。

「すっごく仲のいい夫婦は子供に恵まれない」

これは、私が友人から言われた言葉。

「ほら、すっごく仲のいい夫婦は子供に恵まれないって言うし」

言われた時は思考が停止したよね。「は?何言ってんの?聞いたことないわ。」って思って、その子の顔を見たら、全く悪意なく言ってるんだよね。自分の赤ちゃんを抱っこしながら、むしろ励まし的な意味で言ってくれちゃってる感じだった。言葉のセンス~!それ絶対迷信だから~!

私が不妊治療してることを唯一話していた子だったんだけど、「不妊治療をもう辞めたよ」って話した時に言われた。

夫婦で仲良しだから子供がいなくてもいいじゃん的なニュアンスで言いたかったのかもしれないけど、すごく傷ついたよ。だって、不妊の原因が私たち夫婦の仲が良いからと言われたようで。原因は別のところにあって、科学的に分かっている。別に夫婦の仲が良いからじゃないんだよ。

昔からの迷信は、根拠がないにも関わらず、多くの女性を苦しめてきた。例えば以下のようなもの。探せば無限に出てくるだろう。

丙午に生まれた女性は気性が激しく夫を不幸にする / 不妊の原因は女性にある / 女は生理があるから汚れている

こういう迷信みたいなもので、人を傷つけてはいけない。だってもう2021年で、令和だよ。

言葉の棘

こういう経験があったから、誰かが傷ついたり、挫折したりした時は、私は無理に励ましの言葉を言わないようにしている。

大人になると、友達同士でも環境が違うし、相手が全てを明け透けに話しているわけではないと思ったほうが良い。励ましのつもりで言った言葉でも傷つけてしまうことがあると身を以て分かった。

私はただ相手の話を聞いて、決断や考えを「うんうん」「そういうあなたも良いと思う」と肯定するだけにしよう。だって、相手の苦しみを完全に分かる事なんてできないから、そのくらいしかできないでしょ?

言葉って本当に魔法みたいで、心に花を咲かせたり、棘で突き刺したりできる。私もどこかで悪気なく誰かを傷つけていると思う。多様性の時代だからこそ、言葉選びは慎重にしたい。

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illustration:jiao tangによるPixabayからの画像



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